小田代ヶ原の霧氷を撮るために、2010年から通うこと7回目。ようやく撮影することができた。(11月の霧氷はこちら”小田代ヶ原/幻の湖「小田代湖」と貴婦人”)
小田代ヶ原は、栃木県日光市の日光国立公園内にある標高およそ1,400mの湿原で、面積は隣接する戦場ヶ原の約4分の1ほど。自然豊かでラムサール条約にも登録され、多くの野鳥や花々を見ることができるだけでなく景観も美しい。小田代ヶ原は四季折々に美しい表情を見せるが、霧氷の光景は特に幻想的であり、筆者は、その光景を撮るために2010年から毎年のように通った。2011年には、幻の湖「小田代湖」が出現。霧氷と水鏡の光景を求めて行ったが、叶わなかった。その後も、タイミングが合わず霧氷には出会えていなかった。
小田代ヶ原のような湿原の霧氷は、霧ヶ峰などの高原霧氷とは、付くための条件が異なり「高い湿度と放射冷却」が大きなポイントになる。空気中の水分が、強い冷え込みによって木々に氷の結晶として付着するが、気象状況としては、雨が降った後日、西高東低が崩れて移動性高気圧に広く覆われることが必要だ。湿度が高く快晴無風の状態が夕方から翌朝まで続けば、放射冷却状態となり強い冷え込みとなって霧氷が付く。ただし、これは経験上の推測で、霧氷が付くという確証はない。今回、この条件が筆者の休日と重なったため、またとないチャンスに恵まれた。
今月、8日と9日にかなりまとまった雨が降った。気温が高く、奥日光も雨である。10日は天気が回復するが、西高東低の気圧配置で平均風速6m。予想天気図を見ると11日は移動性高気圧に広く覆われ、奥日光の最低気温も氷点下の予報。将に絶好のチャンスである。
戦場ヶ原に20時過ぎに到着すると快晴無風。気温はマイナス1℃であったが、快晴無風の状態が翌朝も続き、4時でマイナス7℃まで下がった。準備をして出発。この時期、小田代ヶ原までは、片道およそ3.7kmを歩いて行かなければならない。冷えた体も温まる距離である。懐中電灯を照らしながら歩いていくと、多くの木々に細かい氷の結晶が付いているのが分かった。50cmほど雪の積もった遊歩道で夜明けを待つ。撮影者は、一緒に行った写友のS氏と二人だけ。気温は、マイナス10℃。眉毛が白くなった。
周囲が白々してくると、気温は更に下がりマイナス14℃。湿原の中央に生えている「小田代原の貴婦人」と呼ばれ人気を集めている1本のシラカンバの木とその周囲のカラマツが霧氷で何となく白く見える。推測は的中したようだ。朝日が差し始めると木々は白く輝き始め、より一層美しさを増した。
訪問時は、霧の発生がなく、また朝日が男体山の右肩から顔を出すため、霧氷の列を幻想的に浮かび上がらせることはなかったが、これまでの苦労が報われる瞬間に違いはない。一期一会の光景に出会えたことに感謝したい。
今回は、3月という時期であったが、小田代ヶ原の霧氷が一番美しい秋に、また挑戦したい。
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