新潮社の編集者を辞め、SFの翻訳家、評論家として、そして最強の書評家として活躍する大森望の狂乱の日々。気難しい印象の作家たちと、なぜかカラオケを中心に交流するさまは壮観(綾辻行人や京極夏彦がマイクをもっている姿って想像できます?)。エピソードもてんこ盛りである。
大森が新潮社の社員だった当時、シュミッツの「惑星カレスの魔女」の文庫の装画を(新潮文庫もむかしはSF出してました)宮崎駿に依頼。原画を受け取りに行ったとき、入稿版と違うアングルに色まで入れた別バージョンがあって「それは?」と訊ねたら、「いやあこれはダメですね」とその場でゴミ箱につっこむ宮崎さん。二馬力のゴミを漁ればたちまち一財産じゃないかと思ったことでした。
6時ののぞみに乗るべくホームに向かったところ、となりの車両には青心社の小笠原さん。「ほな、ついでやし紹介しとこか。こちらが士郎さん。」士郎正宗氏だったのである。
……この、日本最初のウェブ日記である大著を読みおえて(面白いにもほどというものがあろう)、しかし社交家である大森がまったく酒を飲まない人でもあることをかみしめる。信じられねー。まあ、そのくらいの人でないと豊崎由美や北上次郎といった面々とのコラボはむずかしいのかも。