桐野夏生著
「とめどなく囁く」(上)(下) 幻冬舎文庫刊
(上)海釣りに出たまま二度と帰らなかった夫。
(下)元夫が生きているかもしれない。
帯に書かれている。
再婚した41歳の妻と73歳のお金持ちの夫
お互いを認め合いながら静かに暮らす。
相模湾を望む広い庭園
二人だけの穏やかな暮らし
釣り船で遭難し行方不明なままの元夫
死亡が認められ8年目にして、
ようやく落ち着いたと思った矢先
元夫の姿が現れだし、穏やかではいられなくなる。
思い返せば、元夫とは諍いが絶えず
不審な行動もあった過去
大騒ぎはしないものの、
静かにかっての夫を調べ出す。
おおよその予測がつき
覚悟は決まっているものの深く傷つき
それでも、歳の離れた夫との生活を見直す。
違うだろう、そうだったのか、、
疑問を呈し、納得しつつ読み終えた。
一つ納得できなかったのは
誰でも目を見張る素晴らしい庭園
なのに、家が小さすぎる。
前妻と末っ子の3人暮らしで造った新築住宅
リビングやキッチンが広い(多分)とは言え、
寝室が二つはないだろう、、
子供二人は独立していても、
泊まりがけで帰る部屋を作るはず
夫婦の寝室➕子供室でなければ、後半の物語は成立しないが
住まいの設計を生業として来た私としては実に違和感。
それにも増して、解説が素晴らしい。
小説家の綿矢りさ
ネタバレがないのは当たり前としても
作家のことを書かないにしても
物語の中の人の心象や周辺を感じたままに解説としている。
私と同じ視点(ごめんなさい)で読み進めて
解説としていることに感心する。
きっと熱心に心惹かれて読んだのに違いない。
読んだことのない綿矢りさの本を読みたくなってしまった。
過去ばかりに執着してきた41歳の妻
まだまだ安泰な道ではなくても
つきものの落ちたような妻
きっと思い通りに暮らせるようになるだろう、、
(結構入れ込んでしまいました)