チョウの形態的特徴や美しさは、それぞれ翅の裏側であったり表側だったりする。翅を閉じた姿の撮影は、どこかに止まってくれれば難しくはないが、撮影者としては、翅を開いた表の姿も撮りたいものである。しかしながら翅を開いた表の姿は、なかなか撮らせてくれない種が多い。ミスジチョウの仲間等は、止まれば必ず翅を開くが、ミドリシジミ属(ゼフィルス)の仲間は、朝の活動前や占有行動時でなければ見られない。つまり、それぞれの種の生態や行動を知っていれば可能性は高いのだが、飛ぶ時以外は、 絶対に翅を開かない種もいる。代表的なものは、コツバメとアオバセセリである。
コツバメ(Callophrys ferrea Butler,1866)は、シジミチョウ科コツバメ属で早春にのみ発生するスプリング・エフェメラルである。ツバメのように敏速に飛んでいてもすぐに草の葉や地面に止まり、春の陽に向けて毛深い体を倒すことが多いので、翅裏の撮影は簡単だが、止まれば頑なに翅を閉じ、翅をすり合わせる行動はしても絶対に開かない。
アオバセセリ日本本土亜種(Choaspes benjaminii japonica Murray,1875)は、セセリチョウ科アオバセセリ属で、年2回5月と8月頃に見られる。
セセリチョウ科では、日本国内で唯一青色の翅を持つ種で翅裏も美しい。飛翔力が強く、目にもとまらぬ高速で飛翔し、花から花へと移動する。他のセセリチョウ科では、ミヤマセセリのように止まれば開く種や、チャバネセセリのように半分くらい開く種が多いが、アオバセセリは絶対に翅を開かない。
両種ともに超ハイスピードで飛ぶため、肉眼で見ても翅表の色はかすかに確認できる程度。一瞬を止めることができる写真に賭けるしかないが、どちらも手強い。翅表を写すどころか、飛翔写真そのものが難しすぎる。いつも証拠程度の画像しか撮れない。
注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。
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コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.4.8)
コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)
アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.8)
アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 ストロボ使用(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)
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