ホソミモリトンボは、北海道と本州に生息しているが、本州での確実な生息地は数か所しかない。古い文献に掲載されている生息地も、実際に行って見た所、現在では尾瀬と上高地以外はほとんど絶滅状態であると言える。それは、高山性トンボであり、高層湿原にのみ生息していることで、温暖化と湿原の乾燥化により生息できなくなってきていることが原因と思われる。
これまで、この極めて希少な種を写真に収めようと試みてきたが、尾瀬と上高地は撮影できる状況ではなく、探し始めて10年目の昨年に、ようやく間近で撮影できる生息地を自力で見つけることができた。当地には4回通い、オスの老個体の飛翔写真は満足できるレベルのもの残すことができた。(参照:ホソミモリトンボ(ホバリング))しかしながら、まだまだ課題を多く残しているため、今年も訪れることにしたのである。
このホソミモリトンボの生息地も、植生遷移が進んでおり、10年以内には生息環境ではなくなってしまう可能性が大きい。当地は閉鎖的であり、同じ生息環境の場所は数十キロも離れているから、草原化すれば、この場所では絶滅し貴重な生息地がまた1つ失われることになる。と、分かっていても、保全に関しては何もできない。
唯一できることは、絶滅の速度を早める採集者を排除するために、写真仲間であっても情報を広げないこと。そして本種の生態に関して、当地でのライフスタイルを明らかにし、各ステージの写真を記録として残すことであり、今年は以下の目標を掲げて、7月21日より訪問を開始した。
- 発生時期の調査
- 活動時間と内容
- 若い個体の体色に重点を置いた撮影
- 交尾態の撮影
- 産卵の撮影
写真はピンボケが多いが、今回知りえた事柄とともに以下に掲載した。今後も訪問は継続して行い、証拠となる記録を1つでも多く残していきたいと思う。
ホソミモリトンボの観察結果(2024.7.21現在)- 7月7日では飛翔個体なし(知人の観察)
- 朝6時の気温18℃
- オスは、8時15分頃から摂食活動を開始
- オスは4頭を確認したが、探雌行動は1頭で1回だけ
- 30分から1時間おきに摂食活動し、終えると森へと飛び去る
- 8時半過ぎに産卵を確認
- 1時間おきくらいに4回ほど産卵(確認の最後は11時。午後は不明)
- メスは警戒心はなく、人の足元近くの湿地でも産卵
- 産卵は、湿地に降りて草につかまり、腹部先端を水中に入れる(産み付けるのは、植物か土かは不明)
- オスの飛来は11時半で終了(午後は不明)
以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2024 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます