事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

明細書を見ろ!2015年5月号PART1 現給保障2015

2015-05-19 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2015年4月号「赴任旅費」はこちら

さて、実はみなさんが受け取っている給料額は、3月と4月でちょっと違っています。去年の県議会で、4月1日からはまったく新しい給料表にもとづいて支給すると決まったからです。で、たいがいの人たちの給料はちびっと増えている。特にお若い方などは。

ところが、あまりお若いと言えない方々の場合は話が違っていて、実は給料表どおりの支給だと露骨に減ってしまう人が出現するのです。

それって前にもあった話じゃないか、とお気づきのあなたはさすがにお若くない。平成18年の4月にも確かに同様の動きがありました。あのときは平均して4.8%も引き下げられましたが、それでもあまり気づかずにいたのは、その前の月、つまり平成18年3月の給料額までは仕方ないから出す、という約束があったから。これが、現給保障とよばれる制度です。

ということで、お若くない人たちには給与明細といっしょに県教委が出した通知書も入れています。曰く

「平成26年12月県条例第95号附則第8項の規定による給料○○円を給する」

という具合。○○の部分が経過措置として支給される額。

ところがなかには

「平成26年12月県条例附則第95号の施行に伴い、平成17年12月県条例第103号附則第6項の規定による給料○○円を給する」

というながーい通知の人もいます。これは、ことここに至っても平成18年3月の額の方が大きい人向け。正確に言うと、その額に0.9849を乗じても(つまり1.5%くらい先月から引き下げることになっても)なお高い人もいるわけで、なかなか渋い通知書ではあります。

もう定年まで給料が増えることはあるまいと覚悟はしていても、いざこうなると泣ける。そうです、その該当者のひとりがわたしなのです。

ああ、今回は加齢臭ただよう事務だよりになってしまった……

本日の1本は「スーパー・チューズデイ~正義を売った日~」THE IDES OF MARCH
主演がライアン・ゴズリングで、共演がフィリップ・シーモア・ホフマンポール・ジアマッティ。そして監督したジョージ・クルーニー。美辞麗句が飛び交う選挙において、有権者はその真偽を判断するチカラが求められる。その一助となるのが、本来はマスコミのはずなのに……

PART2「リフレッシュ補助券in三川」につづく

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キャラの人&キャラのメディアPART7 大阪都

2015-05-18 | ニュース

女性の52%が5年以上バストを測らないことが判明 マツコ「内藤聡子の胸は尖ってる!」 5時に夢中! 2015年2月2日 若林史江

PART6サンデーモーニング篇はこちら

大阪都構想の賛否を問う住民投票の結果については、さまざまに評価できると思う。

・反対が多かったとはいえ、僅差にすぎない

・投票率66.83%は、近来まれにみる高さだった

・否定されれば引退する、と例によって大阪市長は大見得を切り、結果としてそのとおりになったが、江田代表まで辞任したのはどのような力学だったのか(彼は深謀遠慮の人だからなあ)

……ひとつのイベントとして見れば、大成功ではあったのだろう。賛成派が劣勢となってからのなりふりかまわない姿勢はいつもの維新だが、敗北は(少なくとも住民投票をやると決めた時点からは)予想外だったはず。既成政党を敵に見立て、打ち破ると気勢を上げつづければ市民は当然ついてくると踏んだのだろうし、だからこそ途中から世論調査の結果がひっくり返ったことにうろたえたのだと思う。

わたしも不思議だ。どうしてひっくり返ったんだろう

正直に言えば、二重行政を解消することで毎年二千億円も生み出せるとする提案に疑問を抱かない方がおかしいとわたしなどは思うのだが、まあそれはいい。わたしが今回のイベントについて考えているのは、はたしてこの住民投票が、ほんとうに大阪都構想の是非を問うものだったのか、だ。

考えてみてほしい。大阪維新の会をささえたのは、常に選挙だった。府知事と市長の座をバーターするなど、本来ならありえない選挙まで用意して「民意」はこちらにあると突っ走った。その手を使える最後の機会が、今回の都構想だったとしかわたしには思えないのだ。維新による、維新のための住民投票。

