Vol.16「断たれた音」はこちら。
今回の犯人はマーティン・ランドー……とくれば「スパイ大作戦」(ピーター・グレイブス追悼)。例によって変装しまくるのかと思ったら、なんと双子として登場。何度もお伝えしているように、ミステリには双子と中国人は登場させてはいけないのである。読者を混乱させてしまうからね。もしもそのタブーを使うとしたら……おっとネタバレになってしまう。
軽薄な料理研究家と、謹厳実直な銀行家というあざとい色分けの双子を、ランドーは気持ちよさそうに演じている。DVDの特典によると、彼はアクターズ・スタジオに2000倍の競争率を勝ち抜いて入った実力派(同期はなんとスティーブ・マックィーン)なんだとか。「エド・ウッド」の助演男優賞は遅すぎたオスカーだったわけだ。
今回も寝不足で登場するコロンボ。現場の警官から「お気持ち、よくわかりますよ」と同情されるも「そうかい?自分じゃ何にもわかりゃしない」と言いつつ、勝手に浴室に入ってタオルを使ったことから犯行のヒントをつかむのだからしぶとい。
計画はこうだ。財産をすべて翌日結婚する若い妻に遺そうとする富豪を、甥(ランドー)は入浴中に電気泡立て器を入れて感電死させる。その後、トレーニングルームのエアロバイクに乗せることで心臓麻痺に見せかける。しかしこの犯行にはある“特徴”があった……。
若妻が「おヌードじゃなぁい?」と声をかけるあたりの時代性と、なにより額田やえ子の翻訳が泣かせる。
倒序ものであるコロンボだけれど、めずらしく『双子のどちらが犯人なのか』という興味でひっぱる。オチはルシアン・ネイハムの名作「シャドー81」に……おっとまたしてもネタバレか。
グラハム・カーがやっていた「世界の料理ショー」(東京12チャンネル)をモデルにしたようなテレビ番組にコロンボがひっぱり出されるシーンはひたすら笑える。どう見てもアドリブなのであり、ピーター・フォークとマーティン・ランドーの実力派ぶりがたっぷりと味わえるのだった。だよなスティーブ(このギャグをわかってくれる人って少ないだろうなあ)。
Vol.18「毒のある花」につづく。