女の子達が2人連れだったら、ドームも2つあったかもしれません。兎に角彼女達の見学が終わったので、私は早速ドームの中に自分の頭を突っ込みました。
目に映ったのは無機質なコンクリートの世界です。灰色の地上に灰色の大きなトカゲのような爬虫類がいます。目の前すぐにその横腹が見えました。ガラス越しにとても間近くその大トカゲを観察することが出来ました。トカゲの向こうにもまたトカゲがいます。地上には沢山トカゲがいる様でした。
『面白ーい』
私はこのドーム施設が気に入りました。本当に目前にトカゲの顔などが見えるのです。手の指や皮膚の模様もしっかりと目に映ります。これはと見ると、ガラスに乗っかってすぐ触れる位置にトカゲの指がありました。しかもそのトカゲと同一目線です。私はとても親しみが湧きました。トカゲの顔が可愛らしくさえ見えるのです。内心ふふふと思い笑みも漏れてしまいます。『可愛い。可愛い。』笑顔です。
そしてドームから見える地上のトカゲの世界を360度眺めてみました。この時私の脳裏には当然ウルル頂上の『360度パノラマ』という言葉が思い浮かんでいました。驚いたことに今はその登山の日と同一日であり、その日の午後なのです。
午前に登山をし、飛行機に乗り、午後は動物園の見学をしている、信じられない行動範囲で有り日程です。
実はこの言葉は、この動物園に到着した時、フルムーンの奥様が仰ったのでした。
「私達午前に登山したよね。」もう動物園なの?同じ日よね?それとも登山は昨日だったかしら。独り言の様に呟やかれたのです。彼女の側にいた私は、彼女に「今日ですよ、登山したのは。その日の今は午後ですよ。」もうシドニーにいて、この動物園に着いたのだ、今から見学するのだと面白そうに話しました。思えば凄い日程ですねと。それは私も同感でした。
つまりこの奥様の言葉が、この個人では出来ないスケールの大きな日程への感動が、私にこの記憶を留めさせているのでした。