つまり問われていたのは「大阪都」ではなく、維新のやり方そのものだったはず。橋下流の行政をこれからも続けていいのかだったろう。その意味で、「わたし(橋下)が嫌いでも賛成してほしい」という主張は、詐術でしかない。少しでも賛成が上回っていれば、おそらくはまたしてもレベルの低い特別区長や、レベルの低い人事が用意されていたはずで、だからわたしはちょっとホッとしています。

大阪市民、府民に問いたい。この7年間、維新のやり方で、あなたたちの暮らしが少しでも向上したんですか。

内藤聡子さんのすばらしさを動画でもお伝えしたくて本日は「5時に夢中!」です。

PART8「現首相」につづく

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キャラの人&キャラのメディアPART6 サンデーモーニング

2015-05-17 | テレビ番組

PART6麻生太郎篇はこちら

「28年前に番組が始まった時から、中庸の精神で真ん中のつもりでやってきましたが、いつの間にか、左の方にいた番組がなくなって、一番左みたいになってしまいました。でも、最初の思いは変わっていないつもりです」

「サンデーモーニング」(TBS)が放送人グランプリを受賞した関口宏氏の発言。

わたし、むかしはこの番組が大嫌いでした。微温的で、中高年クラブな雰囲気が横溢。オープニングのテーマソングなど、いったいいつの時代の番組かと。出演者も関口の個人事務所の三桂所属であることが多く、それはちょっとと思ってました。

※わたし、三桂に所属している内藤聡子さんのファンなので関口さんよろしくね。「5時に夢中」(MX)を降ろさないでね。

裏番組でやはり同じようなニュース中心のワイドショーをやっていたのが日テレ。「THE・サンデー」は巨人ネタを徳光と江川でやっている分にはよかったが(視聴率も圧倒していた)、次第に北朝鮮叩きなど、視聴者の情緒に訴える志向がむきだしになり、こんなんならサンデーモーニングの方がはるかにマシだと見直すことにもなった。

今回の受賞を機に、ネトウヨはこの番組への攻勢を強めている。やっぱりサヨク番組だとか。よく言うよ。この番組はあなた方の大好きな人たちだってずっと起用しているじゃないか。

初期のケント・ギルバートの極右ぶりは極端すぎるにしても、寺島実郎は微妙だし、大宅映子はご存じのとおり。あなたがたは出自から毛嫌いをしているのかもしれないけれど、張本勲の気が遠くなる発言は今も健在。おかげで江川紹子さんがはじき飛ばされてしまった

さて、それでもなお、この番組が左に位置するとメインキャスターが自認するような社会になってしまったのだ。なんてことだ。逆に言うと、この時点でサンデーモーニングに賞を与えるのは、放送人たちの良心の現れなんだろうか。

そして、この番組がふたたび高視聴率番組になっているのは、世間みんなが右に流れているわけではなく、リベラル層が健在なことを示して……いるんだといいなあ。画像は内藤聡子さんです!

PART7「大阪都」につづく

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「火星に住むつもりかい?」 伊坂幸太郎著 光文社

2015-05-16 | ミステリ


著者インタビューによれば、伊坂幸太郎はスパイダーマンの物語を書きたかったらしい。しかしそこは伊坂のことゆえ、ひねりまくっている。スパイダーマンに限らず、ヒーローたちが心のどこかで気に病んでいることにこだわってみせるのだ。それは

・自分はどの範囲まで救えばいいのか

だ。世界中に理不尽が存在し、困った人たちが無限にいるなかで、ヒーローはどんな取捨選択をするべきなのか。みんなを救えないのに、ヒロイックなことを行うのは偽善ではないのか?と。

ピーター・パーカーはニューヨークから外に出れば気弱な若者にすぎないし、MJを守りたいと願っても、それはかなわないことだった。スーパーマンにしてもそうだ。クラーク・ケントは、ロイス・レーンに恋するがゆえに優先順位に悩む。地球を逆回転までさせるのはやりすぎでしょでも。

