Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

美湾

2017-12-26 15:42:11 | 日記

   一気に気分は下降しました。今で言うなら盛り下がったと言うのでしょうか。この時私は予想したよりもどんよりと気持ちが沈んでしまったのでした。そして、嫌な思い出というより汚らしい思い出だと思うのでした。何故なら、当時前夫は、彼がキスしてくれたとまで言っていたので、そこまで自分に言うものだろうかと❝馬鹿❞の2文字が直ぐに頭に浮かんで来ました。憤るよりも返って目の前の前夫に呆れてしまい、自分の事よりも、気の毒な程の脱力感をその自分の目の前にいる男性に感じたものでした。

 『外国人のキスって…』とこの時私は思いました。挨拶なんじゃないのかなぁ?と一瞬思いましたが、そんな事はおくびにも出さず、黙って、浮き浮きした感じの目の前の人物を観察していました。とても面白おかしく楽しそうでした。返って私は冷静になってしまい、この話をした人物の浮かれた様子を眺めていました。この話はここ迄です。

 そこで私は、また海を見て気分を盛り上げようと思い、振り返って海を覗き込んでみたのでした。が、気持ちは一向に浮き上がって来ないのでした。

   『何が真実で何が嘘なのだろう?誰の言う事が本当で誰が嘘を吐いているのだろう?』そんな言葉も胸を過ぎるのでした。兎角世の中は変なものだらけだと思うのでした。その後の世の中を見ていても、私は自分だけが特殊な人生を歩んでいる訳では無く、私に起こった事は誰にでも起こるような一般的な事なのじゃないだろうかとさえ思うのでした。

 『自分達だけでやっていればよいのに、なぜ関係ない人まで巻き込むのか。』そう思うとムカムカと腹が立ってきます。嫌な事を思い出そうとして、如何してこんな事を1番に思い出したのだろう。こんな思い出を思い出すなんて、自分でも意外だと思いながら、その時私から5、6メートル程離れて並んで立ち、海を見ている男性を眺めました

 『あの傍にいる昔の外国人とよく似た白人男性のせいだ。本当によく似ている』そう思うと私は苛々して来てしまい、きっ!と彼を睨んでしまいました。勿論異国の男性はそんな事は一切知りません。静かにシドニー湾を眺めていました。私はムカムカついでに足元に転がっていた小石を拾うと、えいっとばかりにシドニー湾に投げ込みました。小石はボチャン!と音を立てて海に消えていきました。防波堤の足元はコンクリ―トかアスファルトで舗装されていたので、小石と言っても海にある物と全く同じような摩耗した丸い石でした。誰か海からでも拾い上げて捨てたのでしょうか、直径も2~3センチ程の小さな物数個しか転がっていませんでした。あの小さな石が、と私は思うと、思ったより大きな水音が出たので驚いたものでした。


美湾

2017-12-26 11:43:35 | 日記

 私は異国の彼等が、もう亡くなってしまった父に何を訴えていたのか知りません。父からは何も聞いた事が無いのです。その場にいなかった母からは尚更です。両親から彼等について何も聞いた事がありません。が、新婚時の住まいの隣の奥様から割合早い時期にその話を聞きました。私に誰か付いて来たというのでした。それは抽象的で、「奥さんと一緒にあのジープは来たのだ。」と、当時住んでいた社宅の傍らに止まっていたジープを示されたのでした。

 その後、この異国の男性に似た人は私達の新婚時の住まい近辺、私の実家の住まい近辺で何度か目撃する事になるのでした。2、3年の間見かけたでしょうか、もっと長かったかもしれません。ある日私は前夫に言ったものです。結婚生活で迷惑な存在であるあの人に、もう来ないよう言って断って欲しいと。前夫は彼と話をした事があるようでした。それはお隣の奥様の話からも分かっていました。前夫からはそれまでにも、彼が海外の人であり、自国から飛行機で来て、地方の空港から自動車を借りて此処まで来ているそうだ、と聞いていました。その費用さえ馬鹿にできない物だろうと想像すると、彼に対しても気の毒に思ったものでした。ジープが此処に長期滞在している事も多かったのです。

