ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ミヤマシジミ

2022-09-19 14:32:51 | チョウ/シジミチョウ科

 ミヤマシジミ Plebejus argyrognomon (Bergstrasser, 1779) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ヒメシジミ属(Genus Plebejus)に分類されるチョウ。これまで栃木県、山梨県、富山県で観察し撮影しているので、それぞれで写した写真を掲載しまとめた。

 ミヤマシジミは、翅裏は灰色で、外周に沿ってオレンジの帯が入る。そのオレンジ帯の中にある黒斑に水色の構造色がある点が特徴である。ユーラシア大陸から北米大陸にかけての寒冷地に広く分布する草原性チョウ類で、国内の分布域は本州のみで、分布の中心は関東~中部地方で、食草であるマメ科のコマツナギが生える乾燥した河川敷や堤防の草地、富士山や浅間山、八ヶ岳など火山の裾野に広がる低茎草地に局所的に生息している。
 食草であるコマツナギは日当たりが良く、ススキなど背の高い草本が生育しない環境を好む。河川の増水や植生遷移の影響を受けない乾燥した草地が長期間安定的に存在することがミヤマシジミの生息条件にもなっている。
 ミヤマシジミは、近年の河川改修や護岸工事、草刈りの放棄による植生遷移等により、全国的に激減している。東京大学の調査では、1950年以降現在までに記録されてきた確実な産地と、未発表の確認産地の計16都県約300市町村のうち、現在絶滅したと思われる産地はおよそ6都県約140市町村に達し、この数は実に半数近くにのぼる。本種の分布推移を過去10年ごとに比較すると、1970年以降から生息地が大幅に減少し、特に分布の辺縁部や関東周辺で著しいことを明らかにしている。本種は、環境省版レッドリストでは、絶滅危惧IB類にランクされており、都道府県版レッドリストでは、山梨県・埼玉県・群馬県・福島県で絶滅危惧I類に、静岡県・長野県・岐阜県・富山県・新潟県・山形県・栃木県では絶滅危惧Ⅱ類に選定している。
 また本種の幼虫は、アリと共生関係を結んでいることが近年の研究で分かっている。共生しているアリ類の種としては、クロオオアリ、クロヤマアリ、トビイロケアリの3種が確認されており、ミヤマシジミの生息には、アリの生息も必要である。
 山梨県の生息地は、富士山の火山灰が積もった草原で、富山県と栃木県は、大きな河川の河川敷で増水の影響を受けない高さにあるが、いずれの生息場所もかなり局所的で、十数メートル四方でしか発生していない。成虫は食草であるコマツナギの周囲を離れることないようである。
 どの生息地も草刈りは一切行われていないが、栃木県の生息地ではススキやつる性の植物が進出し、過去の状況に比べてコマツナギはかなり減少傾向にある印象だ。このままでは、ミヤマシジミの生息数は年々減少していくものと思われる。継続して観察し、状況を把握していく必要があるだろう。

 この週末は台風14号が鹿児島に上陸し、その影響で関東も土砂降り時々晴れの天気である。九州中国方面で被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げたい。
 次の週末以降は、天気次第ではあるが、雲海が滝のように流れる様子と星空の組合せ、そして秋ならではのトンボ達を追いかけたいと思っている。

参照:ミヤマシジミ属

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 250(撮影地:栃木県 2021.9.12 8:47)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/320秒 ISO 320 +1EV(撮影地:栃木県 2021.9.12 8:05)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 1/320秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影地:栃木県 2022.9.16 7:21)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 1/250秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影地:栃木県 2022.9.16 7:20)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 800 +1EV(撮影地:栃木県 2021.9.12 8:48)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500(撮影地:富山県 2016.5.28 9:20)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 250 +1EV(撮影地:栃木県 2013.9.28 8:20)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:山梨県 2013.8.14 6:47)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500(撮影地:富山県 2016.5.28 9:21)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(撮影地:富山県 2016.5.28 9:21)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 250 +2/3EV(撮影地:山梨県 2013.8.14 6:48)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 1/250秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影地:栃木県 2022.9.16 7:19)
ミヤマシジミの写真
ミヤマシジミ(少しだけ青い鱗粉が出現した秋型のメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 250 +2/3EV(撮影地:山梨県 2013.8.14 6:42)

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