魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ムツ

2017年04月26日 00時50分36秒 | 魚紹介

昨日「バケムツ」をこのぶろぐでご紹介したので、今回は「本家」のほうも紹介しておかなければいけない、ということで。スズキ目・スズキ亜目・ムツ科・ムツ属のムツ。

私は深海魚を見たり触ったりする機会が多いのだが、ムツについてはほとんど見たことがない。釣りでは浅い岩礁域を探って小物を釣るような釣りが好きなので、ムツに触れ合う機会はなかなかない。あっても、上のような幼魚ばかりである。

ムツは幼魚のときは沿岸のごく浅い岩礁域や藻場に生息していて、その時はごく浅い場所でも本種と出会うことができる。そして大きくなるにつれて深場へと移動し、大きなものは水深700m以浅の深海に見られるようになる。4月に高知県の浅瀬で全長5cmくらいの幼魚が群れていた。6月にもモジャコ狙いの漁によりイシダイやイシガキダイ、そして「モジャコ」とともにこれより小さな幼魚が採集された。この個体は2009年7月に採集されたもの。場所は高知県の宿毛湾。4月ごろ高知県の浅瀬に出現した幼魚が大きくなったものなのだろうか。

ムツ科は世界で3種が知られている。うち1種は西大西洋にすみ、日本には2種が分布する。もう1種のクロムツは本種に似ているが、体はもっと黒く、側線上方横列鱗数および側線下方横列鱗数がムツよりもやや多いこと、側線有孔鱗数も同様にムツよりも多いことなどにより区別される。

ムツは日本では広い範囲に分布している。具体的には北海道~琉球列島近海に分布している。海外では朝鮮半島や台湾に生息しているが、モザンビークや南アフリカにもいる。しかしその間、たとえばオーストラリアやインド、スリランカなどにはいないのだろうか。奇妙な分布である。一方クロムツはおそらく日本の固有種で、福島県から伊豆までの深海に生息している。

この仲間、ムツとクロムツについては「呼称」の問題がある。ムツはよくクロムツという名前で市場やスーパーなどで販売されている。アカムツや、オオメハタ属(俗にシロムツと呼ばれる)と区別するねらいがあるのだろうが、クロムツという名前の魚がいる以上、ムツをクロムツと呼んで販売するのは好ましくない。ムツはムツ、クロムツはクロムツと呼んであげたい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バケムツ

2017年04月25日 01時37分39秒 | 魚紹介

長崎産の素晴らしい魚を入手しました。スズキ目・ホタルジャコ科・バケムツ属のバケムツ。

バケムツはホタルジャコ科の魚の中でもアカムツ属のアカムツによく似ている。アカムツと違うところは体色が黒っぽいところ。またアカムツの体の鱗は櫛鱗であるのに対しバケムツは円鱗であるところが異なる。またアカムツは多くが第1・第2背鰭が少しつながるようだが、バケムツはこれらの鱗が離れている。

ホタルジャコ科のには臀鰭棘数が2のものと、3のものがいるが、バケムツは後者である。日本産ホタルジャコ科魚類は14種がいるが、その中で臀鰭が2棘しかないのはスミクイウオ属(5種)のうちの4種だけである。

下顎先端には棘のようなものがない。この特徴からオオメハタ属の魚と区別することができる。歯がかなり鋭く、上顎の歯は牙のような感じ。下顎の歯は牙というよりは鋸歯のようである。バケムツはムツ科の魚によく似ているが、以下の点がことなる。日本産のムツ科魚類は背鰭軟条数と臀鰭軟条数がバケムツよりも少し多く、側線有孔鱗数は幅があるものの、概ねムツ科の魚のほうが多いなど。また顔の形もムツの仲間とは違う印象を受ける。

分布は広く、伊豆諸島や長崎、鹿児島県、沖縄諸島に見られる。海外では台湾やサモア、フィジーに生息している。水深500mまでの深い海に生息し、大陸棚斜面や島嶼、海山の周辺に生息するようである。バケムツ属は現状で1属2種が知られており。もう1種Neoscombrops cynodonはインド洋西部に生息している。

Heemstra(1986)では、Neoscombrops annectensと、N. cynodonの2種を記録しているあ、前者は後者のシノニムとされている。前者は1922年に記載されたのだが、後者は1921年に記載されている。ただこの属の魚は分類学的な再検討が行われている途中のようだ。

ホタルジャコ科の魚はほとんどの魚が重要な食用魚。小さなホタルジャコも「じゃこ天」の原料として重要であり、ワキヤハタやスミクイウオのような中型の種は練り製品の原料となるほか、焼き物や刺身で食べても美味しい。アカムツは刺身、寿司、煮つけなど様々な料理で食され、ありがたがられる。バケムツもアカムツほどではない(そもそも、あまり漁獲されない)が食用魚である。肉は薄いピンク色でやわらかいが、脂が多くて美味しい。今回はすべて刺身にしたが、煮物にしても美味しかったにちがいない。ただ刺身の写真があまりにも適当すぎて残念。

長崎県 印束商店 石田拓治さんより。ありがとうございました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イエローラインドカーディナルフィッシュ

2017年04月24日 13時48分12秒 | 魚介類飼育(海水)

昨年9月に我が家にやってきたイエローラインドカーディナルフィッシュ。我が家で飼育しているテンジクダイの仲間では最も大きい個体。特徴は第2背鰭の先端がとがっていること。しかし...

