「客室係」篇はこちら。
おなじみ、飲み屋でうかがう職業裏話シリーズ。今回はテレビ局の社員。ついに50才バージョンに突入。
「やっぱりね、そのスポーツが人気あるかないかでテレビ局に対する態度も違っちゃうわけですよ」
居酒屋のカウンターでそのお兄さんは饒舌になる。
「バスケットボールだったら、試合の最中にCMいれようがなんにも文句でないですよ。それが高校野球ときたらもう……」
「大相撲なみにうるさいと」
「そうなんです。CMは14回までって決まってましてね。チェンジのときに消費するんですけど、これがほら、こないだの鶴岡東と山形中央の決勝戦みたいに延長戦になったりすると」
「CMも入れられなくなっちゃうわけだ。」
「アナウンサーはトイレにも行けないし、解説者は一服できないし……」
「なるほどー。そういえばプロ野球でもそんな場面見たことありますよ。フジでやってた中日VS巨人だったかなあ。アナウンサーが『もうCMを出し尽くしましたのでこれからはCMなしでいきます』って」
「でもあの中継の延長ってのもむずかしくてですね。ウチの系列の在阪キー局が、星野が阪神の監督だった時代に優勝した試合を中継してたんですよ。で、優勝が決まって、これから星野のインタビューだ!ってときにCMが入っちゃって、その企業に抗議電話殺到。」
「どうしてそんなことになったの?」
「たった12分間しか延長しなかったのに、消化しなきゃいけないCMが8分間もあったんす(T_T)。業界じゃ伝説ですそれ。」
「現場で勝手に延長するわけにもいかないもんね。でも途中でもっと延長する判断してもよかったじゃないですか」
「ダメなんですよー。あの、○時○○分まで延長しますってのを一回でも宣言しちゃうと……」
「はぁ」
どこの世界にもよくわからない事情というのはあるものなのだった。お勉強になりました。
「鍵屋」篇につづく。