Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 78

2019-10-15 15:09:25 | 日記

 父は父の実家を出るかどうか、新たに仕事を見つけるかどうかで悩む事になったのだが、結論を言うとこの家の長男の一郎さんはこの時戻って来なかった。彼が世にいう転勤族であった為だ。しかも、その時までいた所よりも遥かに遠い地へ赴任する事になり、この家には戻れないという事態になった事を両親である祖父母に報告し、祖父母の跡取りとしての身の振り方を相談しに来たのだった。

 「なんだ、あいつ戻って来ないのか。」

心配させて、責任感の無い奴だな。父は居間で1人胡坐をかいてふんぞり返るとこう零していた。が、その顔は笑顔だった。私は言葉の意味する所と顔の表情が何だか違う父を怪訝に思った。

「お父さん、不満そうな言葉なのに、…」

私の言葉に、何だいと笑顔の儘で機嫌よく父が問いかけて来るので、私は思った儘を尋ねた。

「如何して顔は嬉しそうに笑っているの?。」

すると父は背筋をぴしゃりと伸ばした。「こうか?。」と言う。そして顔を如何にも不満気な顔に替えた。この父の変化も私には妙に思えた。何故、子供の私の言葉で大人である父が指図されたように変化するのか?。私にすると、特に父の事を指図したいと思って言った言葉では無い。只、不思議に思えた事を思った儘に尋ねただけの事だったのだから。そしてその事も父に言ってみると、父はすぐさまひゅるるとばかりに脱力して肩を落とした。

 「お前と話すと疲れるな。」

見ると父は確かに疲れた顔付をしていた。

「こんな話はあれとするに限る。」

父が言うので、あれとは誰か、お祖母ちゃんの事かと私が尋ねると、父は今日のお前は質問だかりだな、それも疲れる質問ばかりだ。そう零しながら、

「お前の最後の質問に答えると、あれと言うのはお祖母ちゃんでは無く、お前の母親の事だ。」

と答えると、彼は直ぐにその場から立ち上がり、さっさと台所の方へと去ってしまった。


うの華 77

2019-10-15 14:38:39 | 日記

 私の見知らぬ訪問者は、後に父から聞く事になったのだが、私が推理したような店の仕事関係のお客では無かった。

「店じゃ無く、この家のお客だ。」

「『お』をつけることも無いがな。」と父。「あれも、今では家のお客の身になって仕舞ったなぁ。」と彼は冗談めかして愉快に笑うと、「跡取りのお前が出来たからなぁ。」と、なぁ部分で大きな口を開けて、含みの有るような愉快で不思議な物言いを私にした。障子の前の居間での事だ。

 聞き慣れていたこの言葉に、私はその時の父の放つ微妙な雰囲気を微かに察しつつも、「跡取りのお前」という部分にうんと笑顔で頷いた。しかしこれはやはり父の冗談だった。父は直ぐに「冗談だからな。」と真面目な顔と声で言った。彼の頬がほんのり赤くなって来た。そしてこれは私に向けて言った言葉では無かった。急に廊下の床の上を歩く荒い足音が聞こえ出した。

「おい、冗談だからな。」

父は廊下の足音の主に向かって声を掛けた。足音は廊下の途中で止まった。その足音の主は如何やら縁側に回ったようだ。

「不愉快だ!。」

男の人の声がした。

「何だい、お前、急に。」

ビックリするじゃないかそんな所から。もう帰ったんじゃないのかい。と、これは祖母らしかった。そして、如何されたんですか、等、女性の声がした。「何なんだい、あの子は。」と荒げた声がしたが、シーっと言う男性を制する女性の声、落ち着いて話してごらんという、これは祖母の声だろうか、複数人の声が縁でした。その後、縁側では祖母の声と男の人の声がしていたが、人声はこもったようなぼそぼそ声に変わってしまったので、男の人の声が先程居間にいた眼鏡の人かどうか私には判然としなかった。

 聞こえるような聞こえないような話声に、父や私が何の話をしているのだろうかと思う間も無い程、直ぐに祖父が自室から出て来て父の後ろに立った。

「おい、お前一寸来なさい。」

と祖父は言うと、私の父は襟首を捕まれてでもいるような格好で、自分の父に連れられて彼の両親の部屋へと消えた。彼等のというべきかもしれない。

 私は後に知ったが、この時の訪問者は父の長兄、一郎さんだという事だった。伯父が帰った後、やはり私は私の父からこの事実を知る事になる。

「あれが元々のこの家の跡取りだ。」

と。そして父は、あいつ帰って来るのかなぁ?、そうなれば…。そう呟きながら、彼は思案顔で居間で正座して考え来んでいた。私は我知らず、万事蚊帳の外の状態でいた。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-10-15 14:36:46 | 日記
 
土筆(225)

 勿論、2人は出掛けに隣の息子の家に顔を出すと、家には今蛍さんが1人だけだからと、茜さんか誰かに蛍さんの相手をさせるよう嫁に申しつけ、その後出かけて行ったのでした。 「親が帰っ......
 

 何となく肌寒い日です。室内にいるとコタツを出したくなるのは私だけかもしれませんが…。