Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの花 69

2019-10-05 17:06:31 | 日記

 縁側の板が揺れるリズム感と打ち合う音の妙に面白味を覚えた私は、祖母の注意が既にあったが、彼等の留守を見計らっては縁を歩き回っていた。

 ドコン!ドコン!の巨大な木管楽器の鈍い音、またそれを生み出す自らの身体の上下の律動を楽しんでいた。時にはドコドコドン!と巨木の板上を何回か往復して走り回って、調子を取るように木管の楽曲音を作りだすと、興に乗ってハハハハハとばかりに大笑いしていた。

 さて、私は今日もこの躍動と音の楽しみを生み出そうという誘惑に駆られ、祖父母の部屋を覗いて見ると、幸いな事に部屋は蛻の殻だった。そこには誰もいなかったのだ。しめしめとばかりに私は廊下から縁側に回った。言いつけを破る以上、流石に祖父母の部屋を横切る事は出来なかった。私は何時ものように巨大な打楽器を足元にして飛んだり跳ねたり走ったりして奏し始めた。

 「こら!。」

開始早々、行き成り大きな声の叱責が降って来た。私はびっくりして廊下の入り口を見やった。するとそこには怒りで紅潮した頬を持つ祖母の顔があった。彼女は縁側の入り口で足を踏みしめるようにして立っていた。婦人の仁王立ちと言う様だ。いつの間に祖母が?と私は驚いた。私にしても祖母の言いつけを破っている罪悪感があったのだから、祖母の姿を認めると私はすぐに苦笑いして頬を赤らめた。

「お、お祖母ちゃん。」

ついどもってしまう。

「あんた言ってあったでしょう。何でこんな事を…。」

と祖母は言ったところで息を着いた。如何やらこの廊下の先まで何処かから走って来たようだ。はぁはぁと息継ぎしていた。私がその様子を見詰めていると、祖母は漸く口が利けるようになった。

「煩いから、すぐ止めなさい。」

御近所から文句が出ているというのに、音は響くからね、家だけじゃ済まないんだよ。と、彼女は世の中には世間体というものが有ると言い出した。

 「世間体?、って?。」言葉の意味を聞く私に、それはお前のお父さんに教えてもらいなさい、と一言いうと、彼女は急ぐようにさっとばかりに居間方向へ向かい姿を消してしまった。私が察するに、祖父母は出かける寸前であり玄関にいたようだ。

「もう少し遅く縁側に来ていれば良かった。」

そうすればこんな事にならなかったのに、と私は思った。この楽しみを止めなければならないとがっかりした。この時、私は祖母に2回も注意されては止めざるおえないと感じていた。

「遅くても早くても、駄目な物はダメですよ。」

行き成り廊下の入り口、先程祖母がいた空間に祖母の顔だけが現れてこう言った。私は目を丸くしてそんな祖母の顔を見詰めた。祖母は廊下の壁に張り付いていたものとみえる。壁に耳有りであった。


うの華 68

2019-10-05 10:52:11 | 日記

 母の元気が出たようなので、私はお母さん、元気になって良かったねと声を掛けた。母はお前こそ、元気が出て良かったよと言うので、私は母の誤解が無いようにと祖母に叱られて等いない事を告げた。じゃあ何故元気が無かったのかと問う母に、私はしょんぼりしていた母に慰める言葉を探していたと言うと、俄然母はご機嫌斜めになった。自尊心が傷ついのだろう。お前のそんな所が私は嫌いだと、ムッとした感じになった。

 「子供が大人にそんな心配をしなくていいよ。」

と横を向いた儘で、母は私に文句を言う様に言った。そして程無く、「もうあっちにお行き。」と、母が私をさも邪険に扱うという態度で言い出したので、私もカッと来た。

 「あの人ってお祖母ちゃんの事でしょう。」

「お祖母ちゃんは優しいから、箸の上げ下げなんて、お母さんみたいに訳の分らない事は言わないからね。」

「私はお母さんよりお祖母ちゃんの方が好きだ!。」

私は捨て台詞の様にこれらの言葉を母に言い捨てると、後は後ろも見ずにダーとばかりに台所に駆け出し母の元から縁先へと戻って来た。

 当時、縁側の奥には油紙など、紙包みにされた荷物等が積んであった。私にはそれらが何かなど知る由が無かった。私は汚れ紙の中身などに興味は無く、専ら縁下の土間やそこに置かれた巨大な平たい踏み石の子細を眺めていた。縁側自体は厚みのある確りとした重量を持つ板が並べて渡してあったので、人が歩いていて古くなり隙間の出来た場所に差し掛かると、ゴトン、ゴトンと、渡してある板と縁下の土台の板が打ち合わさって低く鈍い拍子木のような音を立てた。これが子供の私には興味深く楽しかった。それでこの日の私は縁側を行ったり来たりして木材の揺れと音を楽しんでみた。

 「ああ、煩いねぇ。」

と祖母が、彼女と祖父の寝所にしている部屋から顔を出した。この縁は祖母達の部屋の縁先なのだから、彼女にとって音が煩わしいのは当たり前だった。祖母は明らかに機嫌が悪い顔をしていた。が、私は縁側で楽しく遊んでいるのだから容易に足踏みを止めなかった。祖母は目を伏せて、子供というのはどの子もこの子もと、皆最初からなんだからねぇと零した。

「また最初から仕込むんだね。」

そう言いながら祖母は私のいる縁に出て来た。

 「板の音は煩いからね。」

ほらゴトンゴトンいうだろう。そう言って自分の足で板を揺らして音を立てて見せると、この音が、ほれこっちの部屋に響くからね、そうするとこっちではおちおち寝てもいられなくなるんだよ。「耳障りだ。」と言うと、彼女は言葉の意味を解説した。

「板の音がするとイライラするから止めようね。」

と言う。

 私にするとそれが面白いのだと、私は祖母の顔を見上げてにこにこして答えた。祖母はあらまぁと驚いた顔をした。

「母さん如何かしたのかい。」

これは部屋の奥から聞こえた祖父の声だ。祖母は声の方向に顔を向け、まぁまぁ、あんたさん、子供からこんな返事を貰ったのは初めての事でね。と言った。

 すると、かつてこの縁側にいた子供達は皆この祖母にこの様に注意されると私の様な返事をしなかったらしい。

「皆、ここに居た子供達は、『はい』とだけ返事をしたんだよ。」

祖母はやや不満そうな顔付を私に向けた。そして、フフッと笑うと、まぁ今回はいいわとだけ言った。

 そして縁側の奥にいる私から目を背けると、振り返って廊下の方を見た。彼女は台所の気配など窺っているようだ。その後は廊下の入り口まで足を向け、実際に無言で台所を覗き込んでいたが、祖父の待つ2人の寝所に戻って行った。私はその後、悪戯ぽく2回音を立てたが、どうやら隣の部屋の2人が昼寝中だと悟ると縁側を後にした。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-10-05 10:47:15 | 日記
 
土筆(216)

 彼は家内と孫、何方から問題を解決したらよいかと考えました。当然、孫にはその子の問題を解決しなければならない親という者がいるのですから、孫にはきっぱり背中を向けると、この家には自分......
 

 台風一過、夜に冷えを感じます。やはり10月ですね。