「そうですね。」
私は如何話したものかと迷いました。
「大トカゲが、観察できる施設なんですが…、」
そんな事を言って言葉を考えていました。何故かというと、この施設を先入観無しに観察した方が良いか、一言危険だという事を言っておいた方が良いのかどうかと迷ったからでした。それぞれが独自に物事に対処して、自分なりの感慨、感想を持った方が良いのではないか、それでも、私はドッキリした時の自分の心臓の動悸を思い出していました。その事が心に引っかかっていました。
『この施設、心臓に悪いんじゃないかしら。』
そう思ったのです。あんなに早鐘のように、しかもあれ程に大きな動機を感じたのは生まれて初めての事でした。まさに心身ともに未曽有の体験でした。(現在に至ってまでもそうです。)それで、やはり一言添えることにしました。
「中にはガラスのドームが有って、そこから大トカゲの生活が観察できるんです。直ぐ目の前にトカゲが見えるんです。が、」
まあ、それは素敵、面白いというような事を直ぐにお母様の方は仰って、じゃあ入って見ますとにこやかな笑顔になられて歩き出されたのですが、そこでさようならをしては私の気が咎めます。
「でも、ガラス越しでも…、トカゲが、大トカゲなんですが、こっちに噛みついて来て、結構怖いですよ。」というような事を付け加えました。
「心臓の弱い人だと危ないんじゃないかしら、結構心臓にきつく来ますよ。」「私だって心臓は普通ですが、年のせいか、かなりきつい物が有りました。」「だから、元々心臓が弱い人は、…心臓麻痺など起こすかもしれない。」「危ないんじゃないかしら、この施設。」ぱらぱらと箇条書き風にそう言ってお母様の注意を促しておきました。頭に食いついてきます。とも付け加えておいたかもしれません。