この作品に登場するスーパーヒーロー(実は全然スーパーじゃないんだけど)も徹底して悩む。全員は救えない。ならば、自分の知り合いだけでも……あ、このヒーローが何者なのかが大きな謎になっているので、今のくだりは忘れて(笑)

ありえないヒーローがいるのは、ありえそうな理不尽な世界。“平和”警察によって魔女狩りが行われ、公開処刑(火あぶりではなく、ハイテクなギロチンによって)に市民は熱狂し、次第に慣れていく。心のどこかで間違いではないのかと思いつつも、熱狂がその不安を押し流していく。中世もやはり、そんな状態だったのだろうか。その平和警察に、絵にかいたような名探偵が登場。ヒーローを追いつめていく……

背景描写がリアルなので、最初は読み続けるのがしんどいかもしれない。いつものユーモアたっぷりな筆致で、しかし描かれるのは残酷で不毛な“捜査活動”だから。

でも、ネタバレになるので明かせないが、そこから豪快なエンディングに突っ走るのが例によって伊坂の芸じゃないですか。実はわたし、途中である程度は予想していたんだけど、最後の最後に出てきたどんでん返しにはやられてしまいました。

タイトルはデビッド・ボウイLife On Marsからとられている。もっとも、あの曲の意味は「火星の生命」だったので伊坂は落胆したそうだが(笑)。

逃げ場が火星(つまり非現実的な場所)しかない世界。いまの日本が、そうでないと言い切れますか。

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「アイネクライネナハトムジーク」 伊坂幸太郎著 幻冬舎

2015-05-15 | 本と雑誌


各短篇の登場人物たちが、実はお互いに関係があって……といういつもの伊坂幸太郎タッチが、この作品では特にさく裂している。

これは、まず短篇「アイネクライネ」が斉藤和義とのコラボで発売され(詞を依頼されたけれども、それは無理だったので短篇を書いたのだとか)、書籍化するためにいくつかの短篇を加えたという経緯があったため、むしろ積極的にコンセプトアルバムっぽく仕上げたのだと思う。

斉藤和義と伊坂幸太郎はお互いがお互いのファンなのでいろいろとからんでいる。映画「ゴールデンスランバー」のエンディングには名曲「幸福な朝食 退屈な夕食」が流れたし(伊坂はこの曲を聴いて会社勤めを辞める決心をしたのだとか)、他の映画化作品にも斉藤の曲はいくつか使われている(現代の作家で、伊坂ほど映画化されている人はいない)。そして今度は伊坂の方が作品に斉藤和義を投入しているのだ。

相互に関係した登場人物のなかで、ぽつんと浮いているのが、100円渡すと、相手にぴったりのフレーズが入った曲をパソコンで再生してくれる“斉藤さん”という形で。もちろんそのフレーズはすべて斉藤和義の楽曲から引用されています(笑)。

柱となっているのは某スポーツ映画。ぶっちゃけ、「ロッキー」です。イタリアの種馬が次第にスーパーマンになっていく2以降ではなくて、シルベスター・スタローンがしこしこと書いた第一作ね。生卵いっぱい飲むやつ。あの、みんなが知っているストーリーを、伊坂はひねりにひねって、そして最後に泣かせてくれる。

成り立ちもあって、意外なほどそれぞれの短篇はストレートな恋愛小説になっている。そしてそれらを相関させるテクニックこそ、伊坂幸太郎の芸というものでしょう。わたし、この本大好きです。

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「営繕かるかや怪異譚」 小野不由美著 角川書店

2015-05-14 | 本と雑誌

正真正銘の小野不由美の新作。彼女は「残穢(ざんえ)」で“不動産怪談”(笑)という新ジャンルを切りひらき、山本周五郎賞を受賞している。めでたい。

でもあの本を選んだということは、審査員たちも途中で「あわわわ。」と本を放り出さなかったのかしら。あの仕掛けは怖かったなあ。

この新作は、「鬼談百景」のシンプルさと、「残穢」のたくらみがミックスされた味わい。古い城下町(モデルは小野の出身地である中津市らしい)における、日本家屋に住まう女性たちが遭遇する静かな恐怖譚。

