パール富士(スノームーン)を初めて撮影してきたので紹介したいと思う。
ちなみに「パール富士」とは、日没前後と日の出前後に満月が富士山頂に重なり、真珠のように美しく見える様子を呼び、スノームーンは、主にアメリカで使われている呼び名で、ネイティブアメリカンが、季節の風物に基づいて、毎月の満月に名前を付けたことに由来すると言われている。
前記事において「これまで主に富士山を主役に、多くの星々を散りばめる写真を撮ってきたので、今後しばらくは、テーマを"海と星空"に変えて撮っていきたい。」と述べたが、次の月明りがない日は3月13日になるので、それまでは天の川などの星空を奇麗に撮ることができない。
今は新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言中であり、1月からずっと自主的に日中の撮影は控え、それゆえ星々の写真を撮ってきたので、緊急事態宣言が全面解除されるまでは、梅林や河津桜など春の色彩溢れる暖かい光景を撮ることは自粛したいと思っている。
そんな状況の中、最大のチャンスが訪れた。2月27日(土)は17時18分に満月となり、その満月が日没の約1時間後に富士山頂に出るパール富士が見られる日なのである。
太陽が富士山頂に重なる光景は「ダイヤモンド富士」と呼ばれており、たいへん人気がある。太陽は毎日出て沈むから、晴れてさえいれば、毎日2回、必ずどこかで
「ダイヤモンド富士」を見ることができる。一方、パール富士の条件である満月は、基本ひと月に一日だけで、その満月が日没前後と日の出前後に富士山頂と重なるのは、極限られた日しかない。日中や夜中に重なる日はあるが、日中では月は見えず、夜中では富士山がシルエットになってしまう。そのことから「ダイヤモンド富士」よりも希少な光景と言えよう。
パール富士が見られる日を調べてみると、2021年における「沈むパール富士」は、1/29、2/27、4/27、5/26、8/22、9/21、10/20 で7回ほどあり、富士が赤く染まる紅富士とのコラボレーションは、1/29、2/27 の2回あるが、「昇るパール富士」に至っては、富士山も奇麗に撮ろうとすると何と2月27日の1回だけである。ちなみに、私が今後年内に撮ろうとすると、休日と重なる8/22(日)の「沈むパール富士」1回がチャンスになり「赤富士」とのコラボレーションとなるが、晴れていなければ叶わない。
先月の1月30日(土)。満月の翌日であるが、「富士山と月」の撮影を星景写真撮影のロケハンと練習を兼ねて行っており、ブログ記事「月出づ(富士山と月) 」として掲載している。その中で「今回は、満月から1日経過しており、もともとパール富士でもなく、2月の星景写真ロケハンのついででもある。時刻はすでに空が真っ暗な時間。月はかなり明るく、富士と月をバランスよく綺麗に写すことが難しい状況であったが、日本画のような雰囲気のある結果を残すことができた。」と記している。今回は、その経験を活かし、綿密に計算して場所を静岡県富士宮市にある田貫湖畔に決めていた。
そして当日。運よく天気は快晴である。自宅から現地までは車で2時間もかからず、撮影開始は18時半頃からだが、自宅にいても特にすることもなく、また恐らくは、それなりにカメラマンが集まるだろうとの予感で自宅を13時に出発し、田貫湖には15時少し前に到着した。
何と駐車場は満車。路上にも何台も止めてある。釣り客も多いので、しばらく待機していると駐車場内に止めることができた。三脚だけを持って湖畔に行って見ると、あちらこちらに三脚が並んでいる。思った通りである。広い敷地のどこから狙っても同じであろうから、他人とは適度に離れた場所にセットし、時間まで車内で待つことにした。風は収まり穏やかではあるが、気温4℃の日陰で3時間以上も待つのは辛い。ただし、設置場所は車内からは見えないので、三脚は重石で動かないようにし、時折、散策がてらチェックするようにした。まだ明るい日中であり高価な代物でもないが、盗難の被害にあったとも聞く世の中である。無くなっては撮影もできないので、油断は禁物である。
日没は17時40分。どんどん車が増え100台以上あるのではないだろうか。あまりの終結ぶりに、巡回に来たパトカーが驚いていたが、事情を知って路上駐車も黙認したようだ。18時になり、カメラを三脚にセット。無風になり、湖面には奇麗な逆さ富士。ダブル・パール富士も撮れるだろうが、この日の狙いはパール富士だけに満月を大きく写すこと。持参したレンズは300mmの単焦点1本なので、構図を決めたらそのカットだけで勝負である。
集まった多くのカメラマンは、ほとんどが私より年上の年配の方々。写真教室のグループもいらっしゃる。講師の先生は、勿論プロの写真家であると思うが、やはり年配の方だ。生徒の方々に設定から何から指導する内容が聞こえて面白い。
18時半。富士の山頂付近が明るくなってきた。どうやら山頂のど真ん中から満月がお出ましの様である。一斉にシャッター音が響く。モニターで満月をアップにして、月の模様がはっきり分かるようにマニュアルでピントを合わせる。満月はかなり明るい。今回も1月30日同様に日没から約1時間後であるから、富士山と満月、両方を奇麗に写すことは不可能である。そこで今回は、比較明合成を行い「パール富士(スノームーン)」を完成させた。
パール富士ではないが、2011年2月に日の出数分前に沈む満月(有明の月)を比較明合成なしで撮っているので、参考までに掲載しておきたい。この時は、きっと「沈むパール富士」が見られたことだろう。いつかは、究極の美である「紅富士のパール」を撮ってみたい。
次の星景写真の撮影は、3月13日または14日の天気の良い方で、天の川アーチを再度撮る予定である。
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月が出る前の富士山
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 5秒 ISO 400 -2EV(撮影地:静岡県富士宮市 2021.2.27 18:16)
パール富士(スノームーン)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 0.5秒 ISO 400 -2EV / 比較明合成(撮影地:静岡県富士宮市 2021.2.27 18:33)
パール富士(スノームーン)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 0.5秒 ISO 400 -2EV / 比較明合成(撮影地:静岡県富士宮市 2021.2.27 18:34)
パール富士(スノームーン)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 400 -2EV / 比較明合成(撮影地:静岡県富士宮市 2021.2.27 18:35)
パール富士(スノームーン)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 160秒 ISO 400 -2EV / 比較明合成(撮影地:静岡県富士宮市 2021.2.27 18:36)
有明の月
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F16 0.6秒 ISO 100(撮影地:長野県諏訪市/霧ヶ峰高原 2011.2.19 6:24)
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