「梁山泊與祝英台」という中国伝統の物語がある。東晋(317年~420年、今の南京に都をおいた王朝)の浙江に祝英台という娘がいた。女性が学校に入ることを許されなかったため、男装して杭州の学校へ。会稽から来た学生、梁山泊と親しくなる。3年間共に学ぶが、梁山泊は祝英台が女だと気づかない。学業半ばで故郷に帰った祝英台を2年後に訪ねて初めて女だと知り、梁山泊は結婚を申し込むが、すでに嫁ぎ先が決まっていた。(この時代、もちろん親の意向で決められたことだろう。)悲しみのあまり死んでしまった梁山泊の墓のそばを祝英台の花嫁行列が通りかかかったとき、突然大風が吹き、墓が割れた。祝英台は自ら墓の中にとびこみ、梁山泊と共に葬られることを選ぶ。やがて墓の中から2匹のの蝶が出てきて、いっしょに飛んで行きましたとさ・・・
中国人なら誰でも知っている有名な話で、越劇(浙江・紹興あたり)・川劇(四川)・粤劇(広東)などの伝統演劇の演目にも入っている。映画にもなっていて、63年にショウ・ブラザースが黄梅調(歌あり踊りありの伝統演劇をそのまま映画にする手法)映画で制作。最近では94年の徐克(ツィ・ハーク)監督、呉奇隆、楊采[女尼]主演の「梁祝」がよく知られている。03年にはアニメも作られ、蕭亞軒、劉若英、呉宗憲が声を担当したそうだ。(以上は維基百科を参考にしました)
昨年、この題材を現代に置き換えたロック調のミュージカル「梁祝下世傳奇」が上演され、その主役を何韻詩(デニス・ホー)と周國賢(エンディ・チャウ)が演じた(でも何韻詩の役は祝英台じゃないらしい)。このアルバムは、そのミュージカルをコンセプトに作られている。それでイントロが「蛹(さなぎ)」アウトロが「蝴蝶結(蝶結び)」と、各曲のタイトルもストーリーを踏まえたものになっている。ピアノだけでドラマチックに物語の幕を開ける「化蝶」、歌謡曲調の曲で色っぽく迫る「不是吟詩的時候」、力強いロックの「長不大」、ヒットした「汽水樽裡的珈琲(ソーダ瓶の中のコーヒー)」はどこかトランスジェンダーを仄めかす歌詞だ。「十八相送」は伝統演劇「梁祝」の名場面の一つで、梁山泊が祝英台を送ってゆくシーン。歌詞の内容もそれに合わせて、家まで送っても別れがたい二人の話。「勞斯・莱斯」は男同士の恋愛を示唆する歌詞(黄偉文作詞)だが、TVBのMVではさすがにそのままの内容では放送に問題があると思われたのか、男の子とボーイッシュな女の子の話になっていた。伝統楽器の笛を使った、メロディの美しいこの曲は、2005年度十大勁歌金曲の一つに選ばれた。ちなみに勞斯莱斯はRolls-Royceの音訳。
ロックのサウンドにオーケストラやストリングスをからませたテンポの速い曲があるかと思えば、ピアノ一台のバラードや軽いジャズ風と、いろいろなタイプの曲調をしっかり歌いこなしている。新人の頃から独特の風格がある子だったけど、ますます貫禄が出てきて、安心して聴いていられる。96年の新秀で優勝したところは見てないが、梅艶芳に可愛がられていたようだ(ちょっとボーイッシュなところ―イメージも性格も―アニタに似てるかも)。梅艶芳の最後のコンサートでは、草[虫孟]や許志安たちと一緒にゲストで出て、ステージ狭しと走り回っていた。2004年の7月から約半年間、それまでずっと録画だったのを全て生放送することにして話題になったTVB勁歌金曲の司会を務めた。
一昨年、EMIから東亞に移籍後、制作に自身が深く関わるようになって、より彼女らしさを出せるようになった気がする。これからもっと人気が出てもいいと思う。
梁祝下世傳奇 @YesAsia.com
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