カワトンボ属(Genus Mnais)の種分類学的取り扱いについては諸説があり、以前はニシカワトンボ、ヒガシカワトンボ、オオカワトンボに分けられていたが、Hayashi et al.(2004)によって、核DNAのITSI領域の塩基配列と外部形態の解析から2種に分類された。その後、この説における学名と和名が日本蜻蛉学会の標準和名検討委員会において整理され、ニホンカワトンボ Mnais costalis Selys, 1869 とアサヒナカワトンボ Mnais pruinosa Selys, 1853 になった。
ニホンカワトンボは、中部、中央構造線より南部の四国と紀伊半島を除いた全国に広く分布し、アサヒナカワトンボは、新潟・群馬・埼玉・千葉から西の本州から九州まで広く分布し、
両種が混生している地域も多い。両種の生息環境はほぼ同じで、平地や丘陵地の抽水植物や沈水植物が生育する中流域の流れが緩やかな清流に生息している。
両種ともに環境省RDBに記載はないが、ニホンカワトンボにおいては、東京都の区部では絶滅、多摩地域では絶滅危惧ⅠA類、およびⅡ類に、静岡県、愛媛県、宮崎県のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類に、鹿児島県のRDBでは、絶滅危惧Ⅱ類に、富山県、三重県、和歌山県、徳島県、島根県、熊本県のRDBでは準絶滅危惧種として選定している。
アサヒナカワトンボとニホンカワトンボの形態的区別はかなり難しい。頭幅長に対する翅胸高の比が大きく、縁紋の形が細長い方がニホンカワトンボと言われるが、これらの形質は地域差や個体差があり、更には、伊豆半島から山梨県にかけて分布するものは、両種の中間型で交雑種とも考えられているから、混生している地域ではDNA解析をしないと確実な同定は困難である。ちなみに、ITS1領域223塩基対のうち132番目と156番目がTAとなっているものがニホンカワトンボ、CAとなっているものがアサヒナカワトンボ、TGとなっているものが伊豆個体群であるという。
以下に、上記形質を基に分類したカワトンボ属の写真を掲載したが、先述のように同定が極めて困難なため、種名は(仮)とする。
参考文献
苅部治紀・守屋博文・林文男 「神奈川県を中心としたカワトンボ属の分布」 Bull.Kanagawa prefect.Mus.(Nat.Sci),no.39,pp.25-34,Mar.2010
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ニホンカワトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2016.5.5)
ニホンカワトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(2011.5.8)
ニホンカワトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1600(2012.6.23)
アサヒナカワトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 640(2016.5.14)
アサヒナカワトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(2016.5.5)
アサヒナカワトンボ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 3200(2016.5.14)
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コメントありがとうございます。
渓流で飛んでいるカワトンボは、
他のトンボに比べて優雅に飛んでいる感じで
とても美しいと思います。
流れを背景に絵にもなりますね。
昨年5月中旬に日影沢へ行った時に
林道わきから木道へ入った辺りで
近くにいた女性からカワトンボがいますと
教えて頂き少し離れた所に止まっていた
カワトンボを枝越しに撮りました。
翅の色が少し濃いめの茶色だったので
オスのようです。
絶滅危惧種なのですね。