事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

おんな城主直虎 第29回 女たちの挽歌

2017-07-23 | 大河ドラマ

第28回「死の帳面」はこちら

前回の視聴率は12.0%と予想どおり低値安定。一種のモンスターとして描いた寿桂尼(浅丘ルリ子)もオープニングで死んでしまった(先週のうちに見送るべきでしたね)。これからどうなるんだろう。

もうひとりいましたモンスターが。意外なところに。

直虎がとった武田家封じ込め作戦は、しかし逆に徳川側から、同盟の証としてしの(貫地谷しほり)を人質として提供するように仕向けられる。しのは行きたくないと息子である虎松(寺田心)にもらす。それは……

この、後の井伊直政である虎松がモンスターでした。彼は父親に続いて母親まで失いたくないと、別の人質候補を帳面につけて画策する。またデスノート登場(笑)。しかし、すべては息子を強くするために母親として最後に残した試練だったと。

ありえないだろっ!と心の中で思いつつも、さすが森下脚本なのできっちり泣かせます。ええそうですとも。わたしは疲れていたこともあってホロリとしてしまいましてよ。

幼き夜神月を演じた寺田心はうまいにもほどがある。妻は

「あ、この子が出てるの」

とテンションが低くなっている。

「え、この子は有名?」

「すごく。トイレのCMとか。知らない?あたし苦手なの」

次郎法師を演じた新井美羽のときと逆の展開。わたしはとにかくあの子が嫌いだったが寺田心はだいじょうぶ。どうしてだろう。あ、そうか。あどけない表情が彼の場合は無邪気さとは無縁で、なんか邪悪なものすら感じさせるあたりでしょうか。そりゃー世間からは嫌われるよなあ(わたしは嫌われ者が好き)。

視聴率は、新モンスター降臨もあって12%維持と読みました。今回のタイトルはジョン・ウーをいただいているとは言っても、二丁拳銃や白い鳩とは関係ない。

第30回「潰されざる者」につづく

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「月の満ち欠け」 佐藤正午著 岩波書店刊

2017-07-22 | 本と雑誌

 

祝直木賞受賞!

今回は柚木麻子、「敵の名は、宮本武蔵」の木下昌輝、人気作家宮内悠介、決戦シリーズでおなじみの佐藤巌太郎(しかも候補作は文春刊行)という強敵を押しのけて、初候補の佐藤正午がとった。岩波書店の本が直木賞をとったのは初めてとか。めでたい。

にしても本当に不思議だったのだ。なぜ正午がこれまで候補にもならなかったのか。運とか巡り合わせとかいう理屈ではとうてい説明できない。だって彼はデビュー以来三十数年、「永遠の1/2」「リボルバー」(藤田敏八監督、沢田研二主演の映画は傑作!)「Y」「ジャンプ」と傑作を連発していたのであり、特に近年の「身の上話」(戸田恵梨香主演のドラマは傑作!)「鳩の撃退法」の小説的たくらみは見事だったのに。

彼の小説の特徴は、主人公の行動が、読者の予想を少しずつ裏切っていくことだ。しかも語り口が絶妙なので途中でやめることができない。このふたつが相まってどんどん登場人物に感情移入していくことになる。

あまりに小説として完成度を求めるために、フックとなる部分が少なく、だから彼の作品は“騒ぎ”にならないのかもしれない。でも、わたしのように何年経っても彼の新作を待ち望むファンは絶えず、岩波書店の編集者もその期待を共有していたのだと思う。にしても完成したのが依頼されてから十数年経ってからとは(笑)。正午も正午なら岩波も岩波。

受賞作「月の満ち欠け」は、生まれ変わりの物語。かなり変わった恋愛物語なのだけれど、同じ趣向の東野圭吾「秘密」ほどにストレートではなく、そっちと絡んでくるのか!とあ然とさせる手口は相変わらず達者です。