 私に着いて来た、そう聞いていたので、私にはそんな気は無いから、自分達の家庭生活の為にも断って欲しいとハッキリ前夫に申し出たのでした。その時は承諾した前夫でした。私はこれですっきりしたとホッとしました。が、その後も彼を見かけて、前夫に断ったのでは無いのかと詰問したところ、

「彼は自分に会いに来ているんだ。」

という答えでした。自分のことが好きなのだと、そして、自分も彼が好きで来ていてもらいたいのだという返事でした。私は呆気に取られて開いた口が塞がらないというものでした。

 私にすると、自身の結婚生活のために、自分に気があって来ていると聞いていた異国人の彼を、きちんと断ると決断したのに、前夫は全然自分達の結婚生活について考えていないのだと知りました。しかも、こんな話を聞かされた妻の私がどう思うかという事も全く思慮に無いのでした。前夫という人について、全く驚き呆れた瞬間でした。

 しかもこれには後日談がありました。この話の2日ほどの後、前夫は私に言ったものです。

「何だか、悪いことを言ったらしいから、謝って置くよ。」

という事でした。謝った方がいいと言われてというような事も言っていたかもしれません。誰か夫婦2人の話を家の外か隣で聞いていた人がいたのでしょう。又は前夫が誰かに軽々しくこの話をしたのかもしれません。ご本人は自分の妻に言った事の重大さが分かっていないという口ぶりでした。この言葉に、益々呆れてしまった私でした。

 この事が、私が最初に離婚を考えた出来事であったのは一般の人であれば誰でも理解できるのではないでしょうか。そして私の人生でも、何より嫌な出来事の1つであったという事に異論のある人がいるでしょうか。前夫はこの言葉を言わなかったと言うでしょうか。

 現在は同性婚なども多くなりましたが、この頃はまだ普通ではありませんでした。今になれば彼等も隠す事も無いのでしょう。私は離婚した後に、父にもう結婚はしたくないと言ったものでした。私の結婚は父の知り合いから父を経て話があった物でした。父に対しても憤懣やる方無い物が有った物です。が、生前の父にこの事は一切話していません。何故なら、私の口からはとても言えなかった事であり、やはり父に対してかなり憤慨していたからでした。話題にも出したくない事だったのです。


美湾

2017-12-26 11:25:30 | 日記

   その人を最初に見たのは多分カナダなのだと思います。男性の2人連れでした。その後ハワイで、ホテルの前に有ったウミガメの水槽の前に私がいた時、カメの水槽の上の蓋が開いたので、私は何気なく水槽越しに上を見上げました。すると、水の上から覗き込むその人と目が合ったのでした。その時にも彼には連れがいたようです。しかしそれはよく似た人かもしれません。私が見たのがもし複数の人なら、彼らは皆よく似ていました。

   私が3度目に彼等を見たのは、私の故郷の電車の駅でした。新婚旅行から帰って来た私達を迎えに、私の父も駅に来ていました。私達は父達に挨拶して直ぐにその場で別れ、もう離婚した当時の夫の実家に向かいました。駅の中を歩きながら私は何気なく父を振り返りました。そしてそこに、父と父に何かを切実に訴えかけている2人の異国の白人男性を見たのでした。その2人はカナダで見た2人によく似ていました。10メートルほど離れて遠目に見ると、向こうで会った時より彼等の背を低く感じました。彼等の1人は父と並ぶとはっきり父の肩位の背丈しかありませんでした。私がカナダで出会った2人は、1人の方は私と大して違わない背丈に思えたので、当時父の肩よりは背丈があった私は、その場にいた2人がカナダで出会った2人とは違う2人にも思えたのでした。

   父は英語が達者だったので、多分外国人旅行者が道でも聞いて、父がそれに答えているのだろうと私は考えるとそのまま駅を去りました。この時、私は一瞬、彼等がカナダで出会った2人なのかとギョッとしたものです。彼ら2人の容貌が私の地方では極めて珍しく、意外な光景だったのでよく覚えています。もしあそこからずーっと彼等が付いて来たのだとしたらと、私は父に関わりあう2人の異国の白人男性に何かしら不吉なものを感じたのは確かでした。

 書きたくありません。書き出してみたもの、これは全然書きたくありません。とても人を馬鹿にした話なのです。これは当時結婚していた私と前夫との間で起きた話なのでした。それは私にとってとても嫌な思い出でした。女性にとって、と書き足してもよいくらいの物でした。