散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

なぜか岡山(6)

2009年09月19日 21時04分41秒 | 飲み歩き・道外(東京以外)
2日目も夕方になり夜の岡山に繰り出す。まずは昨日、店の前で声をかけてきたおばちゃんが好印象だった、西川近くの「K」へ。偶然かも知れないが、店を探索して歩いていると、何人かのお店の人に声をかけられた。それがことごとく良い感じの人なのである。



さて、カウンターに座り、まずはビールを飲む。通しは穴子きゅうりとイカの酢味噌。今日は岡山の味を中心に行こう。

まずは、ままかりだ。岡山県内では「隣家に“まま(ご飯)”を借りに行くほど美味しい」そうだが、それ以外の地域では全く注目されていないため、美味しくないのかもしれないという魚だ。焼いて味付けしたものと、一般的な酢漬けのものがあるようなので、両方食べてみる。

まずは酢漬け。後ほどホテルの朝食でもままかりが出てきたのだが、正直なところ漬かりすぎており、どんな魚でも同じではないかという味になっていた。しかしこの店では、魚の形もシャキッとしており、良い味付けだと思う(しかし、絶妙というほどでも…)。



続いて、焼きままかり。こちらは焼いた香ばしさが感じられ、絶妙の一品だと思う。これならば、私ももっと食べたいくらいだ。



さらにいわし天ぷらと、10食限定というばら寿司を注文。いわし天ぷらは火の通し加減が素晴らしいのだろう。中はちょっとねっとりした感じが残るほどで、小いわしの味わいがはっきりとする。



ばら寿司はいわゆる五目寿司のようなものである。上にのった具はエビ、タケノコ、椎茸、アサリ?、穴子、サワラ、レンコン、錦糸卵など。華やかであるが、まあ、想像通りの食べ物だろう。喜平という酒を燗にしてもらい、一緒に飲む。



この店はお店の人も良く、お客さんも楽しんでいる様子だ。岡山の味を味わうには良い店ではないだろうか。しかし、食べ物のボリューム感は少な目で、上品な店といえるだろう。

あまり酔わないうちに、事前に調査しておいたバー「S」へ移動する。まず1杯目はジンフィズ。なかなかの手練で若いバーテンダー氏が作ってくれた。それを飲みつつ、本日の構成を考えて…。

考えてもいつも変わらないのだが、2杯目はマティーニ。ジンの銘柄を聞かれたので、ブードルスと言ってみた。そして店主が作ったマティーニは…、これはさすがの味だ。ブードルスを使ったせいか、かなりのロングステアをしていたようだが、その効果が出ている。味に丸みはあるが、薄まっていない。感心させられる出来具合である。

3杯目はジン+青りんご+コアントロー+ライムの、甘め+酸味の強いカクテル。これを飲みながら、マスターに最近のカクテルコンテスト事情を聴く。クラシックカクテルを発展させたものが基本にはあるそうで、ある年はギムレットを進化させ、アクアビットを使ったものが優勝したそうである(材料も3種類で、シンプルだったそうだ)。

すると次の年には、それに青りんご風味を加えたもの(もちろん、単純に足しただけではない)が優勝し、さらに次の年は梨の風味を効かしたものが優勝したそうだ。前年のを参考にするだけではないのだろうが、ある程度の流行りというのはあるようだ。

最期に強烈なペルノー+グレナディン+オレンジジュース少量の、ゼロというカクテルを飲む。1930年代のクラシックなグラス(昔はステム部分が短いらしい)で、飲ませてもらったが、個性的で初めて飲む味わいのカクテルであった。



他にもサパンというもみの木のリキュールを味見させてもらったり、岡山の興味深い話をいろいろ教えてもらった。何とも素晴らしいバーで、またいつか岡山に来ることがあったら、再訪したいものである。

今日はこの辺で帰宅。今回の旅行では、東京出張の時などに比べ、非常に慎重なナイトライフを過ごしているなあ。

今日の歩数は20975歩。

なぜか岡山(5)

2009年09月19日 16時34分59秒 | ART
今日の午前中は、岡山県立美術館で「ターナーから印象派へ」展を見る。最初に言っておくが、ターナー作品は5点(笑)。といっても悪い展覧会ではなかった。



ウィリアム・ヘンリー・ハント「イワヒバリの巣」:今回一押しの作家。薔薇のピンク色、卵の青色と色彩が非常に素晴らしい。
エドワード・ダルジール「夕空の川景色」:紫を使いながらバランス良く仕上げている。
ジョン・エヴァレット・ミレイ「グレン・バーナム」:林の間を老婦人が向こうに歩いて行く、地味な画だ。

アンソニー・ヴァンダイク・コプリー・フィールディング「海岸風景」:雄大かつ様になっている。
ウィリアム・クラークソン・スタンフィールド「テクセル川河口」:シャープに荒々しい水の流れを描き、よくできている。空気遠近法を使い、印象派ではないものの大気の感じが出ている。
ジョン・ウィリアム・ノース「ストブホール近くのテイ川」:水が一瞬澱んで、流れ下るところを描いたテク自慢な作品。

ジョージ・フレデリック・ウォッツ「ネス湖」:もやーっとした湖の雰囲気が描けている。
アルフレット・ウィリアム・ハント「ハイデルベルク」:幻想的建物と風景。緑の山にピンク色で朝焼けの空を表現。不思議なセンスだ。
エドウィン・ランシア「乱射」:死んだ母鹿に寄り添う子鹿。古典的な傑作。

ジョージ・クラウセン「春の朝:ハーヴァーストック・ヒル」:娘を連れた実に美人の母。喪服らしいものを着ているので、よからぬ想像が…。ロシア絵画を思わせる作品だ。
ジョン・ウィリアム・ゴッドワード「金魚の池」:象徴主義作品。金魚にえさをやる女性を描いただけなのだが…。実にすばらしい作品である。
エドワード・アトキンソン・ホーネル「春の目覚め」:女性を描き、乱雑に見えて上手い。

