さあ、今日は上野方面へ行こう。まずは今回の大物、国立西洋美術館でやっている「ベルリン国立美術館展」だ。初来日のフェルメール作品「真珠の首飾りの少女」も来ているし、混雑しているかな?
早速、地下の特別展会場に入るが、確かにこれまで見てきた展覧会よりは人が多いものの、過去の「北斎展」や「空海と密教美術展」ほどの混雑ではない。やはりまもなく開催される「マウリッツハイス美術館展」の「真珠の耳飾りの少女」の方が人気が高いのだろうか(画のタイトルが1文字違いなのに、今気がついた)。
では、作品を紹介していこう。
チーマ・ダ・コネリアーノと工房「聖ルチア、マグダラのマリア、アレクサンドリアの聖カタリナ」:聖女を3人描いた、スケールの大きな作品。
聖ヨアキムと聖アンナの彫刻家「聖母の誕生」:今回、ベルリン国立美術館彫刻コレクションというのが結構来ているのだが、西洋彫刻としては初めて見る木製彫刻が多かった。材料としては、樫、菩提樹、柘植等が使われている。
エルコレ・デ・ロベルティ「洗礼者聖ヨハネ」:疲れきって痩せたヨハネの姿。背景の色彩や細かさが素晴らしい。
ドメニコ・ロッセッリ「トビアスと大天使」:大天使を旅の道連れにする画。なぜか少年がちっとも可愛くない。
アルブレヒト・デューラー「ヤーコブ・ムッフェルの肖像」:眼の中に光を表す白い点の表現が用いられている。1500年代からとっくにやっていたのだ。
ディエゴ・ベラスケス「3人の音楽家」:ベラスケスを生で見るのは初めてかな。3人の顔が奇妙なほどうつろで、音楽に入り込んでいることを表現しているのか。
ルーカ・ジョルダーノ「アルキメデス」:実に人間臭いアルキメデス。金のボウルを手にして、上を見上げている。
ヨハネス・フェルメール「真珠の首飾りの少女」:わずか2、3分待つと真正面の間近で見ることができる。作品は塗りすぎず、薄くなく、まさに中庸の絶妙な仕上がり。作品全体が思ったより小さいので、少女の可憐さが一層目立つ。光に加え、黄色の服とオレンジ色のリボンが、明るさを表現している。
レンブラント・ファン・レイン「ミネルヴァ」:ミネルヴァの顔に光が当たり、光と闇の対比表現がレンブラントらしい。
イグナーツ・エルハーフェン「シカ狩り」木材から追い立てられる鹿、追う馬と人を浮き彫りにした、超精密彫刻。これは驚くべき技量だ。
ジャン=アントワーヌ・ウードン「エビと魚のある静物」:大理石のエイ、カサゴ、チョウザメ等を描いた静物画なので、どことなくホワイトクリーム煮に見えてくる。
サンドロ・ボッティチェッリ「愛の原理を説くウェルギリウス」:ボッティチェリの素描作品。あの素朴な感じは、あまり上手くない少女漫画家の練習画のようだ。
フィリッピーノ・リッピ「衣紋習作」:こういう習作を見ると、リッピも同じ人間だったのがよく分かる。
ミケランジェロ・ブオナローティ「聖家族のための習作」:この人も、いきなりあの大作が描ける訳もなく、練習を重ねていたことが分かる。
常設展は駆け足で。別記事で作品紹介をしたいと思う。
次は東京芸術大学美術館「近代洋画の開拓者 高橋由一展」だ。最終日でもあり、テレビで紹介されたこともあり、こちらが激込みだった。
「花魁」:確かに美女には見えないが、悲しみというか諦念の表情か。
「日本武尊」:ぐっと濃厚な作品。火打ち具を入れる袋の青、刀を入れる袋の赤と色彩も効果的だ。
「真崎の渡」:手前にどーんと樹木を配置した、浮世絵由来の作品。
「江の島図」:江の島を描いた作品は数点あるのだが、人の描き方で変化を付けているようだ。
「芝浦夕陽」:これは空の色がいい。
「驟雨図」:この雨の表現はターナーを思わせるのではないか。
「鵜飼図」:闇と光を上手く作品化している。
「甲冑図(武具配列図)」:実にごちゃごちゃした、しつこい構図の作品。
「鮭図」:重文の「鮭」より、笠間日動美術館の板に描かれた鮭の図がいい。鮭の頭の光り具合など、凝縮された緻密な表現なのだ。バックの木目もこれがいい。
「最上川舟行」:油絵の具を使った水墨画という、矛盾した表現をしたくなる。
「山形市街図」:一点透視で描かれた作品に、近代都市の香りを感じる。これは札幌市も描いてほしかったね。
決して由一は上手いとは言えない気がするのだが、とにかく描いて描いて描きぬいて、日本の油彩を切り開いていったことがよく分かる展覧会だった。
少々、力つきながら「芸大コレクション展 春の名品選」へ。
「絵因果経」:入口にありすぎて、しばらく誰も見ていなかった作品(国宝)。オレンジ、赤、緑と美しい色彩が残っている。
和田英作「野遊び」:さすが色彩の和田だ。優美な女性像である。
高村光雲「観音像木型」:かなり立派な仏像で驚く。
これ以外にも沢山の作品があったのだが…。
テレビで見て欲しくなっていた、高橋由一の「鮭」ストラップを購入して、本日の展覧会巡りは終了。疲れた。