「風の盆」が、遊郭やお座敷の芸者の踊りから派生したとすれば、掲句のようなとらえ方も当然生まれるだろう。
演奏される「おわら節」の歌詞は、7.7.7.5の26文字で構成する甚句形式である。主として男女の恋愛を題材として扱ったため情歌とも呼ばれる都々逸(どどいつ)と同様と考えて良いだろう。
おわら節の歌詞は、時代と共に増えてゆき、今では3,000程あるという。以下、その内のほんの一部。
○来たる春風 氷が解ける うれしや気ままに 開く梅
○私ゃあなたに あげたいものは 金の成る木と 卵酒
○虎は千里の藪さえ越すに 障子一重が ままならぬ
○恋の病も なおしてくれる 粋な富山の 薬売り
○見たさ逢いたさ 思いが募る 恋の八尾は 雪の中
○話するなら 小松原の下で 松の葉の様に こまごまと
○おわら踊りの 笠着てござれ 忍ぶ夜道は 月明かり
○お風邪召すなと 耳まで着せて 聞かせともなや 明けの鐘
○待てど出てこず 出る時ゃ会えず ほんにしんきな 蜃気楼
○蛍こいこい 八尾の盆に 夜の流しの 道照らせ
○鳴くなこおろぎ 淋しゅうてならぬ お前一人の 秋じゃなし
○私ゃ野山の 兎じゃないが 月夜月夜に 会いにくる