とにかく生半可なヒットではない。2月に北米で封切られて以来、もう7億ドル近く稼いでいる。これがどのくらいすごい数字かというと、「ジュマンジ」の続篇や「ピーターラビット」で快走していたSONY全作品の興行収入を、この映画だけで上回っているのだ。
これは製作のMARVELや配給のディズニーにしたって予想していなかっただろう。アベンジャーズがらみだからある程度の成績は見込めたにしろ、ついに本家のアベンジャーズをはじめ、MARVEL組のすべての作品よりもヒット。アイアンマンよりも、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーよりも、そしてスパイダーマンよりもだ。
原因はこの映画が
「黒人監督による、黒人キャストによって演じられた、黒人観客を意識した」
作品だったことによるのは誰だって指摘できる。確かに70年代には「黒いジャガー」やパム・グリア主演の黒人向け映画(ブラックスプロイテーションBlaxploitation)はあったけれども、ここまで豪快に金をかけて黒人ヒーローが描かれることはなかったし……まあこんな社会学的な考察はともかく、今年を代表する作品であることは確実なので、鶴岡まちキネの上映最終日の最終回で見てきました。忙しいけどがまんできねえ。
予告編では「アベンジャーズの新作を見るために見逃せない作品」的なキャッチフレーズだったので、日本でもさほど大ヒットが期待されているわけではなかったのがわかる(事実、日本では15億程度の中ヒットに終わりそう)。
序盤の釜山におけるカーチェイスが大々的にフューチャーされていて、確かにすばらしいアクションなんだけど、この映画の核は別なところにあった。
なんか、味が濃いんですよ。アフリカの土俗的な感じの。
兄弟の相克、王位継承とか、まるでシェイクスピアの作品のようなストーリーに、黒い肌や黒い音楽が加わり、そこにMARVELらしいユーモア(「グレース・ジョーンズみたいな姉ちゃんが来てるぞ」)がちりばめられて確かに面白い。特に女性のアクションがすばらしい。
主演は「42」(泣けたなあ)でジャッキー・ロビンソンを演じたチャドウィック・ボーズマン、そしてライアン・クーグラー監督と「クリード」ですでにコンビを組んでいたマイケル・B・ジョーダン、「それでも夜は明ける」のルピタ・ニョンゴ、おまけにフォレスト・ウィテカーまで加わった黒いオールスターキャスト。“黒は美しい”とつくづく。