第35回「民族の祭典」はこちら。
「前畑がんばれ」
NHKの河西アナによる、オリンピック中継における最大の名文句。それはかくのごとく「がんばれって言うな」という状況下でなされたという回。アテネオリンピックの刈屋アナの
「栄光への架け橋だ!」
や、長野五輪の工藤アナの
「立て、立て、立ってくれ!」
以上のインパクト。刈屋さんが「ほぼ日」で語っていたように、あらかじめ用意されていたフレーズだと(少なくとも視聴者がそう判断すれば)単に鼻白むオーバーアクトにすぎなくなる。でも、この場合はそうせざるをえなかったことが十分に伝わる。選手の気持ちに伝達者が寄りそっていなければ出ないフレーズって、ある。
今回の演出は井上チーフと大根仁。これまでにないくらい上白石萌歌のアップが多用され、とても魅力的だった。ライバルのドイツ選手がごひいきマルト・ケラーそっくりだったことも含めてうれしかったっす。
さて、「いだてん」における文句なくポジティブなエピソードはこれで使い切った。これからは、五りんの「双子」をめぐる人情噺や、64年の招致に向けた動きがメインになっていくのだろう。
その時点で発表された新キャストには笑った。記録映画を撮る市川崑役に三谷幸喜、黒澤明に怒髪天の増子直純、立川談春が丹下健三、浜野謙太が三波春夫(笑)。んもう何でもありかい!
脚本家として、三谷幸喜は今回の宮藤官九郎の苦境に同情的だったので、彼の出演はうれしい(まあ、市川崑の「犬神家の一族」リメイク版に出演してたし、出たかったでしょうしね)。あと三ヶ月しかこの日曜夜の祝祭を味わうことはできない。クドカンがんばれ。
第37回「最後の晩餐」につづく。