211
場所取りのぽつねんとして花冷えす
一度だけ、東京上野の桜を見に行ったことがある。午後の4~5時ごろではなかったか。満開の桜の下には、誰もいないのだが、ブルーのビニールシートが各所に敷き詰められていた。シートだけではなく、紐まで張ってある。いわゆる、夜の宴会の場所取りであろうことが一目瞭然だった。
その中に、準備が終わったのであろう、一人の青年がブルーシートに座っていた。先輩の社員たちが、会社を退けてから来るのを待っているのだろう。
なんとも言えない悲哀を感じたものだ。
ムラサキケマン(紫華鬘)