物語の序盤で、この小説のベースにはある映画がありますよと宣言されています。それは「天国から来たチャンピオン」。ウォーレン・ベイティとジュリー・クリスティのロマンス。何度生まれ変わっても、愛は変わらないという気恥ずかしい設定を生かすために、ベイティは笑いをふりまき、正午は行間に悲しみと含み笑いを仕込む。どちらもラストで心が洗われるような気分になれます。

さあ佐藤正午もいよいよ直木賞作家か。あれ?「鳩の撃退法」で二回も直木賞をとったんじゃなかったっけ?(笑)という冗談はともかく、また佐世保で競輪を楽しみながらマイペースで書き続けるんでしょう。新作、期待してます。

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極私的大河ドラマ史PART12 新・平家物語

2017-07-20 | 大河ドラマ

PART11「春の坂道」はこちら

大河ドラマ十作目、テレビ放送20周年を記念して破格の製作費が注ぎこまれた「新・平家物語」だけれど、わたしは見てなくて「飛び出せ!青春」に夢中になってました。

そろそろ色気づいたわたしは、レッツ・ビギン!と無責任に生徒を煽る学園ドラマのほうが、辛気くさい時代劇よりも好きだったみたいだ。にしてもあのドラマは青春ものの教科書のような作品だった。校長が有島一郎で教頭が穂積隆信という鉄板のコンビと、酒井和歌子の、いかにも東宝の女優らしいツンデレぶり……

大河の話でした。とにかくスタッフもキャストも豪華版。原作が吉川英治で脚本が平岩弓枝。そして音楽が冨田勲ときた。富田は「花の生涯」「天と地と」につづいての登板。わたしにとっては「新日本紀行」「ジャングル大帝」の人ですけどね。

あふれるほどの豪華キャストは羅列するだけでもたいへん。平清盛に仲代達矢、時忠に山崎努、経盛に郷ひろみ、敦盛に中村勘九郎(五代目)……ううう平家は似たような名前が多くてかなわん。

源氏は頼朝に高橋幸治、義経に志垣太郎、政子が栗原小巻で常盤御前が若尾文子、北条時政が加東大介で武蔵坊弁慶が佐藤允。そしてイメージとはちょっと違って木曽義仲に林与一(どちらかといえば貴族風の人なのに。名前は那須与一っぽいけど)。

陰の主役とも言うべき後白河法皇は滝沢修。落語の演目でも有名な崇徳院(「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」の作者)に田村正和、建礼門院徳子に佐久間良子。これに緒形拳と五十嵐じゅん、そして藤田まことが加わる。

いくらギャラが安いことで有名なNHKでも、これだけのキャストを集めるとはすごい。逆にいえば、映画界に常に下に見られていたテレビドラマが、ここに至って完全に市民権を得たということだろうか。

PART13「国盗り物語」につづく

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「の・ようなもの のようなもの」(2016 松竹、アスミック・エース、角川、ぴあ)

2017-07-19 | 邦画

森田芳光が亡くなって、もう6年たつ。決して巨匠にならず、あくまで才人、鬼才として映画界を突っ走った彼の作品には、独特のスタイルがあった。

①画面から、いい意味で熱が奪い去られていて、クールな肌合いが強調されている。「ときめきに死す」の登場人物たちが「涼しいですね」と何度もやりとりしているのはその象徴。

②セリフに微妙な“間(ま)”と奇矯なアクセントを与えて異世界を構築する。「間宮兄弟」の中島みゆき、「悲しい色やねん」の森尾由美が代表。

……その萌芽は、メジャーデビュー作である「の・ようなもの」にすでにあった。主演の伊藤克信の栃木弁、尾藤イサオとのかけ合い、そしてラストで延々と続く道中づけシーンは、映画と落語の幸福な融合だった。わたしのオールタイム邦画ベストスリーに確実に入ります。

その「の・ようなもの」の35年ぶりの続篇がつくられるなんて、生きててよかった。

森田組のスタッフ、キャストが集結して、まるで同窓会。主演は「A列車で行こう」の松山ケンイチと、なんとなんと伊藤克信が同じ志ん魚(しんとと)役で。うれしい、うれしい。

