一冊一冊が濃厚だというのに三部作。読み終えるのに二週間近くかかりました。並みのミステリ10冊分ぐらいのネタがどかどか仕込んであるのでお腹いっぱい。
まず、舞台となっているイタリアの警察制度自体が興味深い。国防省所属の憲兵隊と内務省所属の国家警察が並立しているあたり、担当はどう決まるのだろう。
ヴェネチアで起こる殺人と陰謀。水の都が水没の危機にあり、警察官が長靴をはいて捜査するなんて描写も細かくていい。
主要な登場人物は3人。憲兵隊の大尉カテリーナ、米軍少尉ホリーの美女ふたりと、幼いころに誘拐され、耳と鼻を失い、のちに堅牢なSNS「カルニヴィア」を創設したダニエーレ。
セックスに貪欲なカテリーナはいかにもイタリアン。ホリーは父親がからんだ国家的陰謀に果敢に挑み、ダニエーレは自分の過去と正面からぶつかっていく。その三人がいったいどうなるかというと……
日本以上に米軍基地への反感が強いイタリアにおいて、共産党の与党化がなぜつぶされたかなどの陰謀論がうずまいているので、そちら系がお好きな方にはたまらないでしょう。
定番のフリーメーソンが出てきたりするのでちょっと警戒したけれど、ヴァチカンとのつながりでツイストした扱いにしているなど、うまいものだ。こんなにうまい小説なのに、なんとホルトの処女作なんだとか。いやはやおそれいりました。決して「ミレニアム」+「ダ・ヴィンチ・コード」で一丁あがりという安直な作品ではありません。
にしても、やっぱりイタリアの女性は肉食だなあ……実は脳内で勝手に映画化しており、キャスティングは
・カテリーナ → ラウラ・アントネッリ
・ホリー → リース・ウィザースプーン
・ダニエーレ → うわああ佐清(すけきよ)しか頭に浮かばない!