ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

岐阜県関ケ原のゲンジボタル

2021-06-07 21:52:36 | ゲンジボタル

 岐阜県関ケ原のゲンジボタルを観察し撮影してきたので紹介したい。尚、本ブログでは、撮影地については基本的に都道府県名までの表記にしているが、今回は、既に広く世間に知られていること、町指定の天然記念物であり条例によって保護されていること、あえて明記することによって知って頂きたい事実があることから、撮影地を公表した。

 今回、前記事のヒロオビミドリシジミの撮影で大阪まで遠征し、時間的にも余裕があったため、大阪からの帰りに、今まで訪れたことがないホタルの生息地に寄ってみたいと思っていたところ、岐阜県関ケ原がちょうどゲンジボタルの発生時期にあたると知り、急遽行って見ることにした。
 岐阜県関ケ原町を流れる藤古川は、古くからホタルの生息地として親しまれてきた。一時、絶滅が心配されたが、自然環境保護対策の推進で乱舞する風景が復活し、昭和43年には、河川全域が町の天然記念物に指定されている。
 関ケ原は初めて訪れる場所であり、何の情報もなかったので、まずは不破関資料館に行き、受付の方に名刺を渡して話を聞いてみた。ご丁寧に対応頂き、藤古川の名神高速道路高架下や東海道新幹線ガード付近がよくホタルが飛んでいる所と教えて頂いた。車の駐車を了承後、徒歩で散策してみることにした。
 すぐに「ホタル生息地」という地図が書いてある看板も発見。やはり、ポイントは同じところの様だ。水田や麦畑の脇の細い道を歩いて行くと数件の民家があり、お宅から出てきた奥様にも名刺を渡して声を掛けてみた。すると、2018年の台風21号で護岸が崩れるなどの被害があり、すぐに河川改修したところ、それ以来、ホタルがいなくなってしまったと言う。それまでは、家の中まで飛んでくるほど沢山いたが、昨年は1頭も見なかったらしい。それでも、色々と教えていただき、一番のポイントを案内してくれた。不破関資料館の受付の方、そして民家の奥様、お忙しいところご教示いただき、この場を借りで御礼申し上げたい。

 ポイントが分かったので、あとは暗くなるまで待つだけである。と言っても、まだ15時。日の入りまで4時間もある。ゲンジボタルの幼虫が上陸するであろう場所や産卵しそうな場所など周囲の環境を丹念に調査し、その後、橋の上にカメラをセットしたのが16時。他には誰もいない。こんな早くから準備するのは私だけ。風の香りを感じながら、川の音、鳥の声に耳を澄ませる。時折響く新幹線の轟音・・・こうした一見無駄に思える時間も、自然の中に身を置くことに深い意味がある。
 ようやく19時。伊吹山の向こうに太陽が沈んだ後が凄かった。今までに見たことがない夕焼け空である。しかしカメラはホタルが舞うであろう川に向けてセット済みで動かせない。もう一台は、フィッシュアイレンズが付いているが、遠くに止めた車の中。カメラを置き去りのまま取りにもいけず、仕方なくスマホで撮った。まさに一期一会の光景。いつ何が起きるかもしれない。常に備えていることの必要性を身に染みて感じた。
 19時半。そろそろホタルが光っても良い時間にも関わらず光らない。観賞者も数人やってきた。と言うことは、いるのだろう。あちこちに目を凝らすが、どこにもホタルの光はない。20時になって光らなかったら、諦めて撤収しようと決めた19時50分。やっと1頭が発光を始めた。

 生息地の周囲の農道は、車が1台やっと通れるくらいの狭い道であるから、観賞者は、みな遠くに車を止めてやってくる。街灯も民家もないのでホタルには安心かと思いきや、ここでも懐中電灯。しかも川面や護岸に向けて、LEDの強烈な灯りを照らすのである。一体、何故? 肝心のゲンジボタルは、1頭だけが悲しげに川上に流れて行った。
 観賞者のお一人が、私に声を掛けてくれた。「ここは、前は何百といたんだが、この数年すっかりいなくなってしまった。今日は、向こうの水路の方が多いから行って見ると良い」と。すぐに教わった方へ移動してみる。麦畑の脇を流れる細い水路の周囲を50頭ほどのゲンジボタルが飛び交っていた。発光時間が短く、同期明滅の間隔も2秒ほど。生息環境的には東日本型ゲンジボタルのようだが、発光は明らかに西日本型である。映像も残したので、東日本型の発光と見比べていただきたいと思う。悲しいことに、ここでは捕虫網で採集している方がいた。

 藤古川本流のホタルは激減しても、こうして近くの細い水路で懸命に生き延び命を繋いでいた。本流の環境が落ち着けば、徐々に復活するだろう。ただし、5年はかかるかもしれない。それまでに、再び台風などで被害がでないこと、そして観賞者が知識とマナーを持つことを願うばかりである。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

里の夕焼け空の写真

里の夕焼け(スマートフォンで撮影 2021.06.05 19:10)

里の夕焼け空の写真

里の夕焼け(スマートフォンで撮影 2021.06.05 19:15)

ゲンジボタル(関ケ原)の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 65秒 ISO 320(撮影地:岐阜県関ケ原町 2021.06.05 20:00)

ゲンジボタル(関ケ原)の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 24秒 ISO 320(撮影地:岐阜県関ケ原町 2021.06.05 20:20)

ゲンジボタル(岐阜県関ケ原)

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