ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

東京のヒメボタル(ブナ林編)

2024-07-15 15:05:08 | ヒメボタル

 東京のヒメボタルの発生が始まって一週間。発生数の状況確認のため7月9日と同じ生息地を訪れた。結果から言うと、前回と発生数はほとんど変わらず、50mくらいの範囲で、30頭余りであった。
 杉林は間伐と下草狩り、ブナ林では乾燥が懸念材料であったが、12日金曜日には雨が降り、訪れた13日も夕方に雨が降ったので、乾燥が原因ならば発生数が増えるだろうと期待したが、思ったほど増えていなかった。ただし、メスが確認できなかったことから、まだこれからが発生のピークになる可能性もある。あるいは、ヒメボタルは成虫になるまで2年を要するため、小規模な生息地では2年周期で発生数が増減するため、今年は少ない年とも考えられるが、環境の急変で減少したならば、復活にはゲンジボタル以上に時間がかかる。飛ぶことができないメスが産卵する場所は局所的であり、産卵数も30~90と少ない。幼虫も狭い範囲で生活しているから、何かあれば多くが一度に死んでしまうからである。
 今のところ何とも言えないが、原因が環境の急変だとしても、この東京のヒメボタル生息地においては、対策を立てることも、具体的な保全策を講じることもできない。ただただ自然に回復するのを待つだけの無力さが悔しい。

 東京のヒメボタル生息地では、肉眼での観察とともに、様々な場面を写真と動画に記録として残しておきたい。他の地区では10年前から観察し何枚もの写真を撮ってきており、この生息地においても4年間でいくつもの証拠を残してきた。先週は、舗装された林道にカメラをセットしたが、今回は、ブナ林にカメラを2台据えた。1台は動画撮影用で、もう1台は向きを変えて写真撮影とした。
 発光の開始時刻は19時20分。9日よりも10分早い。特に生態学的な理由はなく、その個体がたまたま一番早く暗くなる場所にいたのだろう。19時40分頃になると発光する個体が増え始め、45分には飛翔も始まった。
 発光飛翔する個体を見ていると、2~3頭がまとまって飛翔する場合が多く見られた。またどの個体も、おおよそ決まったルートで50m位の範囲を行き来している。漆黒の闇の中で、よく木々にぶつかることもなく飛べるものだと感心する。どこに行ってもそうなのだが、ヒメボタルのオスは、メスが全くいない場所へも飛んでいく。発光飛翔の目的は、勿論飛べないメスを見つけて交尾することなので、周囲を隈なく探索しているのだろうか?あるいは、何頭ものオスが、広範囲を発光飛翔することで、メスに存在を知らせ、メスの発光を促しているのだろうか?
 メスの発光は弱く、下草の葉上よりも地表で発光していることが多い。林道脇などの目立つところにはいるが、発光器が地面を向いているから、光っていても上からでは見つけにくい。限られた時間内で、そのメスとの出会いを果たさなければならないのだから、本能のままに飛び回っているに違いない。
 「ホタルは、なぜ光っているのか」それを理解して初めて、単に幻想的という一言でしか表現できない人たちには分からない"silent sparks"の光景が見えてくる。

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

東京のヒメボタルの写真
東京のヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 2分相当の多重 焦点距離フルサイズ換算42mm(撮影地:東京都 2024.07.13)
東京のヒメボタルの写真
東京のヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 4分相当の多重 焦点距離フルサイズ換算42mm(撮影地:東京都 2024.07.13)
ヒメボタルの動画(都多摩西部)
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