蜩や薄墨色の刻流る 薪
炎天は観音開き姉の忌くる
炎天下今をどこかに置き忘れ 章子
日盛りや地球を削る器械音
女房と同じ香水買い与え 遊石
夏の夜の一人寝も良し雨を聞く
どこまでも無言の二人夏の月 豊春
片蔭や四肢投げ眠る白き猫
声上がる闇掬い上ぐ大花火 洋子
鬼百合の雄蕊切られて尚香る
はたゝ神冷風吐きて豪雨とす 歩智
飛び跳ねてとかげ逃げ出す炎天下
鬼やんまXL(エックスエル)の衣脱ぐ 炎火
蟻地獄十三面牌単騎待ち
ゲリラ雨傘も心もつぼめ行く 空白
稲妻と金属音の至近雷
鯖鮓や備前の壺に耳二つ 正太
多摩の堰風ふところに藍浴衣
合歓の花私を抱く母若し 雲水
炎天や死ぬには足らぬ睡眠薬