吉祥寺の『MARU』に久しぶりに行った。野口伊織氏の作られたお店はジャズ喫茶の『Fanky』をスタートにケーキの『レモンドロップ』、バーの『Dray』『オールドクロウ』、居酒屋の『蔵』など数えきれない。1986年創業の『MARU』もその一軒である。
聘珍楼などがある路地の地下1階、入口には大きく『MARU』と書いた紫色の布があるので場所はすぐにわかる。古いビルの階段を降りると黒で統一された渋くて落ち着いた店がある。靴を入口で脱いで奥の方の席に案内される。庶民派と高級派の間よりは少し高級なお店でカウンターの前にはオープンキッチンがある。
メニューを貰うが、とにかくメニューは豊富。スタンダードメニュー、季節の料理、鰻やウニなどを使った土鍋など数えるとキリがない。しかも冷菜と温菜があり、いつも通りなかなか決まらない。まずはハートランドの中瓶を頼んで時間稼ぎをする。
お通しはトマトのゼリー寄せ、上にはオクラ、夏らしい。インパクトのあるルビーレッドの固体だが、ザ・トマトという風味である。
5品ほど頼んでじっくり待つ。まず出されたのは『マグロの葉ワサビ和え』、赤身かなと思ったが、中トロもたくさん入っていて醤油メインのタレ、葉ワサビ、ヒビノリと頂く。もちろん美味い。
これを頼むと酒なしではいられず、飛露喜(福島県)を1合もらう。酒がすぐくるのは嬉しい。瓶を見て思い出した。コロナが最も厳しいタイミングで酒税法の緩和があり、この店で廉価に飛露喜の1升瓶を安く売ってもらったこと。あの特別純米酒は美味かった。
『カニと三つ葉の蟹味噌和え』はシンプルだが、私もズワイガニを解体する時によく作る。ただ、これに三つ葉を加えただけで上品な仕上がりとなるのは参考になる。
『鴨の胸肉(冷製)』は少し甘めのタレで煮て、薄切りにした逸品。この二つとも日本酒のあてにはたまらない。
一合の酒はすぐに無くなり、乾坤一(宮城県)は‘夏祭り‘ラベル。うす濁りでやや甘いかなと飲むと喉越しで味が変わる。複雑な旨みを楽しめる夏酒。
ラベルも楽しく、提灯には色々な絵柄、真ん中には乾坤一とある。『白エビの唐揚げ』にはよく合った組み合わせとなった。
いよいよ『鯛のかぶと煮』、メニュー上は鯛のカブト蒸しなのだが、無理を言って煮付けに変えてもらう。
以前、と言っても2015年と9年も前だが、その味が忘れられずお願いしてしまう。これだけ大きなカブトは食べるところも多く、大袈裟でなく、我々2人で食べるとかなり腹が膨れた。
(タイのタイ〜どの部位な骨でしょう?)
あとは酒のつまみ2品、『鶏ハツ元の焦がし醤油焼き』『エイヒレ』。
酒は蒼空(京都府)、綺麗で吟醸香漂う逸品。気がつくとあっという間に空いてしまっていた。
ただ、以前ならば何か締めの一品をお願いするところだが、お腹いっぱい。予想通り鯛のカブトが大きかったからかもしれない。
いつも出てくるものは美味く、店の方のあしらいも素晴らしい。いい店である。ご馳走さまでした。
MARU
武蔵野市吉祥寺本町1ー13ー6
0422211569