PART28「梅ちゃん先生」はこちら。
そして2013年前期はいよいよ「あまちゃん」だ。わたしは朝ドラに宮藤官九郎を起用するというNHKの決断に、立派だけれども視聴率的には惨敗するだろうと予想していた。
だってよく考えてくださいよ。開始前に聞こえてきたのは
・舞台は岩手県
・ローカルアイドルのお話
・後半はAKBのような展開になる
……うちで朝ドラをもっとも熱心に見ている老父にうけるはずは絶対にないし(実際に、わけがわからん!と怒ってました)、宮藤の手練手管を朝ドラ視聴者層が受け容れるはずはないと。
ところが結果的にはご存知のような次第。視聴率だけでなく、一大ブームをまきおこすことになった。
いったいどうしてなんだろう。もちろん、収録後に木野花が述懐していたように「(宮藤の)脚本が届くたびにみんなで笑い合っていた」ぐらいの高レベルの脚本によることは確かだし、ヒロインの能年玲奈と橋本愛が魅力的だったことも影響しただろう。
皆川猿時、伊勢志摩、吹越満など、あのNHKの、あの朝ドラに出るタイプでは絶対になかった役者たちもいい味を出していた(大河ドラマ「新選組!」における大倉孝二と八嶋智人のツーショット以来ですかね)。
しかしそれと同時に、15分間という長さが、実は宮藤官九郎にぴったりだったといえないだろうか。
宮藤の本質は、実はかなり重い。語り口が軽い(かつて「吾輩は主婦である」で斉藤由貴のコメディセンスを爆発させたように)ものだから見過ごされがちだけれど、陰鬱さがどうしてもにじみ出てくる。その陰鬱さこそが宮藤脚本作品が低視聴率に終わる最大の要素ではなかったか。
もちろん宮藤も、日本で最も保守的であろう朝ドラの視聴者を意識して時制の往復も控えたこともあっただろうが、話が暗くなる寸前に終わってしまう15分という枠こそが成功要因と読みました。
PART30「ごちそうさん」につづく。