PART29「あまちゃん」はこちら。
つづいては「ごちそうさん」。脚本は「JIN-仁-」「天皇の料理番」(TBS)などで、“大河ドラマよりも大河ドラマらしい”ドラマを構築し、実際に2017年の大河「おんな城主 直虎」(柴咲コウ主演)を書くことが決定している森下佳子。
学校事務職員としては、伝説の学校事務職員を描いた「お前の諭吉が泣いている」(テレ朝 東山紀之主演)でおなじみかも。
彼女の脚本は、とにかく泣かせる。この「ごちそうさん」でもその本領はいかんなく発揮された。その泣かせ方にはたしなみがあり、この朝ドラでも、小姑役のキムラ緑子を、単なる悪役でも“のちに改心して主人公を全面的に応援する”存在にもしなかったあたりがうまい。あのキムラがお茶の間に爆発的に受け入れられたのには、それにしても驚きましたけれども。
主演は杏と東出昌大のコンビ。現在ではトップスター(&夫婦)となっているこのふたり。でも、当時は「妖怪人間ベム」のベラと、「桐島、部活やめるってよ」の美男にしかすぎなかったので、このふたりはまさしく朝ドラで大きくなったのだ……って前から物理的に大きいですけど。
わたしはしかし、食べることが生きることだとする女の一代記に、はたして杏が適役だったかは微妙だと思った。あきれるほど多くの不幸が訪れる主人公には、やはり圧倒的な愛嬌がなければならないはずであり、杏の演技にはまだ硬さが残っていたように思う。
でも視聴率的には圧勝。「あまちゃん」でウイングを広げた視聴者を、王道のドラマでつなぎとめた功績はやはりすごい。
ちょいとダメダメな親父をやらせたら、もう近藤正臣(今期の役もいいですなあ)にかなう役者はいなくなったんだなと思わせてもくれた。東出の妹役で出ていた女優が、なんか雰囲気あるなあと思ったら、その高畑充希が来年の朝ドラの主演とか。なるほどなるほど。
PART31「花子とアン」につづく。