ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

沈下橋とホタル

2020-05-25 18:39:05 | ゲンジボタル

 沈下橋とホタルは、高知県が誇る日本の原風景である。

 高知県には、2017年10月にホタル講演会の講師として香南市を訪れたが、是非一度、ホタルが舞う季節に行って見たいと思っていた。
 四国のゲンジボタルは西日本の遺伝子を持ったグループである。現在、東京都内においても移植によって定着した西日本型のゲンジボタルを見ることができるが、西日本型本来の生息環境や発光、飛翔の様子などは、本場でなければ確認できない。そこで、発生時期と新月が重なる日を選定し、5月22日~24日の二泊三日で遠征する計画を本年頭に立てていた。
 しかしながら、大きな問題が発生。新型コロナウイルスの感染拡大である。高知遠征は県をまたがる移動ではあるが、ホタルの研究はライフワークであり不要不急ではない。これだけは、何としても実行したい。私は、4月7日以降は自粛を守り、不要不急の外出は一切せず、風景や昆虫の写真撮影は自宅の庭だけに留めた。そして多くの方々の我慢によってウイルス拡大は収束に近づき、4月7日に発令された緊急事態宣言は、5月14日に39県が解除され、21日には関西3府県の解除が決まった。そして本日、首都圏の1都3県と北海道でも解除となったが、危惧されたことは航空機の減便であった。実際の所1日6往復あった便は1日1往復に減便。予約した便は欠航となってしまったが、振替によって搭乗することが可能になり、計画通りに遠征できることとなった。

 5月22日の羽田空港第一ターミナル。出発ロビーに人影はほとんどない。搭乗手続きを済ませ 14:15発 JAL495便 に搭乗。通常はボーイング737だが、今回は95人乗りのエンブラエル190。機内を見れば、全部で30人ほどしか乗っていない。ソーシャルディスタンスは十分。私は、クラスJの席04A、一列シートでゆったりである。ちなみに帰路は24日 16:20発 JAL496便 クラスJの席02Aに搭乗であった。
 高知空港からは、レンタカーで移動。カローラを予約していたが、まだ16,000kmしか走っていないプリウスが用意されていた。全行程約300km走行したが、燃費は26km/lで、返却時の燃料満タンでは11リットルの給油で済んだ。
高知遠征の計画時に、二晩の内一晩はヒメボタルとも考えたが、森中の乱舞では関東での状況と何ら違いがないことから、二晩ともゲンジボタルを観察することに決めていた。次の記事で紹介する「宿毛のゲンジボタル」をメインとして、初日は高知ならではの光景として「沈下橋とホタル」を選んだ。

 高知県では、1993年に四万十川流域の沈下橋を生活文化遺産ととらえ保存し後世に残すという方針を決定しており、2009年には、沈下橋を含む四万十川流域の流通・往来を通じて生じた景観が国の重要文化的景観として選定されている。その景観に、更にゲンジボタルが舞うのである。
 空港から走ること2時間半。訪れたのは、四万十市にある勝間沈下橋。橋の長さはおよそ150m。四万十川は、川岸も含めると川幅が約300m、流れの幅だけでも約120mもある。こんな大きな川で、果たしてゲンジボタルが飛ぶのであろうか?
 日の入りは19時過ぎ。川辺で待機していると19時半に対岸の川岸でゲンジボタルが発光を始めた。驚くことに、向こうからこちらへ幅100m以上もある川の上をかなり早いスピードで飛んでくるオスがいるのである。全体的には対岸の茂みがある川岸近くを多く飛翔しているが、数頭は沈下橋の真ん中あたりで橋の上下を飛んでいた。関東では有り得ない光景である。四国最長の流れを誇る雄大な清流にゲンジボタルが飛び交う様子は圧巻で、これほどのスケールは全国的にもあまり例がないだろう。ちなみに、ホタルを鑑賞する風情あるホタル船は、コロナの影響で休業であった。
 一週間ほど気温の低い日が続いたことにより、まだ発生初期の段階で大乱舞ではなかったが、たいへん貴重な光景を観察し撮影することができた。

 次の記事では「宿毛のゲンジボタル」を記載するが、今回の遠征では四万十のトンボ公園にも立ち寄っており、そこで出会ったトンボとチョウも後日掲載したいと思う。また、本記事では、トンボ公園にて撮影したホタル科ミナミボタル属のカタモンミナミボタル Drilaster axillaris Kiesenwetter, 1879 とホタル科オバボタル属のオバボタル Lucidina accensa Gorham, 1883 も掲載しておきたい。目的に中にはマドボタル属のオオマドボタルPyrocoelia discicollis (Kiesenwetter, 1874)もあったが、まだ発生時期には早かったようで、残念ながら出会うことができなかった。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。尚、Facebookでは、一部の写真を 1920*1280 Pixels で掲載しています。

勝間沈下橋の写真

勝間沈下橋
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F5.0 1/5秒 ISO 800 -1 1/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22 19:24)

沈下橋とホタルの写真

沈下橋とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 20分相当の多重露光 ISO 640(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)

四万十川とホタルの写真

四万十川とホタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 7分相当の多重露光 ISO 800(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)

カタモンミナミボタルの写真

カタモンミナミボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 1000(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:33)

オバボタルの写真

オバボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 3200(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:36)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2020 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.



最新の画像もっと見る

コメントを投稿