ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

和良蛍

2023-06-19 18:26:43 | ゲンジボタル

 和良蛍は、岐阜県郡上市和良町に生息するゲンジボタルのこと。昨年の6月12日に初めて訪れたが、あいにくの月明かりと発生初期であったため、発光飛翔の数が少なかった。そこで、今年も訪れ、これぞ「和良蛍」という写真と映像を撮影することができ、また深夜まで滞在してメスの産卵行動などを観察してきた。

 和良蛍を守る会の水野英俊会長より、先週に本年の発生状況をご連絡をいただき、19日前後が発生のピークであろうとの予測。迷わず私の休日である18日(日)に遠征することに決定。17日(土)は、仕事が終了次第、北陸に向かって再度ヒサマツミドリシジミを狙うつもりであったが、仕事が忙しく疲労困憊。そもそも、11日(日)にヒメボタルを撮ってからというもの、先週はPCを前にして椅子で2日寝てしまい朝を迎えている。にも関わらず北陸から岐阜への遠征では車中二泊が強いられるため、体力的なことを考えてヒサマツミドリシジミは来年に延期することにし、土曜の夜は自宅のベッドで寝ることにした。
 翌18日。天候は晴れ。予想最高気温は30℃である。自宅を9時に出発。ナビゲーションは、中央道を土岐ジャンクションまで行くのではなく、八王子ジャンクションから圏央道で東名高速、新東名高速経由を指示。走行距離が50km以上も多いのになぜか?取り敢えず指示に従い、途中の浜松SAで昼食。家康フェアーをやっており、旨辛味噌カツ丼を頂く。道は空いていたが、結局、郡上八幡ICで降りて和良町に着いたのが15時。6時間もかかってしまった。
 今回の目的は、和良蛍らしい写真と映像の撮影の他、西日本型ゲンジボタルの集団性、特にメスの集団産卵を観察することである。早速、生息地を散策し、環境を見て回る。一体、メスはどこに産卵するのか、見当が付くところをいくつかピックアップした。川には降りることができないが、のぞく限りでは、あまりカワニナがいないことに驚いた。

 この日は、晴れで無風。気温は日中は30℃だったが、夕方で25℃。月もない。まさにホタル日和である。17時から三脚とカメラをセットし待機。昨年は19時45分に一番ボタルが発光を始めたが、今年は19時40分。5分後には別の場所で二番ボタル。10分後には飛翔。20時を過ぎたころから多くのゲンジボタルが発光を始めた。
 昨年の経験から、一番多く発光が見られた場所に2台のカメラを左右に向けてセットしたが、どちらでも、これまで見たことがない光景が広がった。川岸から背後の林の上まで無数のゲンジボタルが発光する。しかも堰があるため川の流れが穏やかで、ホタルの光が川面に映るから、光の数が2倍になるのである。川面に映る様子は、かつで高知県宿毛市で撮っているが、郡上の和良蛍の光景は、それを上回る。オスたちの同期明滅する光で山が動いているようにもみえる。このロケーションは、ここならではである。
 発生しているゲンジボタルの数は、とても数えることはできないが、目の前だけで数百頭はいるだろう。500mほどの散策路全体では数千頭はいるのではないだろうか。このロケーションは、ゲンジボタルが毎年一定数を保って発生するのに大切な役割を果たしている。堰は、大雨が降った時には濁流になるのを防ぎ、また渇水にもならない。また護岸の石組みは、幼虫の格好の隠れ場所になっているのである。
 昨日の土曜日は、鑑賞者がとても多く、散策路が渋滞したそうだが、さすが日曜日とあって、鑑賞者は20人ほど。カメラマンも数人しかいない。残念なことに、数人がスマホの明かりを向けたりしていたが、それよりも街道を車が通るたびにライトが当たるのである。しかも、地元の車ではなく鑑賞者の車なのである。ライトが当たるたびに発光を止めてしまう。やはり、ヘッドライトを付けなくてもよい、明るい時間に来てほしい。この問題の対策には、大きな看板を設置するなどして遮光するなどの工夫が今後必要であろう。

 21時になり、発光活動も終わりかと思いきや、一向に収まる気配がない。そこで、場所をそれまでとは違った風景である川下へ移動してみた。そこでは、フィルムカメラと同じ撮影方法である長時間露光で何カットも撮影し、22時半からは、和良蛍を守る会の水野英俊会長とともに、メスの飛翔や産卵場所を観察することにした。
 その時間になっても、発光するオスは相変わらず多い。20時台の1/3程度ではあるが、こんな光景を見るのも初めてである。その中を、水面上を一直線に発光飛翔する個体が何頭もいる。メスである。そのほとんどが上流に向かって飛んでいく。そして対岸の水際に止まって発光すると、何頭かが、そこに引き寄せられるように飛んでいく。残念ながら対岸までは行くことができないため、その様子は遠くから見ただけであるが、おそらく産卵場所なのであろう。23時半頃になると、発光数もかなり少なくなり、飛翔するメスも見られなくなった。

 駐車場に戻り、帰り支度をしていると、生息域から遠くであるにも関わらず、2頭のゲンジボタルが私の所に飛んできた。きっと見送りの挨拶に来てくれたのだろう。また、スーと生息域の方へ戻っていった。現地を翌19日(月)午前0時に出発し、帰路は中央道を選んだ。途中、駒ケ岳SAで2時間の仮眠を取り、6時に帰宅した。和良蛍を守る会の水野英俊会長より、今年の11月にホタルの勉強会の講師を依頼されたので、秋に再訪の予定である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 15秒×30カット ISO 4000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 13秒×35カット ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 63秒 ISO 1000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:38)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 16秒 ISO 1000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:48)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 22:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒×7カット ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 22:10)
和良蛍(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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