お父さんが建築士だった小野は、家屋の専門用語を散りばめながら、生活のためにその恐怖と対峙しなければならない現実も同時に描き、奇想天外なだけの怪談にしていない。

彼女たちを救うのが、およそゴーストハンターとは思えない普通のお兄ちゃん。「営繕屋かるかや」を名のる彼は、家の障り(さわり)を、現実的な大工の手法で解決していく。いろんな意味でビフォー&アフターなの。

静かに訪れる恐怖の源について、小野はその来歴をほとんど語らない。ただ、そこには何らかの無念があるのであろうと示唆するだけ。なるほど、これも一手だなあ。わたしが好きなのは、家のいたるところに見知らぬ老人が見えてしまう「異形のひと」。主人公(女子高生です)の邪悪さをうっすらと糾弾する展開がすばらしい。

さて、小野といえばなんといっても「十二国記」。版元の新潮社から昨年末に告知があり、最新長篇はもう千枚を超えているんですって。おいおいこのままだと「屍鬼」(単行本上下巻、文庫全5巻)超えか?うれしいけど(笑)

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「博奕打ち 総長賭博」 (1968 東映)

2015-05-13 | 港座

“これはなんの誇張もなしに「名画」だと思った。何という自然な必然性の糸が、各シークエンスに、綿密に張りめぐらされていることだろう。セリフのはしばしにいたるまで、何という洗練が支配しキザなところが一つもなく、物語の外の世界への絶対の無関心が保たれていることだろう。”
 
……三島由紀夫がこの作品を激賞し、映画評論家たちから無視されていた任侠映画が俄然注目を浴びたのは有名な話。三島の指摘するように、この映画の登場人物たちは、まるで何かにあやつられるように破滅に至る。精緻な脚本の勝利。

書いたのは「仁義なき戦い」二百三高地」などで何度も何度も特集してきた笠原和夫。彼は徹底して取材する人だから、きっと似たような事件は過去にあったのだろう。しかしそれを圧倒的な悲劇に仕立て上げたのはやはり笠原の力量というものだ。

昭和初期、東京で博徒(なんでしょうね)を束ねる総長(加藤武)が脳溢血で倒れ、急いで跡目を決めなければならなくなる。本来であれば総領子分の松田(若山富三郎)が継ぐべきだが、彼は服役中。そこで人格、力量から松田と杯をかわしている中井(鶴田浩二)が推される。しかし中井は固辞。自分は関西から流れてきた傍流にすぎないと。

組織にはオジキ筋と呼ばれる兄弟組織と、総長直属の組織が存在し(グループ企業と子会社みたいなものかな)、彼ら(金子信雄ら)は次善の策としてふたりの“五厘下がり”の子分である石戸(名和宏)を担ぎ上げる。襲名披露の大花会(賭博です)を修善寺で行うことが決まったころ、松田が出所して来て……

若山富三郎の憤激、彼の子分の暴走などは、私生活そのままに見える。自重に自重を重ねた鶴田浩二は、妻の自害などの果てに

「任侠道?そんなものはねえ。俺はただのケチな人殺しだ」

とつぶやくラスト(誰に向かってつぶやくかは意外でした)まで一気呵成。戦前のことで、いかがわしい政治結社が登場するなど、やくざが政治にとりこまれる渦中にあったのかと深読みもできる。鶴田浩二の暗さが、画調と渾然となって観客を魅了。おそれいりました。監督は将軍山下耕作。

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「トリックスター列伝」 松田道弘著 東京堂出版

2015-05-12 | 本と雑誌


かつて小林信彦が、娘たちを育てるときにほんとうにお世話になったと述懐していたのが松田道夫氏の「育児の百科」をはじめとした諸作。そして、その育児のプロの息子がこの松田道弘さんだ。マジック研究の第一人者。若いころから彼の著作にはたいそう楽しませてもらっている。

