行き成り方向転換するのも不自然で、相手を嫌っているようで失礼だと思いながら、それでもこのままでは真っ直ぐに彼まで直進する事になります。何故か丁度辺りに他の人影はなく、2人の間に誰も人がいないという状態なのも困りました。この時、私のこの動きを自身で想像すると、それだけで私は酷く困惑し、思わず恥じらってしまうのでした。早くこの動きを止めたいと焦りました。
『何とか軌道修正しないと。』
そう心の内に呟いて、私は急いであれこれ思索しました。先ず何とかさりげなくこの歩みを別の方向へ持って行き、視線も彼から外したいと考えるのでした。既に彼もこちらを見ていて、私が真一文字に彼に近付いて来るのだと思っている気配でした。彼は私の動きに気付くと困った感じでしたが、逃げ出すという事もせず、表情も微笑みなど浮かべて極めて社交的でこちらに対応する決意のようでした(私見)。そう見てとると、尚の事、私は彼に対して失礼にならないようにと慎重に配慮するのでした。
私は一旦下を向いて、足元に注意するふりをすると、視線を彼から外しました。さりげなく周囲の様子を見てみます。丁度右手に順路がありました。これだわ!と、私はその通路に自分の注意を引くものがあったというような動作、表情を浮かべると、通路に向かって方向転換し、ゆっくりと歩を進めました。後は通路に入り込み、一目散に彼から遠ざかって行くだけです。
私が入った順路は木立が植えられ、気付くと上り坂になっていました。私は心配になって直ぐに胸に手をやりました。動悸は考えたより落ち着いていました。坂は更に急な上り坂になって行き、私はこちらの道に入った事を後悔したのですが、本当に心臓の方はもう大丈夫なようでした。
坂の上に差し掛かると、右手の方向にコンクリートの飼育場がありました。気付いて見下ろすと灰色の細長い生物が多数視界に映りました。私がその生物の姿をハッキリと視界に捉えると、それはあの大トカゲ達なのでした。『ああ、あの観察施設の上がここなんだわ。』私は合点しました。