酒田港座の3月上映会は、「市民ケーン」の不入りを別にすれば(笑)楽しい会だった。わたしは3時と6時の上映につきあったが、例によって入口で客引きをしていると(向こうの方では酒田唯一のキャバレーが同じようなことをしています。うれしい)、年配の方々が自転車でやってきて
「この『恐怖の報酬』って、あれか?ニトログリセリンの」
「はい、そうです。イヴ・モンタン主演の。観てってくださいよ。」
「そう言われちゃなあ」
てな感じで入場してくれる。終わったあとも
「ん。名作だ。やっぱりこりゃ面白い」
と満足してくれてこちらも満足。もっとも、観客が年輩者だけだとさみしいので、「スタンド・バイ・ミー」には若いお姉ちゃんたちも来てくれたのでホッ。
ほぼ二十年ぶりに観た「スタンド・バイ・ミー」は、やはりほぼ二十年ぶりに泣いてしまった。四人の少年たちはそれぞれに抱えきれない傷を負っていて、死体さがしの旅という非日常のなかでその傷は少し開いてしまう。いきなり泣き出したリバー・フェニックスの告白に泣けない人はいないはず。彼の実人生ともダブるしね。
父親に愛されていないトラウマに悩む少年が、確実にオトナになった瞬間があの鹿との出会いであることも再確認。すばらしい作品だった。
主人公の兄がジョン・キューザック。不良のトップがキーファー・サザーランドと、今だと超豪華キャスト。タイトルを聞いて、誰でもがベン・E・キングの歌を想起するはず。どこでそれをもってくるのかと思えば最後の最後にドン!って感じ。うまい。「ぼくのそばにいてくれ」という歌詞が、悲痛な叫びに聞こえました。
「人情紙風船」は……つづきます。