トラフトンボ(Epitheca marginata Selys, 1883)は、エゾトンボ科(Corduliidae)トラフトンボ属(Epitheca)で、5月上旬に繁殖を迎えるエゾトンボの仲間である。エゾトンボの仲間は、全身が光沢を帯びているが、トラフトンボは、名前にあるように黄色と黒の虎斑模様が特徴である。ただし、複眼は成熟すると
金属光沢のあるグリーンになり、エゾトンボの仲間らしい。
4月中旬頃に羽化した未熟個体は水域を離れ、林などで生活をする。成熟した成虫は羽化水域に戻り繁殖行動を行うが、トラフトンボの大きな特徴として、メスの産卵行動を挙げることができる。
産卵は、午後に行われる。オスは、数秒というホバリングをあちこちで行ってはメスを探す。メスを見つけると、雌雄がつながりながらのタンデム飛翔が始まる。産卵場所を求め広範囲を飛び回る交尾態のカップルは、しばらくすると雌雄が離れ、メスは水面近くの植物などに静止し、産卵弁の間に卵を600~800個ぐらい放出して卵塊を作り始める。その後、1回だけ打水してその卵塊を沈水植物に絡ませるのである。卵塊はすぐに数cmから10cmぐらいの乳白色をした細長い紐になってゆっくりと沈み、抽水植物が枯れて倒れた茎などに絡みつくのである。
トラフトンボは、本州、四国、九州に分布し、挺水植物や浮葉植物が繁茂する比較敵深くて大きい池沼に限って生息している。環境省RDBに記載はないが、生息環境の消失や悪化により、都道府県のRDBでは、東京都、神奈川県、青森県で絶滅、多くの県で絶滅危惧Ⅰ類やⅡ類に選定されるほど数が減ってきている。
トラフトンボ属は、国内にもう一種、オオトラフトンボ(Epitheca bimaculata sibirica Selys, 1887)が生息しており、2014年7月に未成熟のメスを撮影しているが、 今年は、オオトラフトンボの成熟した個体と産卵の様子を撮影することが目標である。
注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。
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トラフトンボ(未成熟オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(2012.4.29)
トラフトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(2012.5.5)
トラフトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 400(2012.5.5)
トラフトンボ(ホバリング)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(2013.05.05)
トラフトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 800(2012.06.30)
トラフトンボの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200(2013.05.05)
トラフトンボの産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200(2013.05.05)
トラフトンボ(卵塊)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 800(2012.06.30)
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アオイトトンボの仲間みたいですね。
写真は、たまたまそのような状況の時に
撮影したもので、必ず「半開き」で止まるとは言えません。