東京地検特捜部が強制捜査に着手した徳洲会グループの選挙違反事件。
神奈川県内の病院で療養中の医療法人徳洲会理事長、徳田虎雄氏(75)が選挙中、鹿児島の選挙事務所で連日開かれたミーティングをライブ映像で監視し、運動員たちに指示を飛ばすなど、病院組織を使った選挙運動を主導していたことが関係者証言で分かった。一部病院は人員不足に陥ったが、虎雄氏は派遣した職員たちが無断で選挙区を離れることを禁じ、病院業務より選挙運動を優先させたという。
■全国43病院にローテ表
関係者によると、昨年11月16日の衆院解散直後、全国50余りの病院に本部から運動員派遣の指示が伝達された。派遣人数が各病院に割り振られ、43の病院では詳細なローテーション表が作られた。
資料によると、常時6人派遣するよう割り当てられた千葉西総合病院(千葉県松戸市)は、リハビリ科、検査課などから18人を3交代で派遣するローテーションを組んだ。
■「常駐」4週間交代なし
これとは別に、各病院の事務部門と看護部門の責任者は、選挙公示前から投票日まで約4週間、交代なしで選挙区に常駐を指示されたという。
選挙区では過酷な環境が待っていた。早朝からつじ立ちしてビラ配り、ポスター張り、ミニ集会の人集めや会場設営、有権者宅の戸別訪問。「選挙区をブロック分けして戸別訪問に力を入れた。鹿児島とはいえ厳しい寒さの中、夜遅くまで仕事が続き、派遣期間が終わると体調を崩して病院を休む人もいた」(派遣された病院職員)
◆相談の場でPR
看護師部隊は主に選挙区の高齢者宅を訪問し、「徳洲会病院から来ました」と健康上の悩みの相談に乗りながら徳田毅(たけし)氏(42)をPRしたという。
選挙事務所には、虎雄氏の指示により、虎雄氏の妻、長女、次女、三女ら「徳田ファミリー」の女性たちがほぼ連日詰め、職員たちを叱咤(しった)したという。事務所では毎朝7時に朝礼、夜9時に終礼が行われ、その場で各自がその日の活動内容などを報告。「ファミリーの人々は、支持者には期日前投票に行かせろと口をそろえ、今日は何人投票に行かせたかを毎日報告させた。数が少ない人は皆の前で叱責された」(派遣された職員)
神奈川県の湘南鎌倉総合病院で療養中の虎雄氏も、連日の朝礼と終礼をライブ映像で監視し、その都度、秘書を通じて指示の言葉を現地に伝えた。「前回選挙の得票数を超えなければいけない」などと号令を発したという。
公示前、朝礼の様子を見ていた虎雄氏は、幹部職員の一人の姿が見えないことに気付き、秘書を通じて現地の選対幹部に電話で問い合わせた。急用で帰ったと知らされると、虎雄氏は怒り、「今後は選挙区を離れる場合は事前に理事長の許可を求めること」と指示した。このため派遣された幹部職員らは、よほどの用事がない限り選挙区を離れられなかったという。
◆注入「2億円超」
選挙後は、ローテーション表などの内部資料のデータは全て破棄せよとの指示が本部から各病院に出されたという。
動員にあたり、職員の給与や必要経費の支給方法については、本部事務局が各病院に文書で細かい指示を与えていた。ほとんどの病院が指示通り、年末賞与か1月給与に減額分を上乗せして支給したほか、鹿児島への旅費など経費も年度末までに精算したという。
半年後の今年7月には、選挙運動の日当として、給与と別に1日3千円を支給せよとの指示があったという。ある病院事務担当者は「選挙違反の取り締まりを警戒して日当支給を棚上げしていたようだが、参院選が迫ったため支給に踏み切ったようだ」と指摘。
給与補填(ほてん)と経費、日当の支給で、徳洲会が選挙に費やした金額は「少なくみても2億円を超える」(グループ元幹部)という。
「対価を払っての運動員派遣は明白な公選法違反であることは各病院とも認識していたが、過去の選挙でも毎回同じことを繰り返してきた。徳洲会の医療革命という大義のためには犠牲をいとわない、それが徳洲会では正義だと考えられている」
