日本におけるタテハチョウ科(Family Nymphalidae)タテハチョウ属(Genus Nymphalis)は、以下の3種が生息している。
- タテハチョウ属 Genus Nymphalis
- エルタテハ Nymphalis vaualbum ([Denis et Schiffermuller], 1775)
- キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758)
- ヒオドシチョウ Nymphalis xanthomelas japonica (Stichel, 1902)
上記の進化上近縁な3種は、いずれも羽化後に標高の高い所に移動し、晩夏から初秋になると標高の低い所に降りてきて越冬し、翌年の5月頃まで生きる長命なチョウであるが、今回、これまで撮影していなかったエルタテハの翅裏を撮ることができたので、ヒオドシチョウ属として3種をまとめて掲載した。単に個々に写真を撮るだけではなく
進化上近縁である種の形態や生態、生息環境などを学び、さらに実際の知見によって生態系を理解でき、自然保全を考えることができるのではないだろうか。
尚、キベリタテハ及びヒオドシチョウの詳細については下記リンクを参照頂き、本記事ではエルタテハについて記しておきたいと思う。
エルタテハは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸北部の旧北区のほぼ全域と北アメリカ大陸に分布し、日本では北海道と中部地方以北の本州に分布する。北海道では平地から山地にかけて、本州では主に標高1,000 m以上の食樹であるニレ科植物(ハルニレなど)やカバノキ科植物(ダケカンバ、シラカンバなど)がある落葉広葉樹林等に生息している。同属のヒオドシチョウと形態が似ているが、本種は、後翅の裏面中央部に和名の由来となっている白色のL字紋があるのが特徴である。
ノリウツギやナナカマド等の花を吸蜜することもあるが、ダケカンバ等の樹液、獣糞を吸ったり、腐った果実に集まったり、地面で吸水したりすることが多い。また、コンクリートの擁壁に止まり、エフロレッセンス(白華)現象によって生じた炭酸カルシウムの結晶を吸っている様子を見ることも多い。
本種はもともと個体数が少なく、植林に伴う自然林の消滅や生息環境の少しの変化によっても個体群が維持できなくなる可能性がある。環境省カテゴリにはないが、新潟県のRDBには準絶滅危惧種として記載している。
参照
キベリタテハ/キベリタテハがいない?
ヒオドシチョウ
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エルタテハ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12)
エルタテハ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F4.8 1/320秒 ISO 200(撮影地:群馬県吾妻郡嬬恋村 2012.08.25)
エルタテハ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 320 +1EV(撮影地:長野県佐久市 2018.08.12)
キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(撮影地:群馬県嬬恋村 2012.08.25)
キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 200(撮影地:群馬県嬬恋村 2012.08.25)
ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 500(撮影地:山梨県北杜市 2013.06.08)
ヒオドシチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 1600(撮影地:山梨県韮崎市 2013.06.23)
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