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NHK:政府代弁放送? 籾井会長発言の危うい問題点

2015年02月24日 06時43分07秒 | TV番組
 「『公共放送』という仕事は、政府の仕事を代行しているわけではありません」。NHKのホームページに、そんな文言がある。受信料を支払っている国民も、そう思っている。いや、「思っていた」なのか。大組織の頂点に位する籾井勝人(もみいかつと)会長(71)の発言の問題点をもう一度、考えた。

 「別に撤回もしませんけど……」。衆議院第2議員会館で18日にあった民主党の会議。NHKの経営計画を説明するために呼ばれた籾井氏は、ある議員に「5日の発言」を取り消す意思はあるか、と問われ、不機嫌そうに答えた。経営姿勢を厳しく追及する質問もあり、険悪なムードが漂っていた。籾井氏はさらに、「発言」の真意として「外交問題に発展する恐れがあることもよく考えて、扱わないといけないという認識だ。政府の言うことを聞くことではない」などと語った。

 「5日の発言」とは、定例記者会見で「戦後70年にあたり従軍慰安婦問題を番組で取り上げるのか」との問いに対する籾井氏の次の答えだ。

 「政府の正式なスタンスがまだ見えないので、放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」。素直に聞けば「政府の主張に沿った番組しか放送しない」とも受け取れる。

 「政府の方針を確かめないと報道するかどうかを決められないのならば、大本営発表をそのまま垂れ流した戦時中と何が違うのか」。ジャーナリストの大谷昭宏氏は怒りもあらわに言う。「報道機関は権力の監視に加え、国民の意見が割れている問題について自ら考え、報じることも重要で、その責務を放棄しているとしか思えない。外部出身の人物がNHKの会長をしてはいけないと言っているのではありません。彼には報道の世界の原則が全く分かっていないことが問題なんです」

 「ニュースの職人」を称し数多くの調査報道に携わった鳥越俊太郎氏も声を強める。「NHKの経営は大半を国民からの受信料で賄っている。従って国民の方を向いた報道をするのが大原則。ところが籾井氏は政府の方を向いている。実際、彼が会長になってから、NHKは政府批判を控えているように映ります」。特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認の閣議決定、原発再稼働……。日本の針路を決める重要政策では政府の方針を伝えようとする傾向が目立ち、「このままでは北朝鮮の国営放送と同じことになる恐れがある」と指摘する。

 それにしても「既視感」がある。

 昨年1月25日の就任会見で籾井氏が「(慰安婦は)戦争地域にはどこにもあった」「なぜオランダに今も(売春街を示す)飾り窓があるのか」などと「放言」したのが騒動の始まりだった。今年1月にはお笑いコンビ「爆笑問題」がNHKの番組で政治家ネタを却下されたことを明かしたことについて、個人名を挙げたネタは一般論として「品性があってしかるべきだ」と語った。そして今回の発言。

 この人の「問題発言」に慣れてしまって驚かなくなるのが、むしろ怖いほどだ。

 武蔵大教授(テレビジャーナリズム論)の永田浩三氏は「就任直後の発言は、あるいは『不勉強だったから』と弁解できたかもしれませんが、もう通用しない。公共放送のリーダーとしてこの1年、何も学んでいないことを露呈したのですから」とあきれる。

 NHKOBの永田氏は、慰安婦問題を取り上げた番組の統括プロデューサーだった。政治家の圧力があったとの指摘がある番組改変問題を検証しようとして制作現場を追われ、退職した。慰安婦問題に正面から取り組んできただけに、「外交問題に発展する恐れがあることもよく考えて……」との籾井氏の釈明を「反戦、平和の番組はたとえ政府と対立してでも放送するのがNHKの使命。『外交』を理由に報じないなんて、でたらめな理屈です」と切り捨てた。

 もちろん、NHK会長にも直言できる立場の人たちはいる。その選出、辞任に権限を持つ「経営委員」である。


 「経営委員は、就任以来の発言から、籾井氏が適格性に欠けることは分かったはずです。それなのに注意するだけにとどめ、解決を先送りしてきた責任は重い」。そう批判するのは立教大の服部孝章教授(メディア論)だ。

 浜田健一郎委員長は20日の衆院予算委員会で、民主党議員から籾井氏の罷免を要求されたが、「事態の一刻も早い収拾を」などと述べ否定した。

 同じ公共放送として、比較されることもある英BBC放送について、服部教授はこんなエピソードを語る。

 「イラク戦争の報道で英国政府と対立すると、BBCの会長と経営委員長は抗議の辞任をしたのです。その行動が示すように、職を賭しても報道の自由を守るとの自負があるからこそ、報道機関は国民の信頼を得られるのです」

 巨大放送局はどこへ向かおうとしているのか。

 元NHKディレクターの戸崎賢二氏に尋ねると「NHKは、集団的自衛権や原発再稼働反対の市民運動をほとんど報じてきませんでした。沖縄の辺野古基地建設反対の住民に対するひどい過剰警備も伝えていません」と、鳥越氏と同様に「政府寄り」の傾向を指摘。「安全保障関連の法整備についても、批判的に報道しない恐れがあります。自衛隊の海外での軍事行動の拡大が心配な時代に、NHKが国策放送局化する危険があるのではないか」と危惧する。

 NHKの混乱が続く中、自民党は新型「国際放送」の創設を目指す。慰安婦、靖国神社などの問題について政府の立場を発信するのが狙いだ。海外向けの英語放送としては「NHKワールドTV」があるが、「今の枠内では、報道の自由など基本的な制約が多い」との理由だ。

 「待った」をかけるのが永田氏だ。「外国語で発信すれば済むという問題ではなく、相手国の文化、歴史を理解して丁寧に伝える必要がある。国際社会からはプロパガンダに見られるだけです」。そして真の狙いをこう見る。「政府の方針に従わなければ国際業務を召し上げるという、NHKへの揺さぶりです」

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が12日に発表した「世界報道の自由度ランキング」で、2010年に11位だった日本が15年には61位へと下がった。特定秘密保護法の施行などが影響したと見られるが、NHKが「国営放送」に近づけば、さらに報道不自由の国になりかねない。

 板野裕爾放送総局長は18日の定例記者会見で「(5日の会長発言は)慎重に検討しろという意味と理解している。どのようなテーマを取り上げるかは我々の編集権に委ねられている」と述べ、籾井氏をフォローしたが、問題の沈静化には至っていない。

 「報道の世界からお引き取り願いたい」(大谷氏)。籾井氏はニュースの中心にいる。【瀬尾忠義】
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雪国まいたけ、脱・創業家へ切り札 経営陣と銀行団

2015年02月24日 06時34分19秒 | 経済
 創業家の関与で経営の混乱が続いてきた雪国まいたけが、脱・創業家へ「奥の手」を繰り出した。米投資ファンドのベインキャピタルが23日、雪国まいたけの全株取得を目指し最大約88億円でTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表し、経営陣は24日未明にTOBに賛同を決めたと発表した。経営陣と取引銀行6行がファンドと水面下で進めた買収劇は、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の行方にも影響を与えそうだ。



 「経営のガバナンスがガタガタで、このままでは上場廃止になる恐れがある。ファンドの資本の力で助けてほしい」。昨年12月、ある証券会社を通じ、雪国まいたけの現経営陣と取引銀行団から、ベインにTOBの要請が舞い込んだ。

 雪国まいたけの創業者である大平喜信元社長は6畳一間で起業し、希少種だったマイタケの大量生産に成功した立志伝中の人物だ。強烈なリーダーシップで事業を拡大し、1990年代後半には新潟県の雪国まいたけは長野県に本拠を置くライバルのホクトと「信越キノコ戦争」と呼ばれる激しい販売合戦を繰り広げた。ただ、強引ともいえるワンマン経営は歪(ひず)みも生む。13年には内部告発で過去の不適切な会計処理が発覚した。

 大平氏は責任をとって同年11月に辞任したが、大株主として経営への関与が続く。後を継いだイオン出身の星名光男社長(当時)を就任から7カ月後の株主総会で解任した。続いてホンダ出身の鈴木克郎会長兼社長がトップに就くが、大平氏の親族は3月末までに臨時株主総会の開催を計画している。創業家の意向をくむ取締役を増やして、鈴木氏らの影響力を抑える作戦だ。

 経営の混乱で株価は低迷し、東京証券取引所も創業家の経営関与に懸念を強める中、鈴木会長兼社長ら現経営陣と取引銀行が「ホワイトナイト(白馬の騎士)」としてベインを招いたのが今回のTOBの真相だ。

 取引銀行は創業家に融資する際、創業家の保有株に担保権を設定している。今では不良債権化した融資に対し担保権を行使して株の名義を創業家から銀行に変更する奥の手を使い、TOBの成立を後押しする。銀行団は担保権行使と名義変更を確実にするため、23日は分刻みのスケジュールを作成した。事前にリハーサルを重ねたという周到な準備に、創業家は完全に虚をつかれた。

 実は、雪国まいたけはベインが潜在的な成長力の大きさに着目し、不適切な会計処理が発覚する数年前から目を付けていた買収候補だった。高齢化に伴い国内のキノコ消費が一段と拡大するとみているとともに、海外市場の開拓余地が大きいと考えているからだ。

 特に魅力が大きいとみているのは中国だ。中国人のキノコの年間消費量は、日本人の3倍の約10キロに達する。会社側も現地生産に乗り出しているが、経営混乱が影響し、必ずしもうまくいっていない。あるベイン関係者は「雪国まいたけの品質で中国で大量生産が実現できれば、爆発的に成長できるはず」と話す。

 11年に買収し、事業を立て直して14年に東証1部に再上場させた外食大手のすかいらーくはベインの成功体験だ。雪国まいたけも買収が成功すれば、ガバナンス改革にとどまらず、現経営陣と共同で事業を立て直し、再上場するシナリオを練っている。

 雪国まいたけは23日夕方に取締役会を緊急招集し、ベインのTOBに賛同を決めた。それでも担保権の行使で株の名義を銀行に移された大平元社長ら創業家が裁判所に不服を申し立てる可能性もあり、買収劇の成否は見えていない。ある関係者は「23日には大平氏周辺に動きは見られなかった」と話している。(川崎健、水口博毅)
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