今回のG7で岸田首相が発信した「広島ビジョン」では、日本が厳しい安全保障環境にあることを一言も語っていない。
核兵器所有などに関する透明性を明らかにしない核保有国家に対して、非核保有国との対話の必要性を訴えてはいるが、だだそれだけのことで「核のない世界に向けたコミットメント」というのは、あまりにもおこがましい。
それでもロシアに対しては「核による威嚇や使用を許さない」という立場を表明しているが、中国については「加速している核戦力の増強は、世界及び地域の安定にとっての懸念となっている」と指摘するにとどめている。中国は心配のレベルなのである。
そして、結論としては「厳しい現実から理想へと我々を導く世界的な取組が必要である。この点に関し、我々は、軍縮・不拡散教育やアウトリーチの重要性を強調する」と訴えている。驚くなかれ、広報や教育によっ核廃絶が可能だというのを前面に掲げているのだ。
笑止千万なのは、その延長線上に「軍縮・不拡散のプロセスへの市民社会の関与に加え、女性の完全で、平等で、意義ある参加を支援する他のイニシアティブを歓迎する」まで書いていることだ。
まるで活動家の文面である。国家ではなく「市民社会」が重要視され、最終的にはLBGT法案などの意義まで述べているからだ。これによって我が国では、平和教育と評する公金チューチュシステムが整備され、莫大な金額が投じられることになるだろう。
日本を敵視している国家が武装を強化しているのに、攻撃される側が丸裸になる教えを説くような代物で、これで日本は有事に対応できるのだろうか。岸田首相の危機感のなさは、まさしく平和ボケの典型である。