ジョウゼフ・マラッド・ウィリアム・ターナー「タブリ・ハウス‐準男爵J・F・レスター卿の屋敷、風の強い日」:湖の上に天候の悪化を予感させる、黒い雲の帯がかかっている。不吉な感じの作品。
ポール・ゴーギャン「ディエップの港」:さりげない港からの風景。らしさが開花する前だと思うのだが、これも悪くない。

続いて常設展。
■「大正期以降の油彩画と現代の美術」
坂田一男「習作(鍵のあるコンポジション)」:昭和元年にして、完成度の高い洗練された抽象画。
木原千珂「LUMIERE」:なんと木原康行の奥さんの作品。色と形による視覚マジック系の作品。

■「原撫松の軌跡」
原撫松は46歳で死んでしまった、作品を見る限りでは非常にまじめな人だ(多分)。
「鈴木トメ像」「鈴木タヨ像」:バリバリの日本式肖像画。
「横向きの裸婦」:留学した後は、西洋技法をきちんと身につけているのだ。

■「国吉康雄・坂田一男・小野竹喬・森谷南人子 生誕120年を記念して」
いずれも同年(1889年)に岡山で生まれた画家の作品展である。国吉の作品を10点ほど見ることができ、実にうれしい。
国吉康雄「カーテンを引く子供」:カリカチュアライズされた、少々不気味な子供。
同「鶏小屋」:黒いシャガールといった感じの画風だ。
同「逆さのテーブルとマスク」:まさにタイトル通りの画なのだが、病んだ感じがする。
同「ここは私の遊び場」:廃墟となった街並み、黒い日の丸の旗が目立つ。昭和22年の作品なので、色々と思うところがあったのだろうか。

坂田一男「キュビスム的人物像」:典型的なキュビスム作品。
同「コンポジション」:昭和初期にして迷いがない。
同「作品」:これも昭和23年の作品だが、黒い日の丸が描かれている。

森谷南人子「向井石切場」:石切場のはずなのに、変な植物オーラを放っている。

■「おかやまアート・コレクション探訪 -仮面-」
アフリカの仮面コレクション。タンザニアの儀礼用仮面で人毛を使ったものがあったのだが、なぜかいいオヤジ具合に禿げているのである。何だか可笑しい。

***
昼食をはさんで「林原美術館」へ。この美術館はトレハロースで有名な林原グループの美術館である。北海道以外の地域を旅行して思うのは、企業力が全然違うのだなということである。



企画展「平家物語絵巻のすべて」を見る。江戸時代前期に作成された、全36巻からなる超大作絵巻のうち、木曽義仲の活躍から平家滅亡の後までが展示されていた。絵巻自体の字はあまり読めないのだが、現代文で解説が付いており、何しろ有名シーンばかりであるから話は良く分かる。色は非常に綺麗で、保存状態としはこれ以上は望めない感じだ。

かなり観覧に時間がかかり、喫茶コーナーでコーヒー休憩。



2泊目から都合によりホテルが変わるので、ここで「三井ガーデンホテル」にチェックイン。部屋がぐっとせまくなってしまったが、まずはホテルの大浴場で風呂につかり、夜の出撃に備える。

なぜか岡山(4)

2009年09月19日 12時51分56秒 | 食べ歩き
2日目の朝。6時起床で2キロほど市内を散歩する。



市内中心部を流れている西川(にしがわ)は、やけに水量が多く早い川だ。河畔には変な鳥もいたりして、なかなかのものだ。札幌の創成川も見習ってほしいと思う。



6時半過ぎにホテル内の「U」にて朝食。胚芽米にカレー少々、味噌汁、ミートボール、鮭、マカロニ、かまぼこ、鶏南蛮、ほうれん草、納豆・温泉卵うどん、ヒジキ、オレンジジュース。なかなか悪くないが、岡山の味が欲しいところだ。







8時過ぎに移動開始。電車で3駅移動し岡山県立美術館の「ターナーから印象派へ」をまず見る(感想は「なぜか岡山(5)」で)。



昼食は名前だけ知っている岡山本店のデパート「天満屋」地下にある「I」でえびめしだ。



えびめしというのは実は東京発祥メニューで、ある人が岡山に持ち帰って局地的に岡山のみで食べられているローカル洋食である。駅の飲食店のショーケースにもえびめしの見本があったから、一般的な食べ物になっていると思われる。



今回はえびめしプレートを注文。最初にお代わり自由らしいコールスローが到着。次にコーンスープが来て、ちょっとしたコース仕立てになっているようだ。





それからおかず一品を選んで付けることのできる(私は唐揚げを選んだ)、えびめしがやってきた。何とも真っ黒なお姿だが、味はというと…。見た目からする味の濃さ、しょっぱさは全くなく、控えめなソース味とスパイス味というところだろうか。具にエビが結構入っているので、目をつぶって食べればエビピラフかもしれない。ものすごく美味しいものでもないが、毎日食べられそうな洋食、それがえびめしだ。まじめな話、翌日以降ホテルの朝食でえびめしがあったので、私は4日連続えびめしを食べたが、特に飽きるということはなかった。



ちょいとこの店で気になったのは、年配の女性の一人客が多いことだ。デパートの地下にあるので、買い物がてら立ち寄るというのは不自然ではないだろう。しかし、おばちゃんが“わしわし”とえびめし(更にハンバーグ、エビフライセットだったりする)を食べているのは、かなりの力強さを感じる。岡山は女性が強いのかもしれない。天満屋でも有名なのは女子マラソンだけだ。