他の政党はどうあろうとも、自民党だけは最後の一線を守ってくれる。そうした思いがあったからこそ、安倍元首相がグローバリズムに部分的に妥協しようとも、多くの日本国民は自民党を支持してきたのである。
その自民党が、こともあろうに、民主主義の手続きを無視してまでLGBT法案を推進し、自民党国会議員の圧倒的多数が同調したのだ。権威が音を立てて崩れてしまったのである。まさしくアノミー(権威失墜)そのものではないか。
言葉ではうまく表現できなくても、かろうじて日本の社会が維持されてきたのは、伝統に裏打ちされたコモンセンスがあったからである。それをぶち壊す側に、あろうことか保守主義を掲げる自民党が回ったのだ。
小室直樹は『危機の構造』において、天皇共同体が敗戦によって崩壊したために急性アノミーが生じ、高度経済成長によって村落共同体は解体したことで単純アノミーが発生したことを問題にした。
また、小室によれば、そうしたなかで、戦後の日本国民の拠り所になったのが企業、官庁、学校という機能集団であった。これで何とかなると思われたときもあった。しかし、機能集団と共同体とは本来矛盾しており、その矛盾が新たなアノミーを拡大再生産させているというのだ。それが構造的アノミーなのである。
構造的アノミーは現在も拡大再生産され続けているのに、そこに今回の自民党の暴挙である。信じるものがなくなれば、人間は暴力的になり、何をしでかすか分からなくなる。それほど恐ろしいことがあるだろうか。女性への性犯罪の増加以上に、岸田首相の自民党は、日本人の根本的アイデンティティを破壊してしまったのである。
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