元幹部はそう話している。
神奈川県内の病院で療養中の医療法人徳洲会理事長、徳田虎雄氏(75)が選挙中、鹿児島の選挙事務所で連日開かれたミーティングをライブ映像で監視し、運動員たちに指示を飛ばすなど、病院組織を使った選挙運動を主導していたことが関係者証言で分かった。一部病院は人員不足に陥ったが、虎雄氏は派遣した職員たちが無断で選挙区を離れることを禁じ、病院業務より選挙運動を優先させたという。
■全国43病院にローテ表
関係者によると、昨年11月16日の衆院解散直後、全国50余りの病院に本部から運動員派遣の指示が伝達された。派遣人数が各病院に割り振られ、43の病院では詳細なローテーション表が作られた。
資料によると、常時6人派遣するよう割り当てられた千葉西総合病院(千葉県松戸市)は、リハビリ科、検査課などから18人を3交代で派遣するローテーションを組んだ。
■「常駐」4週間交代なし
これとは別に、各病院の事務部門と看護部門の責任者は、選挙公示前から投票日まで約4週間、交代なしで選挙区に常駐を指示されたという。
選挙区では過酷な環境が待っていた。早朝からつじ立ちしてビラ配り、ポスター張り、ミニ集会の人集めや会場設営、有権者宅の戸別訪問。「選挙区をブロック分けして戸別訪問に力を入れた。鹿児島とはいえ厳しい寒さの中、夜遅くまで仕事が続き、派遣期間が終わると体調を崩して病院を休む人もいた」(派遣された病院職員)
◆相談の場でPR
看護師部隊は主に選挙区の高齢者宅を訪問し、「徳洲会病院から来ました」と健康上の悩みの相談に乗りながら徳田毅(たけし)氏(42)をPRしたという。
選挙事務所には、虎雄氏の指示により、虎雄氏の妻、長女、次女、三女ら「徳田ファミリー」の女性たちがほぼ連日詰め、職員たちを叱咤(しった)したという。事務所では毎朝7時に朝礼、夜9時に終礼が行われ、その場で各自がその日の活動内容などを報告。「ファミリーの人々は、支持者には期日前投票に行かせろと口をそろえ、今日は何人投票に行かせたかを毎日報告させた。数が少ない人は皆の前で叱責された」(派遣された職員)
神奈川県の湘南鎌倉総合病院で療養中の虎雄氏も、連日の朝礼と終礼をライブ映像で監視し、その都度、秘書を通じて指示の言葉を現地に伝えた。「前回選挙の得票数を超えなければいけない」などと号令を発したという。
公示前、朝礼の様子を見ていた虎雄氏は、幹部職員の一人の姿が見えないことに気付き、秘書を通じて現地の選対幹部に電話で問い合わせた。急用で帰ったと知らされると、虎雄氏は怒り、「今後は選挙区を離れる場合は事前に理事長の許可を求めること」と指示した。このため派遣された幹部職員らは、よほどの用事がない限り選挙区を離れられなかったという。
◆注入「2億円超」
選挙後は、ローテーション表などの内部資料のデータは全て破棄せよとの指示が本部から各病院に出されたという。
動員にあたり、職員の給与や必要経費の支給方法については、本部事務局が各病院に文書で細かい指示を与えていた。ほとんどの病院が指示通り、年末賞与か1月給与に減額分を上乗せして支給したほか、鹿児島への旅費など経費も年度末までに精算したという。
半年後の今年7月には、選挙運動の日当として、給与と別に1日3千円を支給せよとの指示があったという。ある病院事務担当者は「選挙違反の取り締まりを警戒して日当支給を棚上げしていたようだが、参院選が迫ったため支給に踏み切ったようだ」と指摘。
給与補填(ほてん)と経費、日当の支給で、徳洲会が選挙に費やした金額は「少なくみても2億円を超える」(グループ元幹部)という。
「対価を払っての運動員派遣は明白な公選法違反であることは各病院とも認識していたが、過去の選挙でも毎回同じことを繰り返してきた。徳洲会の医療革命という大義のためには犠牲をいとわない、それが徳洲会では正義だと考えられている」
元幹部はそう話している。