32話「狙われた龍馬」はこちら。
前回の視聴率は16.7%。こんな数字で全体の3位なのである。いかに地上波から視聴者が逃げているかがわかろうというものだ。だからどちらかというと年長者向けの番組が上位に来ている。
でも「ゲゲゲの女房」の21.3%は立派かも。帰省先ではこんな会話が繰り広げられているんだろう。
「お義母さん、ゲゲゲって泣けるんですねー」
「あら、朋子さん(仮名)知らなかったの?」
「だいたい午前8時からやってるなんて初めて知りました」
「朋子さんはもうお勤めに向かってる時間ですもんね。ヒロシ(仮名)の朝ごはんは大丈夫なんでしょうね!?」
「……」
長男の嫁が陰でガッツポーズ、とか。
今回は商売まっしぐら。だからこそわかりやすい回だったとも言える。龍馬の手紙に桂小五郎(谷原章介)が「井上(聞多)、金を用意しろ」と命じ、西郷隆盛(高橋克実)は静かに考えこむ。わかりやすい。ここに三菱の創始者である岩崎弥太郎がからむとわけわかんなくなるので今回は出番なし。わかりやすい。
お偉いさんの話だけだとドラマとして生きないだろう、と福田靖脚本は長崎の遊技お元(蒼井優)が隠れキリシタンであることと、龍馬が共に秘密を抱えている事情を商売にからめる。ぶっちゃけ、「もう隠していることは何もない」とうち明ける龍馬の手法は、もっと資本主義が成熟してから機能するのだろうけれども。大友啓史演出は、いつもながらかなりあざといのでちょっとしんどい。でも、龍馬とお元のやり取りのなかで、蒼井優のきわどいぐらいの美しい表情も(一瞬だけ)切り取って見せていた。
ここはしみじみと思う。商売が政治を先導するのだとしても、その裏では政治が商売自体を踏みつぶすことが始まったのが維新ではなかったか。いやいややってたかそれ以前も。次回は、いちばん死んでほしくなかった人間が死ぬ。「新選組!」で、わたしたちが泣かされたパターンか。
今回の視聴率はそれでも18%と予想。
「お義母さん、朋子さん(仮名)も悪い人じゃないんですから」と邪悪な笑いを浮かべながら長男の嫁も見ていると読みました。
第34話「侍、長次郎」につづく。