わたしはこの作品の脚本・監督・プロデュースを担当した原田眞人のファンだ。大ファンだ。「盗写1/250秒」「バウンスko GALS」「クライマーズ・ハイ」「駆込み女と駆出し男」「日本のいちばん長い日」など、こういう映画が作りたいという意図が明確に伝わってくる。
わたしはこの作品の原作「勁草」を書いた黒川博行のファンだ。特に疫病神シリーズの、延々とダラダラつづく大阪弁のおかしみは比類がない。先日も最新作「悪逆」を読んで、あいかわらず尿酸値ネタやパチンコ屋=カジノの持論を展開していて笑った。
わたしはこの作品の主演女優、安藤サクラのファンだ。わたしは今年13本しか劇場で映画を観ていないのに、そのうち3本が彼女の作品なのだ(まもなく「ゴジラ-1.0」も)。
これらの条件がそろって「バッド・ランズ」を見ないという選択肢はない。
オープニングから安藤サクラがはずむ。原田眞人の得意技に、まだ映画界で知られていない役者を発掘してみせることがある。たとえば、この映画でも融通のきかない刑事役で吉原光夫が好演を見せているし、宇崎竜童の枯れっぷりもいい。サリngROCKなんてどこから探してきたのだろう。そしてなんとあの天童よしみがきちんとハードボイルド的な悪役をこなしているのだ。
もちろん安藤サクラはすでに名優としての地位を確立していて、その演技力をかって主役に原田は起用したのだろうけれども、撮影が開始されてから彼女の凄さにあらためて驚嘆したのではないだろうか。この映画において彼女は、とにかく動きまくる。そしてその動きが激しく魅力的なのだ。
犯罪の世界に身を置きながら、ラストで疾走を開始する(名作「かぞくのくに」のラストで、スーツケースを引きずって未来に向かう安藤と二重写しになる)ヒロインの姿に感動。決して万人におすすめできる映画でないことは承知。でも、わたしにとっては大傑作。