秋の里山風景・・・鮮やかに色づいた紅葉も良いが、たわわに実をまとった大きな柿の木も印象的である。柿は、一説では氷河期の終わり頃に中国大陸から日本に渡ってきたと言われており、果物の中では唯一日本固有の種である。学名は Diospyros kaki Thunberg 「カキ」という日本語がそのまま使われている。意味は「神様の食べ物」である。
柿は、古来より日本人と深いつながりがあったようだ。縄文・弥生時代の遺跡から柿の種が出土しており、食用として広まっていたと言われる。「古事記」や「日本書紀」にも柿の名前が記されている。また、鮮やかで濃い橙色の柿の実の色は、「柿色」として日本の伝統色として古くからある色名で、器の世界では柿右衛門が鮮やかな柿色を出す為に何年も苦労した話がある。江戸時代末になると、家屋のそばには必ず柿の木が植えられ、松尾芭蕉は「里古りて柿の木持たぬ家もなし」と句を詠んでいる。柿は、秋の季語であり、風物詩となったのである。そしてその光景は、我々がイメージする日本の原風景である。
このように柿は、日本の歴史や伝統文化と共に日本人に愛されてきたが、現在、放棄放置された里山では多くの実が付いたままの光景を目にする。ある時、越冬するチョウの撮影の帰り道、寂れた里山の斜面で柿の実だけを残して佇む柿の木が目に入った。いつから放置されているのか分からないが、枝の剪定もされず樹形も乱れ、実も小さい。紅葉スポットの近くでもあるから人や車の通行量は少なくないが、誰も見向きもしない。里山に生き残った柿の木が深い悲しみを訴えているような気がしてカメラを向けた。
実りの秋。「和」を感じさせる柿は、古くから日本人にはおなじみの果物でもある。「柿が赤くなると医者が青くなる」と言われるほど、柿は栄養豊富で、二日酔いにも良いと言われる。渋み成分のタンニンにはアルコールを分解する作用があり、利尿作用があるカリウム、肝臓の働きを助けるビタミンCも豊富なため、ワインを毎日1本空ける私には心強い存在だ。歴史や伝統文化を噛みしめながら旬をいただきたいと思う。
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柿の木
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/60秒 ISO 100 -1EV(撮影地:千葉県 2013.12.01 12:32)
柿の木
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/13秒 ISO 100 -1EV(撮影地:千葉県 2013.12.01 12:24)
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