よく見ると背鰭が切れている。これをやった犯人はナベカと(ほぼ)判明。ナベカは黄色い体色がきれいだし、コケも少しは啄んでくれるようだが、ほかの魚の鰭もつつく癖があるので要注意。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キスジヒメジ

2017年04月22日 14時49分30秒 | 魚紹介

今日は北海道シリーズはおやすみ。以前に入手してまだ書いていなかった魚。スズキ目・ヒメジ科・ヒメジ属のキスジヒメジ。

キスジヒメジの標準和名は体側にある1本の黄色の縦線からきているのだろう。ほかにこのような模様をもつヒメジ科魚類はアカヒメジなどがいるが、アカヒメジはキスジヒメジとは異なるヒメジ属の種。ヒメジ属とアカヒメジ属の違いは、鋤骨や口蓋骨の歯の有無などで見分けられるようだ。また色彩的にも、アカヒメジには尾鰭上葉に模様があるように見えないが、キスジヒメジの尾鰭には何本かの細い白色線があるので、アカヒメジと見分けられる。また黄色の縦線もアカヒメジより太く、よく目立っている。もう1種ウミヒゴイも体側に太い黄色帯があるが、ある程度育ったものは頭部の形や体形で見分けは容易、また側線鱗数や鰓耙数なども同定のポイントとなっている。

この個体は高知県以布利の定置網漁業で漁獲された個体。同時にアカヒメジも採集されていたが、見分けるのはそれほど難しくはなかった。水深80m以深の海底に生息する種で、分布域は三重県尾鷲以南の太平洋岸、琉球列島。海外ではインドー西太平洋に生息し、スエズ運河を経由して地中海にも入っている模様。ヒメジ科は近年の分類学的再検討の結果、種類が大幅に増えている。キスジヒメジはかなり広い分布域だが、インド洋のものと太平洋のものはいまのところ、別種とはなっていない模様。

今回は撮影後展鰭したため食用にできなかったが、東南アジアでは食用となっている。ヒメジ属としては結構大きくなる種で、刺身などきっと美味しいだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミズウオダマシ

2017年04月21日 10時47分51秒 | 魚紹介

北海道シリーズも本当に残りわずかに。今日はヒメ目・ミズウオ科・ミズウオダマシ属のミズウオダマシ。

ミズウオダマシ属の魚は従来はハダカエソの仲間に含まれていたことがあったが、どうやらミズウオやキバハダカと単系統群を構成するものとされている。ただミズウオダマシが所属する科としてはミズウオ科の中に含まれたり、あるいはミズウオダマシ属1属を含む独立した科とされている。今回は日本産魚類検索第三版に従い、ミズウオ科とする。なお、このぶろぐで、ミズウオ科の魚をご紹介するのはこれが初めてとなる。今回のミズウオダマシは全長1142mmもあり、これまで出会ってきたヒメ目の魚としては最大のものであった。

脂鰭

ミズウオ科魚類は日本からは4属4種が知られている。ミズウオダマシがほかの3属3種とくらべて大きく異なっているのは背鰭がないところである。体の後方に見えるのは脂鰭で、これはミズウオにも、キバハダカにも、クサビウロコエソにも、そしてこのミズウオダマシにも見られる特徴である。

頭部

 

顎歯がない(成魚)

 

頭部は細長い。下顎の先端は上顎の先端よりも明らかに前方に突出するのが特徴である。上顎・下顎ともに顎歯はない。幼魚や未成熟の個体では大きく目立つ牙のような歯があるのだが、成魚では消失してしまうのだ。

「日本の海水魚」に掲載されているミズウオダマシには歯がある。しかしその個体はまだ未成熟の個体である。また少なくとも私がもっている版の個体はグリーンランド産の個体であり、ミズウオダマシではないと思われる。ミズウオダマシは従来は1属1種とされていたが、現在はAnotopterus pharaoAnotoperus nikpariniAnotopterus voraxの計3種に分かれている。A.pharaoは北大西洋産であり、A.nikpariniは北太平洋産、A.voraxは南半球に広くすむものだという。ということで日本に生息しているのはA.nikpariniである。日本における分布域は北海道のオホーツク海、太平洋岸~小笠原諸島近海、海外ではオホーツク海からメキシコのバハ・カリフォルニアにまで分布。沖合の表層から中深層を遊泳しているが、なかなか出会えない魚である。生息水深は700mより浅いところに多いようだ。

ミズウオの肉は水っぽく、煮ると溶けるので食用には向かないとされている。今回私も試してみたかったのだが、冷凍庫で保管したら大量の水が出てきてそれが鮮度を悪くしてしまったようだ。腐った臭いで食べるどころ出はなかった。しかしながら奇妙で不思議な出会いを楽しむことができた。坂口太一さん、ありがとうございました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする