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大空へ吹き抜けてゆく桜かな 炎火
この句の着目点は、第一に「吹き抜けて」で、桜の木が沢山あることが想起されるし、第二に「桜かな」と言い切っているが、桜といっても樹木ではなく、実は花びらのことなのである。
つまり、花が梢を離れ散ってゆくのだが、降るのとは逆に、強風に煽られ桜山の下から上に、木立の中から上空へ花びらが吹き上がってゆく情景を詠っているのである。花びらが一枚であるはずはなく相当数あり、つまり逆さの花吹雪なのだ。
私も同じ情景を見たことがあるが、実に不可思議な気分になったことを記憶している。