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ちょっとMGMミュージカルってものをなめてたかもしれない。特にジーン・ケリーのことを。
わたしにとって、アーサー・フリードがつくりあげたミュージカルは、「ザッツ・エンタテインメント」で“お勉強”するものだった。淀川長治などに「“粋”とはこれ」といくら力説されても、ちょっとついていけないと思っていたのだ。
たとえば「雨に唄えば」。かの有名な雨中のダンス・シーンは、そりゃ確かによくできているとは思っても、何度も何度も見せつけられると「で?」という気分にすら。ダンディとユーモアを一身に体現したフレッド・アステアと違い、ジーン・ケリーってどうもおっさんくさいし。
ジーン・ケリー、フランク・シナトラ、エスター・ウィリアムズが勢ぞろいした「私を野球につれてって」には、だからあまり期待していなかったの。
わたしが悪うございました。ジーン・ケリーのダンスって、マジですごい。隣にシナトラがいるとわかりやすいんだけど、身体のすみずみまで計算された動きとか、観客を誘導する視線とか……いやはや。
歴史を知らないからおそるおそる言わせてもらえれば、アイリッシュであることを誇らしげにダンスで示して見せたり、ライバルであるアステアに「あんまり映画に出なくていいですよ」なんてきついギャグをかましたり……会社のもつ勢いが彼に乗り移っている。
エスター・ウィリアムズが出ているので強引に水着のシーンが挿入されていたり、当時の野球がいかにのどかなものであったかで笑えたり……いやー満足。
帰省中のナカガワ教授といっしょに見たのだが、見終ってふたりで大喜び。
「途中で『硫黄島からの手紙』の爆撃音が聞こえたりするのがよかったでしょ」
「ああ、あれは大劇場の音だったの?」
「こっちで能天気なアメリカ礼讃をやってる隣で、日本兵が悲惨なことになってる(笑)」
「港座でしかありえないね(笑)」
上映前に近所のスナックのママからもらった焼き鳥をほおばったり、確かに港座でしかありえない上映でした。教授、お約束どおりその日のうちにアップしましたよっ!
いやそれにしてもジーン・ケリーとエスター・ウィリアムズのキスは気持ちよさそうだったなあ……。