Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 82

2019-10-19 11:58:54 | 日記

 この時の祖母は、私の両親が、お互いに喧嘩したのだと勘違いしていた。私が彼女に、父がこうなった経緯について順に説明し出すと、「お母さんと喧嘩したんじゃないんだね。」と了解した。

 そしてほっとした表情をすると安堵した雰囲気が祖母を包んだ。彼女は微笑んでああと吐息を漏らす様に言葉を口にすると、

「この子は時折、集中して物事に取り組むとこうなるんだよ。」

と微笑ましそうに言った。

「心配ないからね、この子が自分で気が付くまでこうして置きなさい。」

祖母は言うと、晴れ晴れとした母親の笑顔になり息子を慈しんだ。

 祖母は再び、「夫婦喧嘩じゃ無かったんだ。」と安堵の溜息を吐いた。そしてその後、階段下に歩み寄ると、頭上に向かって声を掛けた。母に呼びかけたのだ。

「あんたさん、四郎の事は心配無いからね。」

そうして、階段から恐る恐る顔を出した母に、

「驚いただろう、物事、考える事に夢中になると、家の子達は決まってこうなるんだよ。」

家ではこの子に限った事じゃ無いから。と説明した。

 他所から来た人には物珍しくて慣れない事のようだから、この機会に説明しておくよ。と、祖母は階段から降りてきた嫁に、何だかその事を話すのが嬉しそうに語り始めた。話している彼女は自慢気であり、さも嬉しそうに笑みを絶やさなかった。嫁である私の母に、彼女の息子である私の父を目で指し示しながら、集中力の強い自分の血筋に付いて、武勇伝の有る親戚達の四方山話を語り出した。

 最初私の母は怪訝そうにそれを聞いていた。それでも彼女は顔に笑みを浮かべて「はぁ、はぁ、」と姑の話に聞き入っている気配だった。姑の話が一段落すると、母はそうなんですかと言い、「心得ておきますよ。」と万事了解したとばかりににこやかに祖母に頷いて見せた。が、祖母が自室に姿を消すと、彼女は妙な目つきで窺うように夫の背を見やり、首を一捻り捻ると、

「お義父さんにも聞いてみないと。」

と呟いた。「世間でそんな話一度も聞いた事が無い。」と小声で零しながら、彼女はまた階上に戻って行った。

 私はそんな母と身動きしない父の背を見比べていたが、母が上に姿を消すと祖母の部屋へと足を向けようとした。と、祖母が襖の陰から姿を現した。敷居の上に立った彼女は立腹したように頬を赤らめていた。祖母はぎっとした目で階段の上方を見詰めたが、私が見ている中、次に私の顔へと目を移した。そして私には何も語らずに足音を忍ばせると、静かに居間にいる父の傍に近付いて行った。未だ熟慮中の息子に彼女は何事か耳打ちしていたが、私は父に祖母の言葉が届いているのだろうかどうかと訝ってそれを見ていた。不思議な事に父は自分の母の言葉に一々こくこくと頷いていた。


うの華 81

2019-10-19 10:57:26 | 日記

 こんな時、私が頼るべき相手は祖母だった。私は居間から隣室へと歩を進めたところで、偶然階段を降りてくる母に出会った。ここで私は一応、これ幸いとばかりに母に父の様子が変だと訴えた。極軽くだ。

 案の定、母は階下に降り立つと遠目にだけ父の様子を窺った。居間に座る夫の背越しに左右とその顔を覗き込むようにして見晴るかすと、少し遠慮がちに「あなた」と声を掛けたりしていた。妻の声掛けにも父が全く身動きせず石像の様だったので、母はさっと顔に不満の色を浮かべた。そしてすぐさまぷんとそっぽを向いた。

 母は私に向かって、「放って置きなさい、あんな人。」と言うと、自分はすかさず身を翻して今下りてきた階段へと戻った。そしてその儘彼女は躊躇う事無くすたすたと階段を上り始めた。母は途中で思い惑うという事も無くその儘階上へと姿を消してしまった。

 『やっぱりね。』

私は思った。この頃の私は、あの母に物事が解決出来るとは思っていなかったのだ。家で問題を解決できる人物といえばそれは祖母しかいない、そう感じていた。私はこの事でそれを再認識すると、迷わず祖母のいる彼等の自室へと向かった。

 私が部屋を覗くと、果たして彼女は部屋の中央辺りに立っていた。その時の祖母は如何という事も無い出で立ちで立っていたが、私は彼女から何となく不自然さを感じた。私は首を傾げたが、それより父の事だ。私は父の様子がおかしいと祖母に訴えた。

 「お父さんが?。」

あんたのお父さんが?、祖母はそう言うと、何時もなら直ぐに発って訴えた私と一緒に問題のある場所迄来てくれたのだが、その日は違っていた。彼女はその場を動く事無く、私に言った。

「あなたのお父さんの事なら、お母さんに言いなさい。」

2人は夫婦なんだから、お互いの事は夫婦の間でやってもらわないと。とのみ彼女は言った。

 私はそれで、その後、つい先程の母の様子、彼女の夫である父の事を放って置くように言ったと、こう祖母に伝えてみたが、祖母は未だ頑として自分達の部屋から動こうという気配を見せなかった。これには私は相当困ってしまった。

 それで

「お母さんに?…、」

本当に問題が解決できるだろうか?、本当に祖母はそう思っているのかと、不安そうに彼女に尋ねてみた。すると祖母はそうだねぇと少し心をゆり動かされた気配になった。彼女は思い煩っていたが、本当に母が父の事を放って置くよう言ったかを私に再度確認すると、頷いた私の引く手に反応した。祖母はそろりそろりと私の引く手につながる様にしてと部屋の出口へ歩み出した。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-10-19 10:48:51 | 日記
 
土筆(229)

 まま事なら、そうね、今茜さんと遊んでも良いなと笑顔を浮かべご機嫌になる蛍さんでした。先ほどまでの機嫌の悪さは何処へやらという状態になると、嬉しそうに茜さんと架空の物、スルメのやり......
 

 雨模様の今日。特に何か書く事も無く、…特記事項無しですね。