ゲンジボタルは、中部山岳地帯(フォッサマグナ)を境に遺伝子が異なっており、発光パターンも明瞭に異なっている。オスの気温20℃におけるオスの集団同期明滅の間隔は西日本は2秒、東日本では4秒である。以下の映像は、岐阜県と千葉県で撮影したゲンジボタルの発光の様子を比較したものである。発光の違いが明確である。ちなみに、長野、静岡、山梨の3県周辺では3秒の「中間型」も存在し、長崎県五島列島に生息するゲンジボタルの明滅リズムは1秒に1回という日本一速いリズムで光ることが報告されている。(注意:気温によって集団同期明滅の発光間隔は異なり、西日本型ゲンジボタルでも気温が低ければ2秒より長くなる)
どんな生物でも「分布域」というのを持っており、これは自然の摂理によって定められている。そして、生物の分布に大きな関わりを持ってくるのが土地の歴史である「地史」であり、地史における地形の変化が生物の分布に影響を与え、その結果、現在の分布域が成立したと考えられている。ホタルも同様である。 以下の動画は、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。 ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
ゲンジボタルを復活させたい、増やしたいという思いから、分布域を無視して、東日本に西日本のホタルを安易に移動することが多く行われているが、これは生物地理学上の系統や分布を攪乱することになるのである。ゲンジボタルはそれぞれの生息環境に適応した生態的特徴もあり形態的相違も見られる。それぞれの分布域には、生物地理学上生じた「地域固有性」があるのである。
もし、もともとホタルが生息している場所に遺伝子の違う他地域のメスを種ボタルとして持ってきた場合、DNAは母性遺伝するために、他地域の遺伝子が急速に広がる可能性が極めて高い。つまり、その地域に固有の遺伝学的特徴が失われる「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまうのである。
他地域のホタルを移動し定着させても、生態系にはほとんど影響はないし、見た目には何も変わることのないホタルだ。繁殖して増えれば嬉しいものである。しかしながら、それぞれ特徴を持った地域固有種は守らなければならない。守るためには、人為的移動は避けなければならない。安易な移動と放流は、ホタル保護でも自然保護でもないということを知っていただきたい。
日本ほたるの会、初めて知りました。勉強させていただきます。