立花孝志のN国党が国民から一定の支持を得ているのはなぜだろう。あらゆる権威が音をたてて崩れているからではないだろうか。それはまさしく上級国民に対する下級国民の反乱なのである。イデオロギーでまとまっているというよりは、現状を打破したいという怒りがまずあるのだ。山本太郎のれいわ新選組よりも、はるかにラディカルな集団なのである▼知的労働者は支配する側であり、肉体労働者は支配される側であることを問題視したのは、シモーヌ・ヴェイユであった。「事物をあやつる人びとより言葉をあやつる人びとが優位を占めるという状況は、人間の歴史のあらゆる段階にみいだされる。付言すべきは、総体として、祭司または知識人といった言葉の組合せや組立にたずさわる人間が、つねに支配者の側、つまり生産者に対する搾取者の側に立ってきたことである」(『ヴェイユの言葉』冨原眞弓編訳)▼それを意識しているかどうかは別にして、N国党の支持者がNHKに敵愾心を抱くのは、「言葉をあやつる人びと」であり、特権的な地位を甘受しているからではないだろうか。そして、NHKは上から目線で民主主義の意義なるものを説くのである。高給をもらって、庶民とはかけ離れた暮らしをしているくせに、あたかも一庶民であるかのように振る舞うのである。N国党がどこまでの政党になるかは見当がつかないが、下級国民の心をつかみつつあることだけは確かだ。
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