他にも「家族ゲーム」の宮川一朗太、「愛と平成の色男」の鈴木京香、「おいしい結婚」の三田佳子、「メイン・テーマ」の野村宏伸(彼は薬師丸ひろ子の相手役としてこの映画でデビュー。彼を推したのは森田だったとか)など、泣けるキャスティング。

特に、前作でもみごとな師匠っぷりだった尾藤イサオが、35年ぶりなのにまったく変わっていなくて呆然。彼が歌うテーマソングも同じ曲を使用。はすっぱな娘を演じて北川景子もいい。森田芳光も“向こう”でクールに喜んでくれているのではないでしょうか。あーしかしわたしはどこの馬の骨ともしれない若造の映画に、ソープ嬢として出演してくれた秋吉久美子にふたたび出てほしかった。

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タイヤ買いかえましたPART2

2017-07-18 | 日記・エッセイ・コラム

PART1はこちら

行く前に、同僚たちに

中古タイヤって、買ったことある?」

と質問したら、誰一人いなかった。購入を検討した人すらいない。なんか、ちょっと不安にもなる。わたしは非道な行いに及ぼうとしているのだろうか。

その会社は前任校の学区にある。あれま、よく通ったラーメン屋の近くにあったのか。“タイヤカフェ”なるものも併設されている。なんか、もうけてそうだなあ。

受付のお姉さんにインチや偏平率を伝えると、いきなり店長が出てきてパソコンのキーをたたき出す。

「在庫ありますよ。三種類。」

ほぉ。

「ただ、ひとつだけ、ちょっとお高いですが。レグノです。」

「おいくらですか」

「〇万〇千円です」

予想よりもはるかに安い。さすが中古。

「ちゃんと溝は85%あります。どれになさいますか」

「レグノにしますっ!」

わたしの世代にとってレグノREGNOといえば、ショーン・コネリーをCMに起用したブリヂストンのフラッグシップブランドだ。いいのか。いいよな。

装着を終えて、おそるおそるクルマを転がすと、おお異音は消えている!それどころかめちゃめちゃ静かになっている!静粛性が売りのタイヤだけのことはある。まあ、それまで履いていたのが堅いので有名なミシュランだったりもしたので、乗り心地はだいぶ変わった。好みは分かれるでしょうが、まあ満足です。

中古タイヤを買う方の理屈はある程度理解できたが、誰が流すのだろう。店主が言うには、新車を買ってすぐに好みのタイヤに履き替える人は多く、だから純正タイヤもけっこう流れてくるのだそうだ。新車のタイヤはメーカーが千円もしない値段で購入している例も多いので、気持ちはわからないではない。

ということで、いい経験をさせていただきました。それにしたってずぼらな性格は早く矯正しないとなあ(無理)。

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タイヤ買いかえましたPART1

2017-07-17 | 日記・エッセイ・コラム

どうも、後輪のあたりから異音がする。春にタイヤ交換をしてからずっと。こういうとき、まっとうな社会人ならすぐにディーラーかタイヤ屋に飛びこんで対処する。

わたしは違う。そういうことがすぐにできないのだ。こういうひたすらずぼらな人間なので、まあ走るんだからいいや、と放っておく。放置しておいていいことなど何ひとつないことを承知しながら。

この状態のまま米沢や山形と何往復かこなす。

「ちょっと変な音がしない?」

助手席の妻に確認する。

「……そういえば、鳴ってるわね。だいじょうぶなの?

「……」

ひらめく。タイヤ交換を頼んだディーラーのサービスマンは

「タイヤの溝が、もう3ミリしかないですよ。限界ですねえ

と主張していたのだ。そうだそうだよこの機会にタイヤを買えばいいんだっ!……こんな当然のことに気づくのに1ヶ月もかかってしまいました。

でもね、娘のクルマ、パソコンなど、近ごろ買い物し放題。金欠なうえに、わたしのクルマがあと何年保つのか、という重大な問題が。

またひらめく。中古タイヤという選択肢があるじゃないか。コミュニティFMでいつもCMをやっているあの会社に行ってみよう。でも、賢い消費者として、店のサイトに入ってわたしのクルマに合うタイヤの在庫があるかをチェック。

ない。

ずぼらであると同時に無謀でもあるわたしは、知ったことかとその店を急襲したのでした。以下次号

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おんな城主直虎 第28回 死の帳面

2017-07-16 | 大河ドラマ

第27回「気賀を我が手に」はこちら

前回の視聴率は12.4%と微動だにしない。上昇が見込めないのか、固定客だけを相手にすると決めたのか。

でも、今回はその固定客を裏切る展開が。これを待ってたんだー。

主役は危篤状態から復活した、今川義元の母、寿桂尼(浅丘ルリ子)。孫(今川氏真)はもちろん、いよいよ登場した武田信玄(松平健)についても幼名で呼ぶ大物。

彼女は直虎が恭順の意を示すことに満足し、これまでの諸々に懐旧の思いを伝えもする。前回までなら、直虎はがんばって今川にも可愛がられてるよかったね、な展開。でも、寿桂尼は直虎に自分と同じ匂いを感じたからこそ、彼女を押し潰そうとする。自分は今川を守るためならなんでもする。あの女は井伊を守るためなら同じことをするだろうと。大河っぽい展開にようやく(笑)。

あなたがわたしの娘であったなら、と直虎に自分の孫への失望を遠回しに伝えながら、しかし寿桂尼は冷静にこの女は今川の敵に回るに違いないと判断する。昇太が再登場する今川の極楽を守るためなら、彼女はなんでもやるわけだ。

当時としては当然ですよね。それを、ぬるい大河特有の“戦(いくさ)を避けるためにはどうすればいい”と逡巡する直虎はやはり甘いんでしょう。戦は金がかかるじゃないか、と帳面を読みながら判断しているのなら頼もしいけれども、信玄に「化け物か」とまで形容された寿桂尼に、そのままだと完全に及ばない。ここでキーマンになるのが徳川家康(阿部サダヲ)であるあたり、わたしは来週からもちゃーんと見続けることをここに宣言します。

大河ドラマなのにDeath Noteをタイトルに持ってくるあたりの根性があればなんでもできますし。

視聴率?うーんさすがに動かずに12%台のままじゃないでしょうか。浅丘ルリ子がそのキャリアを十二分に生かした大女優らしさがよかったっす。

第29回「女たちの挽歌」につづく

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騎士団長殺しPART3

2017-07-15 | 本と雑誌

PART2はこちら

④時代

ねじまき鳥クロニクル」でノモンハン、「1Q84」で地下鉄サリン事件に取り組んだ作家が、東日本大震災に黙していられるはずはない。ましてや、村上春樹は神戸出身なのだから、震災後の世界に敏感なのは当然のこと。

宮城と福島の県境で主人公が出会う、この物語最大の敵役“白いスバル・フォレスターの男”が何もシンボライズしていないと考えるほうが不自然だ。はたして何の象徴なのかは、読者次第ということだろうか。

後半ちょっとグダグダになってない?とは確かに思った。でも、パソコンが壊れているときだったので、とにかくひたすらに読み進んで満足。なにしろ途中でやめられないんだから。

ストーリーの核に、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」があることは確実。ある目的のためにのし上がり、ある場所に豪邸をかまえたギャツビーの愚行を冷静に見つめる友人、という共通点には多くの読者が気づくと思う。

くわえて、1Q84のオープニングにつづいて、またしても「不思議の国のアリス」が引用されており、それどころか、いくつもの自分の著作をひねってみせる読者サービスもたっぷり。

もちろん、わたしの村上春樹トップスリーである

・中国行きのスロウボート

・蛍、納屋を焼く、その他の短編

・世界の終わりとハードボイルドワンダーランド

を凌駕する出来とは言えないかも知れない。でも“村上春樹を読む快感”を、今回もきっちり味わうことができました。ああ早く次の作品が出ないかな。

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「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」 Dead Men Tell No Tales

2017-07-13 | 洋画

ジョニー・デップジェフリー・ラッシュハビエル・バルデム……ひたすら癖の強い名優を集めて、でもやっていることは「カリブの海賊」ごっこ(笑)。いやそれがいけないと言っているわけではなくて、そういう“ごっこ”を重厚な役者にやらせるからこのシリーズは成功しているのだと思う。

ちょっと想像してみて。ジョニー・デップがいないパイレーツ・オブ・カリビアンってありえないでしょ。あのとんがった俳優が第1作に出演を決めたのにはおおいに驚かされたけれど、以降のすべてを映画館で観ることになったのは、すべてジョニデのおかげ。わたしは簡単な客。

しかも、このシリーズの特徴は何度も主張しているように、“さほど面白くはない”ことだった(笑)。だからこそ、全世界で馬鹿げたヒットを記録したんだと思います。映画というよりも、ゆるゆるのアトラクションとして。

ところが前作あたりから、困ったことに普通に面白くなってきてしまったのだ。今回も、宝探し一直線のストーリーに度外れたCGをぶちこみ、最後にほろりとさせるあたり(「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と同じ手を使っています)、よくできている。イギリスとスペインの艦隊はやっぱり仲が悪いんだなあとか、ハビエル・バルデムが出演を決めたのは、前作で奥さんのペネロペ・クルスがいい思いをしたからかなとか、笑える小ネタもたっぷり。

でも、おかげで(かどうかは知らないけれど)北米での興行が振るわなかったのは皮肉。その分を中国や日本の馬鹿ヒットで補うから続篇は必至だけれども……。

オーランド・ブルームを再登場させておいて、キーラ・ナイトレイはどうしたんだよっ!と思わせておいて最後の最後に。彼女は、1作目から十数年経っていることが信じられないくらい変わらない。まあそんなことを言ったらジョニデは(あのメイクもあるし)まったく変わっちゃいないわけだけど。

エンドタイトルはちゃんと最後まで観なければダメ。なんと某超有名ミュージシャンが特別出演していることが判明。どこに出てたんだよ。まあ、ジョニデの父親役がストーンズのキース・リチャーズだったんだから、あの人が出てても不思議はないけど。

原題はDead Men Tell No Tales 「死人に口なし」。でもこの作品では壮絶に死者がしゃべりまくっております(笑)。

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騎士団長殺しPART2

2017-07-12 | 本と雑誌

PART1はこちら

この小説は恐怖譚、怪異譚でもあり、どこかから聞こえる鈴の音からすべてがスタートするあたり、こんなに素直な日本的怪談でいいのか、とは思う。後半にはなんと三途の川(的なもの。産道をイメージしているのかもしれない)まで登場する。

②セックス描写

まったく能動的ではない主人公だけれど、妻の不貞(のちによりを戻すことが予言されている)が前提にあるからか、セックスだけはさまざまな女性とこなしていきます(笑)。

長大なポルノではないか、といういつもの批判も聞こえてきそうだ。でも、ある女性が自分の胸の大きさ(小ささ)にこだわるように(1Q84の青豆が左右の胸の違いにこだわったように)、パーソナリティをあらわすのにセックスは確かに有効だし、その効果を誰よりも知悉している作家が村上春樹なのだと思う。

同様のことがクルマの選択にも言えて、登場人物たちは、プジョー、プリウス、ジャガー、ボルボ(先週発表された、全車ハイブリッド化、EV化には驚いた)、そして……とキャラにぴったりのクルマに乗っている。

③ユーモア

今回、ひときわ“読ませる”のは、いつもより強調されたユーモアのおかげだと思う。邪悪さのかけらもないリトルピープルとも言える騎士団長と主人公が、クリトリスについて話し合うシーンにはまじで芋焼酎を噴き出した。

もちろんこのユーモアは、陰惨な事件をむしろ際立たせるためでもあるだろう。しかし村上春樹の本質に、乾いた笑いやユーモアがあることはこれまでの著作(特に、川本三郎との共著「映画をめぐる冒険」は必読ですよ。誰も持っていないと内心でにやついていたら、うちの校長も同じことを思ってにんまりしていました。ち。)でも証明されている。今回は、その決定版かも。

PART3につづく

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