この書は、日本で唯一のマジック専門誌「The Magic」に連載された、くせの強いマジシャンの人物伝。怪異をおこなうことで怖れられ、中世において停滞していたマジックが、19世紀に爆発的に人気を集め、そして20世紀にアマチュアたちに広がっていった経緯が、例によってわかりやすい語り口で披瀝される。

大向こうをねらったイリュージョンがわたしは趣味ではなく、少人数の観客の前で行われるクロースアップマジックが大好きなので、いまもなお新しいトリックが次々に生まれ、同時に科学の進歩のせいで消えていくあたり、ぞくぞくするほど面白いっす。

かの有名なインドにおけるロープのぼりを、実は誰も見たことなどない(イブン・バトゥータの著作で述べられているだけ)など、びっくりな事実もてんこもりです。マジックファンならずとも、ぜひ。

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「闇に香る嘘」 下村敦史著 講談社

2015-05-11 | ミステリ

わたしにとって江戸川乱歩賞というのは、騒がれはするけれどもさほど興味をもてない存在。年末のベストはひたすらチェックするくせにね。ミステリの新人賞として最も権威があり、歴史があるにもかかわらず。

というのも、70年代に大人向けのミステリを読み始めたわたしにとって、その頃からの記憶に残る受賞作といえば

「アルキメデスは手を汚さない」小峰元

「ぼくらの時代」栗本薫

「焦茶色のパステル」岡嶋二人

「放課後」東野圭吾

くらいかなあ。近年になって真保裕一藤原伊織桐野夏生などが大成しているけれど、歴史のわりには歩留まりが悪いような気がする。

その点すごかったのは新潮社の日本推理サスペンス大賞で、わずか7回しかなかったのに高村薫と宮部みゆきという、ミステリ界の女王様と王女様を輩出。すごい。彼女たちが応募先として乱歩賞よりもこちらを選んだ理由が知りたいところではある(なんとなくわかりますが)。「機龍警察」は絶対に受賞できないタイプなので月村了衛も避けただろう。

さて、そんな乱歩賞だけれど、最新の受賞作であるこの作品は評価が高い。作者は、9年連続で乱歩賞に応募し、5回連続して最終選考に残り、ついに受賞。地力のある人なんでしょうね。

設定が凝っている。腎不全を患う孫娘に腎臓を提供しようと願うも、病んだ身体のためにかなわない盲目の主人公。彼には中国残留孤児である兄がいて、血縁があるのだからと提供を依頼するが、兄は頑強に拒む。ひょっとして本当の兄ではないのではないかと疑う主人公……

兄の意図したものがあからさまになるラスト。盲目の人間の生活を(徹底した取材を行ったのだろう)微細に描写する力。確かに、レベルの高い作品だとは思う。でも、どうにも読み続けるのが苦痛だった。なにより主人公に感情移入できないのがつらい。彼の行動は(予言されたとおり)誰も幸福にしない。物語の核が、成長しきれない老人のわがままでは……。

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「憎悪のパレード 池袋ウエストゲートパーク11」石田衣良著 文藝春秋

2015-05-10 | ミステリ


ヘイトスピーチ、脱法ドラッグ(危険ドラッグという言い方はどうも好きじゃない)、ギャンブル依存症、ノマドワーカー……マコトとタカシのおなじみコンビに時事ネタを扱わせて一丁上がり。と言ってしまっては意地悪だろうか。

石田衣良はあるテレビ番組で「(直木賞を)もらっても、でもウエストゲートパーク以外はそんなに売れないんですよ」と本音をぽつり。となればここは開き直って世相を斬るために休んだりしないでもっとどかどか書いてほしい。

「もっと池袋」「もっとも池袋」「まだまだ池袋」とか。大下と高山コンビですか。銀星会でてくるんですか。存在が徹底してヤンキーなのに、考え方が誰よりもリベラル。このシリーズ、味わいありますもの。ダテに売れてるわけじゃない。

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